100年に一度の経済大恐慌と言われたリーマン・ショックはなぜ起こったのか?
新型コロナウイルスの蔓延による経済への影響は、当時を超えるという声も上がり、今だからこそ、改めてリーマン・ショックを理解する必要がある。
リーマン・ショックとは?
リーマン・ショックとは、2008年9月15日に、アメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことに端を発して、連鎖的に世界規模の金融危機が発生した事柄を総括的に呼ぶ通称である。
2007年のアメリカ合衆国の住宅バブル崩壊をきっかけとして、サブプライム住宅ローン危機を始め、プライムローン、カードローン関連債券などの暴落が起こっていた。
2007年からの住宅市場の大幅な悪化と伴に、危機的状態となっていたファニー・メイやフレディ・マックなどの連邦住宅抵当公庫へは、政府支援機関における買取単価上限額の引上げや、投資上限額の撤廃など様々な手を尽くしていたものの、サブプライムローンなどの延滞率は更に上昇し、住宅差押え件数も増加を続けていた。
歯止めが効かず、マイナス影響が止まらない中、2008年9月8日、アメリカ合衆国財務省が追加で約3兆ドルをつぎ込む救済政策が決定された。
リーマン・ブラザーズ破綻
リーマン・ブラザーズも例外ではなく、多大な損失を抱えており、2008年9月15日に、連邦倒産法第11章の適用を連邦裁判所に申請するに至る。
この申請により、同社が発行している社債や投信を保有している企業への影響、取引先への波及と連鎖などの恐れ、及びそれに対するアメリカ合衆国議会・アメリカ合衆国連邦政府の対策の遅れから、アメリカ合衆国の経済に対する不安が広がり、世界的な金融危機へと連鎖し、その後、ジョージ・W・ブッシュアメリカ大統領が、金融システムに7,000億ドルの金銭支援を行う緊急経済安定化法案に署名を行った。
日経平均大暴落
日経平均株価も大暴落を起こし、9月12日の終値は12,214円だったが、10月28日には一時は6,000円台まで下落し、下落率は50%を超えて、1982年10月以来、26年ぶりの安値を記録した。
リーマン・ショックはなぜ起こったのか?
リーマン・ブラザーズが経営危機に直面したのは、低所得者層向け住宅ローン(サブプライムローン)の証券化商品を大量に抱えていたところに、住宅バブルが崩壊し、2008年6月に入ると株価が急落し、資金が行き詰まったためである。
負債総額は6,130億ドルで史上最大であった。アメリカ政府は2008年春、証券大手ベアー・スターンズの経営危機に際し、公的資金を投入して救済したが、リーマン・ブラザーズには同様の救済策を講じず、世界の金融界に衝撃を与えた。
2008年の1年間に主要国の株式相場はアメリカ36%、イギリス33%、日本42%と大幅に下落し、さらにヘッジファンドが資金を一気に引き揚げたロシア、中国、インドなど新興国の株価暴落が目だった。
世界が協調しての金融政策を行った
リーマン・ショック後、世界各国は景気を刺激するため金融緩和と財政出動を両輪とする経済対策を実施することになった。
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)の2008年の量的緩和を皮切りに、2009年にはイングランド銀行が、2013年には日銀が、2015年にはヨーロッパ中央銀行などが次々に量的緩和に踏み切った。
先進国の中央銀行から大量供給された資金が新興国や原油などの商品市場へ流入し、4兆元を投資した中国の財政出動などとともに、世界経済を下支えした。またサブプライムローン問題を起こした投機マネーの監視を強化する金融規制強化の動きが世界で広がり、2017年には主要国が国際業務を展開する金融機関に自己資本の質・量の充実を求めるバーゼル合意を結んだ。
一連の経済対策で世界経済はV字回復し、1929年から始まった大恐慌のような深刻で長期にわたる世界不況を回避することができた。
緩和マネーの逆流も始まっている
景気回復が鮮明になったアメリカではFRBが2014年に量的緩和を終え、イングランド銀行、ECBなども平時の金融政策に戻した。これにより新興国へ流入した緩和マネーの逆流が始まり、新興国経済の不安定要因につながることとなる。
中国の巨額財政出動は過剰な生産設備や企業債務という後遺症を残し、アメリカではいったん強化した金融規制改革法(ドッド・フランク法)の規制を緩和する試みが始まり、主要国での低金利の長期化から次なる危機の再来を指摘する声も証券・金融界から出ることになった。
新型コロナウイルスの蔓延、金融政策は?
世界中が金融緩和を続ける中で行える方策には限界がある。新型コロナウイルスの蔓延による実体経済の悪化を防ぐため、アメリカ当局も2020年3月、金融緩和を行い、実質ゼロ金利に戻ろうとしている。
中国は既に新型コロナウイルス対策の為に、既に不良債権化するゾンビ企業にも、金融機関を通じ、つなぎ融資を行っており、不良債権処理問題の先延ばしが行われている。
しかし、金融緩和が世界が協調して行ったとしても、新興諸国からの資金逃避の動きには今後も注意が必要である。
今まで以上に紙幣がじゃぶじゃぶ刷られ、金融市場に入り下支えすることになれば、リスクマネーは市場に戻ってくるであろうし、市場の下落を留めることになるだろう。
ただしそこで行われている行為は、株価の実質価値に伴うものではなく、資産インフレが更に勢いを増して起こることになり、世界の二極化は改めて更に進むことにつながる。
一般投資家は常に最新の状況を確認しつつ、大きなお金の流れを理解し、リスクに注意しつつ、市場参加を心がけてほしい。
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