政治混乱

タイの治安情勢(テロ)はどうなっているのか?

タイに滞在する日本人は7万人を超え、米国、中国、オーストラリアに次いで4位となっている。

筆者も3年前に国際会議でタイを訪れたが、これまでシンガポールやマレーシア、インドネシアを訪問したときに比べ、物価が安く、またご飯もおいしく非常に滞在しやすい国だと感じた。

今は新型コロナウイルスの影響で制限されているが、タイを旅行で訪れる日本人も大変多く、人気の観光地となっている。

タイで治安上心配はテロ

しかし、治安上、タイにも多くの心配事があるのも事実で、その1つがテロだ。テロというと、中東やアフリカで日々発生しているようなイメージがありが、実はタイも長年テロに悩まされている。1つに、最南部のパッタニー県、ヤラー県、ナラーティワート県では、タイでは少数派のイスラム教徒の過激派によるテロ事件が今でも頻繁に起こっているが、日本人の多くが住む首都バンコクでも起こっている。

2015年にはバンコク市内で爆弾テロが発生

例えば、2015年8月17日、バンコク中心部のエラワン廟で大規模な爆弾テロ事件が発生した。このテロ事件は実行犯の組織的背景などよく分かっていないことも多いが、20人が死亡、100人以上が負傷し、日本人1人も重傷を負った。

筆者はちょうど事件から2年後の2017年8月17日にエラワン廟を訪問した。テロの痕跡の様子はほとんどなかったが、周囲や出入り口には監視カメラが設置され、地元の治安当局が常に警戒している様子だった。

また、狭いエリアにも関わらず多くの人で賑わっていたことを考えると、1つのテロで多くの人が巻き込まれるのは十分に想像できた。エラワン廟の付近にはグランドハイアットやインターコンチネンタルなどの高級ホテルが立ち並び、BTSスクンビット線とBTSシーロム線が上を通っており、正にバンコクの繁華街にある。

2019年にもバンコク市内で連続爆発事件が発生

そして、2019年8月にもバンコクで連続爆発事件が発生し,タイ人2人が負傷し、今年2月にもバンコクの中心部で,男が銃を乱射する事件が発生しており、依然としてテロが発生する可能性がある。スリや置き引きなどの一般犯罪と比べると、テロの被害に遭う確率が低いのは間違いないが、一回の事件の規模が非常に大きいので、一般犯罪で遭う以上に重い傷を負ってしまう可能性が高い。

しかも、近年では政治庁舎や大使館などターゲットを選定してテロを起こすのではなく、多くの人々で賑わう場所を意図的に狙う無差別テロも起こっており、エラワン廟のテロは正にそれに当たる。

タイが市場的に魅力的な国であることに変わりはない。しかし、持続可能的に事業を行うためには、駐在員・現地従業員の命や安全を守らないと達成できない。テロから身を守ることもその1つである。

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サントロペ
国際政治学者、大学教員でありながら、実務家として安全保障・地政学リスクのコンサルティング業務に従事する。また、テレビや新聞などメディアでも日々解説や執筆などを積極的に行う。