市民のデモは各国で発生、ベラルーシでは大規模な抗議デモ
8月9日、東欧のベラルーシで大統領選挙が実施された。選挙の結果、現職のアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の勝利が発表されたが、投票中に不正があったのではないかと市民の疑念と不満が広がり、首都ミンスクでは23日、市民数万人が集まった大規模な抗議集会が行われた。国営メディアは参加者が2万と発表したが、10万人以上が集結したとの報道もある。
ルカシェンコ大統領はヨーロッパ最後の独裁者とも言われ、今回の選挙で第6期目を目指していた。低迷する国内経済や独裁的な政治に対する市民の不満は強く、市民たちはルカシェンコ大統領の即時退陣を求めているが、最近も治安当局とデモ隊の間で衝突があり、少なくとも4人が死亡したと言われる。また、捕まった市民の一部は刑務所で拷問を受けたと主張している。しかし、こういった政府に対する市民のデモは各国で発生している。
タイでも首相の退陣や憲法改正の市民抗議デモが頻繁に発生
最近では、タイの首都バンコクを中心に各地で、現職のプラユット首相の退陣や憲法改正を求める市民の抗議デモが頻繁に発生している。タイでは王室への批判は不敬罪となるが、その王室の改革を求める声も上がっており、治安当局も不適切な言動を今後も続けるなら集会の強制排除や主催者の逮捕も辞さないと警告しており、暴力的な衝突に発展することも懸念されている。
タイにはバンコクを中心に7万人あまりの日本人がいるが、日本人がそういった抗議デモに巻き込まれることも懸念される。実際、ベラルーシでは日本人1人が拘束されたとのニュースが流れた。
レバノンでもデモ隊と大規模な衝突
8月4日に首都ベイルートで大爆発が起きたレバノンでは、その後6日に反政府デモが始まり、同日だけで5000人から1万人の若者たちが通りに出て抗議活動を行い、一部は警官隊と衝突し、700人あまりが負傷したとされる。多くの若者たちの不満は、おそらく今回の大爆発それ自体にあるのではなく、長年の政府の失策や汚職にあり、それが今回の大爆発がきっかけとなって一気に爆発した。
ベイルートでは今年1月にも、デモ隊と治安当局の間で大規模な衝突が発生し、450人以上が負傷した。レバノンでは昨年10月、政府がスマートフォンのSNSアプリ使用に対する課税を発表し、国内で若者を中心とした数万人規模の抗議デモが発展した。抗議デモは首都ベイルートを中心に全土に一気に拡大し、政府は同課税撤廃を含む改革案を発表したが、同月下旬、当時のハリリ首相が辞任を発表した。
チェコのプラハでもバビシュ首相の退陣への大規模な市民デモが発生
また、昨年では6月下旬、ベラルーシと同じ東欧のチェコの首都プラハでは、現職のバビシュ首相の退陣を求める市民による大規模なデモが発生した。参加した市民は25万人を超えたとの発表もあり、1989年に共産党政権が崩壊したビロード革命以降、国内では最大規模の抗議デモとなった。
市民らは、「バビシュ首相は退陣せよ」などと叫びながらプラハ中心部を行進した。バビシュ首相はEUから不正に補助金を受け取ったなどの疑惑や汚職が指摘され、市民の不満が高まっていた。
イラクでも治安当局と衝突、300人以上が犠牲
また、イラクでも昨年10月以降、当時のアブドルマハディ政権の汚職や経済政策に不満を持つ市民らが抗議の声を挙げ、治安当局と衝突するなどして、300人以上が犠牲となった。犠牲者数の正確な数字は分かっていない。
抗議デモや衝突は、首都バグダッドからバスラなど南部の各都市に拡がったが、イラク政府を背後で支援するイランへの反発もみられ、イラクにあるイラン領事館なども襲撃された。
デモが加速し、今後は独裁政権が崩壊する可能性も
各国によって事情は違うが、「政府の既得権益VS市民たちの抗議」という構図は共通している。そして、インターネットやSNSの普及や発達は、政府など既得権益層からすると大きな脅威となっている。
10年前のアラブの春ではインターネットやSNSが市民の連帯を生み、大規模な反政府デモに発展し、各国で独裁政権が崩壊した。今後も科学技術を駆使した市民のネットワーク化によって、独裁政権が崩壊する事例は出てくるかも知れない。
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