新型コロナの猛威が続く中、AIの企業群の中核となり、世界的なハイテク帝国を築くという孫正義ソフトバンクG会長の夢が崩れ去りつつあるのか?
株価:5月は回復基調に
3月のソフトバンクG株は、2月の高値(5,871円)から半値以下に急落した。1日の下落率が17%と上場来最大を記録する日もあった。
しかし、株価は4月に入り持ち直し、4月から5月にかけては4,300〜4,800円を推移している。社債保証コストを示すクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)も、約11年ぶりの高水準から4割低下した。
新規投資への慎重な姿勢や前期赤字額の公表などでリスクが減少し、個人投資家やヘッジファンドが短期的にリバウンドを狙っていると指摘されている。コロナ拡大当初は得体の知れぬ怖さがあったが、今は可視化でき、材料が出尽くしたと見られているが、本当にそのとおりだろうか?
AI TRUSTでは過去何度もソフトバンクGについての記事をまとめている。まずはこちらを確認してほしい。
ビジョンファンドの損失は拡大
孫氏が設立した1,000億ドル規模の巨大投資ファンドである、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが新型コロナ流行の影響で損失を広げている。
ビジョン・ファンドの資本の半分以上はウイルス感染の拡大で打撃を受けている新興企業やそれ以前から問題が表面化していた新興企業に投じられている。大口投資先が直面する問題は同ファンドの先行きは視界を不透明にさせている。
孫氏の直感が裏目に
ビジョンファンドの主力の投資先である輸送分野では、配車サービスの利用が50%以上減少している。ソフトバンクGが出資するユニコーン企業6社は、新規株式公開(IPO)の計画を今年から来年に延期をしている。
今の株式市場環境では、投資をした当時の評価より大きく減損するリスクがあり、今上場することは得策ではないだろう。しかし、それぞれの企業の資金ぐりは大丈夫なのだろうか?
ソフトバンクGはすでにビジョン・ファンドの損失が2020年3月期に1兆8,000億円に達するとの見通しを示している。今までは孫氏の直観で投資を決められたことも多く、米シェアオフィス大手ウィーワークへの出資は見事なほどに裏目となり、ビジョン・ファンドに多額の出資をしたサウジアラビアを始めとする中東の投資家の間に不安が広がっている。
ビジョンファンドの投資先の企業が抱える問題は、多くのケースで新型コロナの流行前から生じていたが、新型コロナに伴う経済崩壊で、同ファンドの投資戦略が抱えるリスクの高さが露呈したことになった。新たに誕生する巨大市場を制覇できるとみて、まだ成果の出ていない企業に巨額の資金を投じる投資スタイルについては、以前から極めてリスクが高いとの指摘が出ていた。
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孫氏は3年間でソフトバンクをハイテク分野に投資する投資会社に変え、世界最大のレイトステージ投資ファンドとなるビジョン・ファンドを設立した。確かに一部の投資は成果が出ている。だが新型コロナの感染拡大で事態が悪化する中、成功例は乏しく、リスクだけが大きく拡大している。
米カーシェアリングのゲットアラウンド、オンライン住宅販売のオープンドア・ラボ、不動産仲介のコンパスなど、430億ドルを投じている輸送・不動産分野は特に状況が厳しく、世界各国で移動制限が導入される中、出資先の配車サービス大手4社の市場環境は悪化している。関係筋によると、インドの配車大手オラは、英・豪・ニュージーランドの都市で業務を停止した。
OYOは大苦戦
ロックダウン後のハワイ州の観光客は98%減となっているが、シェアオフィス以上にホテル事業は苦戦が続いており、コロナ蔓延前から問題が立て続けに起こっているOYOは大丈夫だろうか?
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ソフトバンクGの持つ資産の多くの部分はアリババ株であり、アリババ株は3月23日の176ドルの安値から回復し、5月14時点では199ドルをつけている。
新型コロナはアリババの事業に対しては追い風でもあり、アリババ株が継続上昇すれば、ソフトバンクGにとっては不安解消の後押しとなるだろう。ソフトバンクG株は日本株市場に与える影響は大きく、今後も継続して進展は記事として掲載をしていくことにしよう。
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