1980年代後半からのバブルは日本のカネ余りを世界に知らしめた。ジャブジャブと溢れかえったカネは株、土地から、その次の行き先を求め、そのひとつが絵画市場だった。当時は高騰した資産さえあれば、それを担保に銀行はいくらでもカネを貸した時代だったのである。
1989年には、バブル退治が国民的な関心事となり、土地への融資はさまざまに締め付けが始まるが、絵画は金融当局もマークをしておらず、価格が上昇する絵画を購入するための資金に対しては、金融機関も積極融資を続けた。
この絵画を使って老舗商社から数百億ものカネを引き出した刑事事件がイトマン事件である。
絵画バブルはジャパンマネーから起こった
欧米人で占められていた世界の美術品市場でジャパンマネーが注目されるきっかけとなったのは、1987年3月に開催されたオークションだった。安田火災海上(現・損保ジャパン)がゴッホの「ひまわり」を2,475万ポンド(約58億円)で落札した。これは絵画に付けられた当時の史上最高値記録を更新することになった。
そして、その記録をあっさり塗り替えたのが1989年11月30日、パリと東京を衛星回線でつないで開催されたオークションでのピカソの初期の傑作、長らくその所在が不明とされていた「ピエレットの婚礼」で、3億1,500万フラン(約73億8,000万円)だった。
買い手はリゾート開発会社、日本オートポリスである。しかし、バブル崩壊による景気低迷と土地への融資規制などで、同社の経営は一気に悪化した。早くも1992年に破産宣告を受けている。負債総額は700億円だった。そしてこのピカソの絵は債権者の間を転々とするうちに所在が分からなくなった。現在は某信託銀行の金庫にあるとされているが、明らかにはされていない。
ピカソ初期の傑作で、しかもしばらくは姿を消した幻の名画だけに、いまもこの絵には高い評価が付けられている。2億5,000万ドルとする評価額もあり、現在のレートで27 0億円で、買値の3倍となるわけだ。そのまま持ち続けていたら、非常に高いリターンの投資になっていたわけだ。
絵画バブルが再度到来中
絵画市場は、日本のバブル崩壊後、ジャパンマネーが市場に入らなくなったことで、一時の高値からは長期間落ち着く展開をみせた。しかし、中国を含める新興国の隆盛により、新たなマネーが市場に入ることで、名画の価格は継続上昇を続けている。
実は世界の絵画市場全体で考えれば、一時的に発生したジャパンマネーの値上がり・値下がりがあっただけで、価格は崩壊しておらず、長期継続上昇しているのだ。刷られ続ける紙幣に対し、希少価値の高い名画は相対的な価値が継続上昇しているのである。
バスキアの名画が375万円
北九州市に100億円のお宝があるのをご存じだろうか?市立美術館所蔵のジャンミシェル・バスキア作「消防士」である。バスキアの作品は近年価格が上昇しており、同館が35年前に375万円で購入したこの油彩画は、今やオークションに出せば100億円を超えると言われている。
絵画史上最高値はダビンチ作
2017年、「サルバトール・ムンディ(世界の救世主)」と呼ばれる油絵がクリスティーズのオークションで、4億5,030万ドルで落札された。この落札によって、サルバトール・ムンディは2位以下に大差をつけ、美術品の落札額として史上最高額を記録した。
本当にダ・ビンチの作品かどうかについてはいまだに論争が続いているものの、この作品はレオナルド・ダ・ビンチが描いたと考えられる20枚に満たない絵画の1つである。
手塚治虫の漫画が3,500万円
2018年5月にフランス・パリで開催されたオークションで、手塚治虫のマンガ原稿の原画1ページ分が269,400ユーロで落札された。作品は手塚の代表作『鉄腕アトム』、1950年代に描かれたものである。日本円に換算すると当時のレートで約3,500万円となった。
当初の落札予想価格の4~6万ユーロを大幅に上回った。手塚治虫の直筆原稿は、それまで国内でも高額取引されていたが、今回それを大幅に上回る破格の価格となった。
マーベル・コミック第一巻は1億3,700万円
「スパイダーマン(Spider-Man)」「X-メン(X-Men)」「アベンジャーズ(The Avengers)」などを手掛けた米マーベル(Marvel)の前身の出版社が1939年に出版した「マーベル・コミック(Marvel Comics)」第1巻が競売にかけられ、同社の作品の記録を更新する126万ドル(約1億3,700万円)で落札された。
米競売会社が明らかにした。出版当時の値段は10セント(現在の為替で約11円)だった。出版当時の価格から考えれば、1,000万倍以上に値上がりしたことになる。
まとめ:絵画バブルはこの後も起こる
希少価値の高い名画の価格はこのあとも引き続き上昇することになるだろう。
ニューノーマル2・0の時代、富裕層の富は更に増えていき、紙幣からのリスク分散の一部が絵画市場に向けられる。住宅を新しく豪華にすれば、そこに見合う絵も必要になるわけである。
個人が買うには既に名画は高すぎるが、これから成長が期待される新進気鋭のアーティストの作品に出会えれば、将来思わぬ高値になるかもしれない。
そして、漫画家の作品も注目すべきだろう。テレワークの合間の時間を使って、様々なアーティストの作品を眺めてみるのも、良い投資のチャンスを探すことになるのかもしれない。
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