株、為替のボラティリティ低下
コロナショックで一気にボラティリティが上がった為替市場ですが、7月半ば現在はこう着状態となっています。ではこれからボラティリティは低下するのか?というと、それはないと考えられます。
ボラティリティの低下は、パワーが溜まっている状態であり、そのパワーは溜まれば溜まるほど、一方向に動き出した際に高いボラティリティを生み出します。株価も同様に、少し高値圏でのもみ合いを見せていますので、こちらもなにかのきっかけで一気に動くでしょう。
2020年11月は米国大統領選が控えており、これは世界にとって重要な転換点になりえます。大統領選前には大きなボラティリティが再度発生し、マーケットは活気を取り戻すと考えられます。そんな中、気になるのがドル円が売られる材料とアノマリーが揃っていることです。今回は、ドル円売り方向についてご説明します。
米国の政策はドル安の価値を下げる
世界各国が金融緩和政策を行い、いわゆるじゃぶじゃぶマネーが市場に出回っています。これは、簡単にいえばドルや円などの通貨が刷られ、いつもよりも大量の通貨が流れている状態で、「過剰流動性相場」になっています。
そうなるとどうなるか?色々考えられますが、まずは基軸通貨であるドルの価値が下がるのではないかと考えています。ドルの価値が下がるとどうなるのか?ドルが売られるという構図です。
米国目玉政策「PPPローン」とは?
アメリカの政策の中でも目玉となっているのが、PPPローン(Paycheck Protection Program)です。これは新型コロナウィルスの救済ローンの1種となります。どのようなローンかといいますと「従業員の雇用継続、再雇用促進を促すローン」です。
雇用に関しての政策は他国でも取られており、簡単にいえば、休業している企業=解雇せざる得ない状況になりますが、政府が支援することによって、失業を極力防ごうという形です。
このPPPローンは、米国が3500億ドルも投じています。ここでのポイントがローンであってローンでないというところです。基本的には給与の月平均の2.5倍を借りることが可能で、申し込み順、資金が枯渇すれば終了という仕組みです。
人件費を削減しなかった場合、借り入れた金額がシンプルに全額返済免除となります。例えば、給与が3,000ドルであれば、その2.5倍の7,500ドル借りられます。
借入額が全額免除されるかは借入後の雇用状況次第となりますが、企業としては余力があっても、これには申し込むのではないでしょうか。これはかなり大きな金額となり、企業によっては億単位で借りられ、それを従業員に支払うことができます。
株価押し上げの要因にもなっている
前述したように、PPPで余力がある企業が、借り入れをした場合、その企業には億単位の資金が生まれます。
ではこの資金をどう活用するのか?自社の「株価を買い上げる」ために使うのではないか?といわれています。
現に3月のコロナショック後、経済が停滞している状況にも関わらず、株価は戻しています。ナスダックでいえば、日々最高値更新です。新型コロナウィルスでパンデッミックが起こる前の株価、いえそれ以上となっています。
しかし、これは果たして真っ当な上昇といえるでしょうか?
ここに、じゃぶじゃぶマネーが入り込んでいると考えられるのです。各国の金融政策や投資マネーが入り込むことで、一気に上昇を見せている、しかし実体経済は全くといっていいほど回復をしていません。回復しているのは、「最悪期に比べて良くなった」という期待感です。これは、バブル状態といってもおかしくありません。
バブルはいつか弾け、そして下げは一気に加速します。リスクオフとなったときにドルは買われるのか?売られるのか?ドルが市場に出回っており、価値が下がりドル売り要因になると考えています。
以前に書いた「過剰流動性相場がもたらす実体経済と乖離したコロナバブル」でも詳しく書いていますのでこちらも合わせて読んでみてください。
円高アノマリー
アノマリーとは、科学的根拠ではなく、過去の統計的にそのような状態になりやすいという程度で認識しておいてください。少し前に書きましたが、現在は「夏枯れ相場」の時期です。
夏枯れ相場とは、市場参加者が減少し取引が薄くなったり、利益確定をする動きです。これらの夏枯れは、7月や8月、長くて10月まで続く傾向があります。そして、8月といえば円が買われるアノマリーがあります。8月はドル円が売られやすいということです。
リスクオフの円買いではない
リスクオフの際に、円が買われる動きはありますが、最近はそれほどではありません。世界的にみて円に旨味がないからです。しかし日本人にとっては別です。日本人が投資をしていれば、必ず円に換える必要性が出る時があります。
これが個人レベルではなく、大口投資家レベルで起こると円買いが進みます。直近でいえば、九州を中心に起こった豪雨災害(令和2年7月豪雨)では、生命保険会社が円が必要となり急遽外貨を円に換える動きが出ました。
トータルしてドル円売り目線
これらのことをトータルして、現在動きが少ないドル円は、動き出すと円高方向に振れる可能性が高いということを考えています。もちろん、一気にドル買いが起こることもゼロではありませんが、そのときは瞬時に発想を転換し、ポジションをひっくり返すことも重要です。
ドル円は、下がればGPIFの買いが入りますが、104円、さらに下げれば100円台をトライするイメージを持っています。
コロナでねじ曲げられた市場は、或る日突然、ボラティリティが上がりますので、しっかりとイメージした上でトレードを行なっていきたいですね。株式の投資は、個人的には現時点の高値ですらあり得ないと考えていますので、ポジションを持っていれば解消します。売りのマグマがかなり溜まっているように感じていますので。
*上述は、投資を促すものではありません。投資は、自己責任でお願いします。
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