政治混乱

新型コロナによって深まる米中対立、日本の選択肢は?

新型コロナウイルスが世界で猛威を振るい始め、既に半年が過ぎた。これまで、新型コロナウイルスは中国をはじめ、欧米諸国に壊滅的な被害をもたらし、中南米や中東・アフリカにも拡大した。

現在、米国では感染者数が300万人を超え、ブラジルでは200万人以上、インドでは100人以上となっており、今年下半期も世界中で引き続き感染が流行すると予想される。そのような中、新型コロナウイルスは米中対立や世界秩序の行方にも影響を与え始めている。

新型コロナによって深まる米中対立

まず、コロナ危機以降、インド太平洋地域では中国と周辺諸国との間で緊張が高まっている。習近平政権が香港へ施行した国家安全維持法を巡り、米国や英国、オーストラリアなど自由主義諸国は中国への懸念を一段と強め、政治や経済の分野で今後さらに当事国間で摩擦が深まる恐れがある。

オーストラリアは国防費を40パーセント増加

オーストラリアのモリソン首相は7月、今後10年間で国防費を40パーセント増加させると明らかにし、インド太平洋地域への関与をいっそう強化する姿勢を示した。

同首相は、「我々はインド太平洋地域が全当事国にとって法の支配のもと自由に開放され、覇権や強制がないことを望む」と述べ、名指しはしなかったが中国を強くけん制する形となった。

中国が尖閣諸島周辺の海域でも領海侵犯を繰り返す

そして、東シナ海や南シナ海では中国による海洋覇権にいっそう拍車が掛かっている。最近になって、中国が尖閣諸島周辺の海域での日本漁船の操業は領海侵犯に当たるとして、日本政府に対し同海域に立ち入らせないよう要求していたことが明らかになった。

中国は長年尖閣諸島の領有権を主張しているが、このように要求するのは異例で、これまでなく強く領有権を日本に対して主張したことになる。コロナ危機以降、尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域では、中国海警の船舶による航行が毎日のように目撃されているが、7月20日も同船舶4隻の航行が確認され、これで98日連続となる。

ベトナムの南シナ海・西沙諸島でも

南シナ海では6月、ベトナムが領有権を主張する南シナ海・西沙諸島でベトナム漁船が中国船2隻に襲われ、魚や機材などを強奪される事件があり、4月にも中国海警局の船がベトナム漁船を沈没させる事件があった。

中国とインド、両国軍が衝突

さらに、6月中旬、中印国境の北部ラダック地方にある中国との係争地域で両国軍が衝突し、インド軍の兵士20人が死亡した。死者が出るのは45年ぶりだが、5月から両軍がにらみ合い、小競り合いが起きていた。両軍は5月5日にも衝突し、双方で多数の負傷者が出た。これがきっかけで、インドの一部地域では習近平氏のポスターが燃やされるなど市民による激しい反中デモが発生した。

そして、6月下旬、インド政府はティックトック(Tiktok)やウェイボー(Weibo)など中国企業が運営する59のアプリ使用を国内で禁止すると発表した。同発表の直後、インドのモディ首相が2015年4月から使用してきたウェイボーのアカウントも削除された。

政治リスクが経済分野に波及している

このように、インド太平洋地域では中国と周辺諸国との政治的緊張がこれまでになく高まっている。そして、このような政治リスクはすぐに経済分野に波及する。

米国は中国の通信機器最大手「華為技術(ファーウェイ)」を排除する政策を進めているが、最近、その方針を決めた英国が日本に次世代通信規格「5G」の通信網づくりで協力を打診したことが明らかになった。

今後、米中対立は日系企業の海外展開や経営戦略にさらに大きな影響を与える恐れがある。日本政府としても極めて難しい舵取りを余儀なくされる時代が到来しそうだ。

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国際政治学者、大学教員でありながら、実務家として安全保障・地政学リスクのコンサルティング業務に従事する。また、テレビや新聞などメディアでも日々解説や執筆などを積極的に行う。
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