新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、中国による海洋覇権に拍車が掛かっている。
最近になって、中国が尖閣諸島周辺の海域での日本漁船の操業は領海侵犯に当たるとして、日本政府に対し同海域に立ち入らせないよう要求していたことが明らかになった。
米中対立で尖閣尖閣諸島への領海侵犯が加速
中国は長年尖閣諸島の領有権を主張しているが、「自分たちの海域だから外国の船舶は出て行け、きちんと管理しろ!」と要求するのは異例で、これまでなく強く領有権を日本に対して主張している。
なぜ中国はいま尖閣諸島での海洋活動を強化しているのか?
尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域では、中国海警の船舶による航行が毎日のように目撃されているが、7月20日も同船舶4隻の航行が確認され、これで98日連続となる。
2012年の日本による尖閣国有化宣言以降、最多を記録し続けている。なぜ、中国はこれまでになく尖閣諸島周辺での海洋活動を強化しているのか。それには2つの政治的背景が考えられる。
理由1:コロナ危機で生じた政治的隙に便乗
1つはコロナ危機で生じた政治的隙だ。新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、中国は香港へ国家安全維持法を強行し、それを巡って米国やオーストラリアなどとの緊張を高め、中印国境での衝突では45年ぶりに死者が出る事態となった。
そして、新型コロナウイルスは米国に最も被害を与え、感染者が全米で300万人を超えるだけでなく、在沖米軍内でも感染が拡大し、在沖米軍の活動に影響が出ることも懸念されている。
東シナ海での活動で障害になるのは在沖米軍の存在
実際上、中国の東シナ海での活動で最も障害になるのは在沖米軍の存在であり、そこで在沖米軍の日常活動に大きな支障が出るならば、中国がその政治的隙を突く行動を試すことは想像に難くない。
2013年6月、新たな中国の指導者となった習近平氏が米国を訪問し、当時のオバマ大統領に「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と伝えたことがあるが、西太平洋で影響力を高めたい中国にとって、日本列島を通過することは避けられない。
よって、中国が太平洋への野望を捨てない限り、尖閣諸島や東シナ海での緊張は続くことになる。
理由2:11月の米大統領選挙の行方が鍵になる
もう1つは、1つ目と関連するが、11月の米大統領選挙の行方だ。現在、新型コロナウイルスの影響で、トランプ大統領もバイデン候補も支持者を集めた政治集会を開けず、十分な選挙戦ができていないが、これまでのところバイデン候補がトランプ大統領を10%前後の支持率でリードする展開となっている。
この展開のまま進むならば、バイデン候補が勝利することになるが、トランプ大統領はそれを崩すため夏から秋にかけて何らかの大胆な行動に出てくることも予想される。新型コロナウイルスの影響で国内経済は大きな打撃を受け、秋までどれだけ経済が回復するか分からないが、トランプ大統領は4年間の功績としての経済でアピールできなくなっている。
よって、経済が駄目なら外交・安全保障ということで、例えば対中国でいっそう態度を硬化させる戦略を取るかも知れない。
中国はコロナ禍で混乱状態の米国を逆手に取っている
しかし、いずれにせよ今の中国に映るのは“コロナ禍で混乱状態にある米国”の姿だ。
中国は、「新型コロナウイルスの感染拡大によって米国経済は大打撃を受け、大統領選も順調に進まず、人種間を巡ってまるで内戦状態にある、今がチャンスだ」などと理解していることだろう。
尖閣諸島を巡って、日本は中国を意識しているが、中国にとっての本当の相手は日本ではなく、米国である。日本が内政で混乱していても、米国が安定していれば、中国としても尖閣諸島海域で緊張を煽る行動は取りにくい。
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