政治混乱

トランプリスクを検証する

トランプリスク

イランへの攻撃はトランプ大統領の勘違い?

イラク軍報道官は1月3日、イラン革命防衛隊(IRGC)の精鋭部隊「コッズ部隊」のガセム・ソレイマニ司令官と、イラクのシーア派武装組織の連合体「人民動員隊」のアブ・マフディ・ムハンディス副司令官が前夜遅くに死亡したことを明らかにし、その後、トランプ大統領による、“ 切迫した脅威 ” を挙げる発言を行い、自己正当化した。

しかし、トランプ大統領の発言はその後二転三転しており、大統領選挙を視野に入れたトランプ大統領お得意の思いつきによる “ 勢い、判断ミス ”と考えられる。

2020年11月の大統領選挙を控え、再選するためには経済、金融市場を混乱させること自体一切意に介さないことが予想され、中等との関係、米中関係など、国際情勢は引き続き市場を不安定化させるリスクは大きいと言える。

金融市場においての顕著なトランプリスクは、Twitterによる発言で為替が大きく乱高下することにある。

通常、為替変動が大きく起こるタイミングと全く違うタイミングでのTwitter発言により市場が翻弄させられている。

そして、Twitter発言回数は毎週のように増え、多い日には1日150通以上も配信しており、1日中、トランプ大統領の発言リスクに振り回されるとも言える。

インサイダー取引ではないのか?

トランプ大統領はTwitterで多い日には150回以上のコメントを発信し、フォロアー数は7,000万人弱にまでの規模となっており、フォロアーへの影響力を考えた場合、既に世界有数のメディアになっている。

Twitter発言から為替や株価は乱高下しているし、好き勝手な発言をすることで市場価格を操作できるわけで、現在の金融経済が始まって以来の市場操作、インサイダーを行える立場にあるとも言える。

トランプ大統領の有力支援者には数多くのヘッジファンドや機関投資家がおり、有力支持者に対して望む方向へ世論を動かすことも出来てしまう。

支援者は大きな利益を得ることにより、次回選挙ではさらに支援体制を強化する。

トランプファミリーが経営する数多くのビジネスに恩恵は広がり、お互い様の利益が拡大できる。

発言数を増やすことでリツイートが増え、更にフォロアーが増えれば、メディアとして価値は増すことになり、ビジネスマンとしてのしたたかな一面が見える。

現在の民主党候補を見渡してみると、トランプ大統領に対抗できるだけの力を持つ候補がおらず、世界情勢が極端に緊迫する状況になるか、弾劾裁判で相当大きなマイナス情報が出ない限り、トランプ大統領の再選という流れになりそうだ。

トランプ政権と軍産複合体

トランプ政権が要求する2020年会計年度の米国防費は7500億ドル(約80兆円)で、過去最高である。

トランプ政権の初代国防長官だったジェームズ・マティス氏が政権を去った後、2019年1月から6月半ばまで国防長官を努めていたパトリック・シャナハン氏は、ボーイング社上級副社長だった人物である。

ボーイングは民間航空機メーカーとして有名だが、軍用機やミサイルの製造元でもあり、シャナハン氏自身、地上配備型のミサイル迎撃システムや次世代型戦術レーザー兵器プロジェクトを担当していた。

そしてそのあと7月から国防長官に就いたマーク・エスパー氏は陸軍士官学校を卒業した元軍人だが、2007年に除隊した後はペンタゴンと軍需産業の橋渡し役をしていた。

2010年からは軍需大手レイセオン社のロビイストになり、その後、同社の副社長にまで昇格する。そして2017年にペンタゴンに戻ると陸軍長官になり、昨年7月からは国防長官に就いている。

トランプ政権は軍需産業の「御用聞き」とも呼べるほど軍産複合体を体現している人物が長官になっている。

総額640兆円のイラク戦争!!

2003年のイラク戦争も、当時のブッシュ大統領がイラクの大量殺戮兵器保持を名目に、アメリカを中心とした有志連合で戦争を起こしたが、結局のところ、大量殺戮兵器を見つける事など出来なかった。

イラク戦争は何だったのか?

その後深く議論されることもなく、有耶無耶なままであり、イラク戦争は軍産複合体の為のビジネスとしての戦争だったのではないだろうか。

今回のドローン攻撃によるイランのソレイマニ司令官殺害に関しても、当初からトランプ大統領の発言は二転三転しており、本当に思いつきによる勝手な言いがかりによる殺人ではないだろうか。

イラク戦争を再度振り返ってみよう

イラク戦争とは?

イラク戦争とは、アメリカ合衆国が主体となり2003年3月20日から、イギリス、オーストラリアと、工兵部隊を派遣したポーランド等が加わる有志連合によって、イラク武装解除問題の大量破壊兵器保持における進展義務違反を理由とする『イラクの自由作戦』の名の下に、イラクへ侵攻したことで始まった軍事介入である。

正規軍同士の戦闘は2003年中に終了し、同年5月にジョージ・W・ブッシュにより「大規模戦闘終結宣言」が出たが、アメリカが指摘した大量破壊兵器の発見に至らず、さらにイラク国内の治安悪化が問題となり、戦闘は続行した。

2010年8月31日にバラク・オバマにより改めて「戦闘終結宣言」と『イラクの自由作戦』の終了が宣言され、翌日から米軍撤退後のイラク単独での治安維持に向けた『新しい夜明け作戦』が始まった。

そして、2011年12月14日、米軍の完全撤収によってバラク・オバマが、イラク戦争の終結を正式に宣言した。

イラク戦争にかかったコストは前後する中東での紛争も全て合わせれば、2017年の時点で総額640兆円にも及び、当初の国防総省の試算の3倍を超えている。

仮に15年時計して年ごとで割ってみると年間で42.6兆円にも及ぶことになる。巨額のお金の多くが軍産複合体に流れ、関係する企業は大いに潤った。

レイセオンはアメリカ合衆国の軍需製品メーカーで、世界第1位のミサイルメーカーとしてトマホークミサイルなどが有名だが、年2兆円超の売上のほとんどは軍やアメリカ合衆国政府向けの製品である。

レイセオンの株価は、2003年当時は30ドル以下だったが、現在の株価は226ドルを超えている。

多くの恩恵を受け巨額な利益をあげた事で株価上昇にも繋がった。

そして、そこに投資をした投資家も利益享受する事になったわけだが、今回の戦争により軍産複合体からの強固な支援により、トランプ大統領の再選の可能性は更に高まったと言えるのかもしれない。

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