新型コロナウイルス感染拡大を受けた世界的な株安の中、ソフトバンクグループ(SBG)の株安が加速している。3月19日の株価は1994年の上場後、最大の下落率となった。
融資や社債によって資金を調達し、投資会社として保有株から収益を上げてきた同社だが、今後は保有株下落による損失と資金調達難という二重苦に陥る懸念もある。
ソフトバンクは倒産するのか?
AI TRUSTでは当初よりSBGの破綻リスクを指摘し続けてきたが、過去からさかのぼり特集を組むことにした。
ソフトバンクが倒産の可能性も!
アメリカでは3月21日、米国で新型コロナウイルスの感染が一段と広がり、自治体が住民の移動を厳しく制限し始めた。ニューヨーク州は22日から州内の事業者の全従業員に在宅勤務を義務付けた。カリフォルニア州は19日から州全域で住民の外出を禁止し、中西部イリノイ州も追随した。3州の人口は合計で約7,000万人と米全体の2割強を占める。個人消費や企業活動への悪影響が深刻化するであろう。
SBGは予定している米シェアオフィス大手ウィーワークへの救済策の一部に関して、実施に難色を示している。米証券取引委員会(SEC)や米司法省などがウィーワークに調査を実施していることから、ウィーワーク株式30億ドル相当を既存株主から購入するとした昨年秋の合意を撤回する可能性があるとウィーワーク株主に通知している。
7,000万人におよぶ在宅勤務義務付けは、ウィーワークの業績悪化に直結する非常に大きなリスク要因であり、SBG内では既に、ウィーワークの破綻も視野に入れた上での今回の撤回の判断をした可能性も高いのではないだろうか。
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ウィーワークの破綻リスクに備えよ!
3月13日に発表した5,000億円を上限とした自社株買いの発表も裏目に出た。格付け会社のS&Pグローバル・レーティングは17日、格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。これにより株価は引き下げの翌日から急落し、19日の終値は前日比17%安の2,687円。2016年7月以来、4年ぶりの安値となった。
保有株の下落により、巨額の赤字を出し、帳簿上だが債務超過になる可能性は否定できない。スプリント売却についても、現在の経済の悪化を考えると、白紙に戻る可能性もゼロではないだろう。
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ソフトバンクG スプリントで80億ドルの損失の可能性
株安によってクレジット市場にも動揺が広がっている。企業の信用リスクを取引するクレジット・デフォルト・スワップ市場で、SBGの保証料率は上昇している。QUICK・CDS平均(5年物)でみると、19日時点で5.25%と前日から0.85ポイント上昇して約10年半ぶりの高さとなった。
SBGは19年9月末時点で個人株主が28.5%を保有し、このうち筆頭株主である孫正義会長兼社長の保有比率は22%強となっている。関東財務局への届け出によると、孫社長の保有株式のうち4割弱はみずほ銀行など金融機関に担保として提供されている。
こうした株式は一般的に株価が急落すれば追加担保を求められる。SBGの株価は過去1ヶ月で5,751円の高値から2,687円まで既に54%下落しており、この先も株価下落が続くようであれば、金融機関からの融資を受けることも非常に厳しくなることを懸念する必要がある。
ソフトバンクGのビジョンファンド2が立ち消えに
投資事業が主軸のSBGにとって、世界同時株安で投資先企業の株価が下落し、新規株式公開(IPO)による利益回収の先行きも不透明になっている状況は業績のマイナス要因となる。18日の米国株市場ではダウ工業株30種平均が3年ぶりに2万ドルを下回り、ウーバー株は22%安と大幅続落した。ウーバーは2月中旬に付けた直近高値から既におよそ3分の1の価値になっている。
ユニコーン企業の没落
現在、SBGでは新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けたポートフォリオ企業の支援のために、ビジョンファンド向けに100億ドルの追加調達を目指している。SBGが自ら50億ドル拠出し、外部の投資家から50億ドルの投資を目指す。
しかし、原油価格の急落で中東の政府系ファンドが大きな痛手を被っていることもあり、SBGは投資家から十分な資金を確保できない可能性も高い。
SBGが出資する通信衛星ベンチャーのワンウェブは資金繰り難と厳しい競争のため破産申請の可能性について検討を始めた。ビジョンファンドで出資をするOYOも非常に苦しい状況に追い込まれている。
まとめ
急拡大をしたツケが一気にSBGを苦しめる結果となった今、今後も市場を大きく揺るがすショッキングなニュースもSBG関連から発信される可能性も高く、日々注目を続ける必要がある。
コロナショックから始まった金融崩壊の根源はリーマン・ショック後の世界各国協調の金融緩和、金余りからの資産バブルの発生にあり、それが今崩壊を続けている。
金余りの資産バブルを最大限に活用したのがSBGであり、そのツケが回ってきているのである。2000年のITバブル崩壊時には株価は100分の1まで暴落した。
2月の高値の5,751円の100分の1は57円ということになるが、破綻すれば当然この程度の価格になることも十分にありえる話だが、それでは株式市場そのものも崩壊してしまう可能性も高くなる。孫正義氏のこのあとの手腕に期待をしたい。