政治混乱

アメリカ大統領選挙は環境問題が鍵を握る!?

アメリカ大統領 環境問題

気候変動がアメリカ大統領選挙を混迷させる

若年層は反トランプ大統領へ!

トランプ大統領がパリ協定からの離脱を宣言するなど、環境問題対策への懐疑的な態度が目立つアメリカだが、有権者の環境問題や気候変動(地球温暖化)への関心は着実に高まっている。特に若年層の意識は高く、2020年の大統領選挙でも、環境問題は重要な論点になりつつある。

オーストラリアの森林火災と同様の大規模火災はここ数年でたびたびカリフォルニアでも起こっており、アメリカ人にとっても気候変動は他人事ではない。

2019年9月20日、ニューヨーク市でも気象変動デモが行われたが、この行進には6万人が参加し、参加する多くは、10代、20代の若者だった。

気候変動への関心の高まりは、世論調査の結果を見ても明らかで、ピュー・リサーチセンターが2019年7月に行った調査によれば、有権者の6割弱が気候変動を米国に対する深刻な脅威だと考えており、2013年の調査では、同様の回答は4割に過ぎなかったことを考えれば明確である。

そして、有権者の約7割が米国政府による気候変動対策を不十分だと考えており、2019年1月の世論調査では、4割弱が気候変動対策こそが大統領と議会が最優先で取り組むべき課題だと回答している。2011年の調査では、最優先課題に気候変動対策を挙げる割合は20%台にとどまっており、この8年間での問題意識の上昇幅は、同センターが選択肢に含めた18の政策分野のなかで最も大きかった。

環境問題は11月のアメリカ大統領選挙に大きく影響する

2000年代以降の米国では、1年間に大西洋で発生する大型のハリケーンや熱帯低気圧の数が、1980年代の約1.6倍に増加している。2010年以降では、被害額が10億ドル以上を記録した自然災害が100件以上発生してきた。その件数は2000年代の2倍弱、被害総額は1980年代の4倍以上に達している。

日本でも2018年、2019年と2年連続して自然災害による被害は1兆円を超え、年々被害の規模も拡大している。
米国の有権者は、異常気象を身近に感じており、世論調査では8割以上の人が過去5年間に異常に暑い日を経験したと回答している。ハリケーンや洪水についても、過去5年間に地元が被害にあったという回答が、それぞれ約半数に達している。

アメリカの環境問題はトランプ政権が逆行させている

こうした米国内の雰囲気の変化とは対照的に、気候変動対策に懐疑的なトランプ政権の姿勢は全く揺らいでいない。象徴的なのが、自動車の排ガス規制である。

トランプ大統領は、オバマ政権が進めていた排ガス規制の強化を撤回し、より緩やかな基準に差し替える手続きを進めている。

また2019年9月には、これまで連邦政府よりも厳しい規制を敷くことが許されてきたカリフォルニア州について、連邦規制からの適用除外措置を撤回し、連邦政府の規制に従うよう求める方針を明らかにした。

気候変動関連を含め、トランプ政権が緩和を目指してきた環境規制は85件に達し、その約6割がすでに手続きを終えているという。最近でも、石油や天然ガスの掘削などにかかわるメタンガスの排出規制を緩和する方針が、2019年8月に明らかにされている。

トランプ大統領が強気な姿勢を崩さない背景には、支持政党による意識の違いがある。ここまでの米国における気候変動への問題意識の高まりは、民主党支持者に偏っている。共和党支持者のあいだでは、さほど関心は高まっていないのが現実なのだ。

2019年7月に行った調査では、気候変動を深刻な脅威と考える割合がアメリカ人全体では6割弱に達した。民主党支持者では同様の回答が8割を超えており、50%台だった2013年の調査から大きく上昇している。

その一方で、共和党支持者の場合には、気候変動を深刻な脅威とした割合は20%台にとどまっており、ほとんど2013年の調査から変わっていない。気候変動が最重要課題であると考える割合も、民主党支持者では80%を超えているが、共和党支持者では20%台に過ぎない。トランプ大統領の支持母体である共和党支持者は極端に気候変動の脅威に興味がないのだ。

アメリカの気候変動への政策は変わる可能性も

環境問題や気候変動(地球温暖化)に対する意識はアメリカでは特に若年層で高く、その傾向は、民主党支持者、共和党支持者でも変わらない。

ピュー・リサーチセンターの調査によれば、ベビー・ブーマー世代(1946~64年生まれ)の共和党支持者の4割強が、地球温暖化は人間の行動によるものではなく、自然現象に過ぎないと考えている。これに対して、Z世代(1996年以降生まれ)の共和党支持者では、同様の考えを持つ割合は2割に満たない。

Z世代の共和党支持者では、5割以上が問題解決のために政府がもっと役割を果たすべきだと答えており、同様の回答が2割に過ぎないベビー・ブーマー世代とは、かなり異なった考え方を持っている様子がうかがえる。

2020年の大統領選挙に限れば、まだZ世代は有権者の主力ではないが、環境問題については、共和党支持者と民主党支持者の意見が大きく乖離したままである。

2020年、もしアメリカを直接襲う大規模自然災害が頻繁に起こることになれば、トランプ大統領にとっては大きな逆風となりえる。

気候変動対策への意識がブーム化し、民主党候補の中で、この論点に対して明確な方向性を出し、政党を超えて支持を得ることができれば、大統領選挙で勝利することも可能となるかもしれない。

そうなれば、株式市場、為替市場にも大きく影響を与えることになり、注視すべき点となる。

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