政治混乱

サブプライム問題とは一体何だったのか?

サブプライム問題

新型コロナウイルスの世界的流行により、世界中の株価は下落し、為替は乱高下し、商品市場も大きく値下がった。株価の下落率はリーマン・ショック以来となり、世界の金融当局が状況に注視をし続けている。

サブプライム問題が起こったのは今からほんの12年ほど前のことであり、当時の状況を今のタイミングだからこそ理解すべきである。

サブプライム問題とは?

サブプライム住宅ローン危機とはいつ起こったのか?2007年末から2009年頃を中心としてアメリカ合衆国で起きた。

サブプライム問題は、住宅購入用途向けサブプライム・ローンの不良債権化問題である。サブプライム・ローンへの投資を証券化し金融商品として取引可能にした「サブプライム・モーゲージ」は、金融市場で価格が下落するなどして、リーマン・ショックを代表例とする経済問題に発展した。

サブプライム住宅ローン危機あるいはサブプライム問題の語は、広義として、リーマン・ショックを契機として発生した世界金融危機を含めて指す場合がある。

サブプライム・ローンとは?

サブプライム住宅ローン危機のおおもとの原因であるサブプライム・ローンとは、米国のサブプライム層を対象として、彼らの住宅購入用途向けに、ローンへの返済が滞った場合への担保として購入する住宅に抵当権を設定し、抵当貸付とした住宅ローン、モーゲージ・ローンである。

米国では日本などとは異なり、住宅ローンの証券化が広く普及しており、その債権を組み込んだ金融商品を所有していた金融機関は種類も数も多数に上る。

米国の住宅の安定供給を目的として設立された、連邦住宅抵当公庫(ファニー・メイ)や、連邦住宅金融抵当公庫(フレディ・マック)などが、モーゲージ・バンクからサブプライム・ローンの債権をまとめて購入して証券化し、MBS(Mortgage Backed Securities)という担保証券の中で比較的リスクの高いサブプライム・モーゲージとして市場に供給した。

こうした制度によって発行されたサブプライム・モーゲージのうち、およそ80%が変動金利型のアジャスタブル・レート・モーゲージであったとされる。住宅の値段が上昇し続けるという考えのもと、サブプライム・ローンは過剰に供給されていた。

不動産価格下落による不良債権化

モーゲージ・バンクが貸し付けたサブプライム・ローンの返済が滞った場合、貸主のモーゲージ・バンクは、借主すなわち債務者であるサブプライム層の購入した住宅をその返済の一部として譲渡されるが、米国内での住宅価格が2006年中盤にピークを迎えた後に下落したため、サブプライム・ローンの多くが購入した住宅の譲渡を持ってしてもローンの全額を返済し切れない不良債権となった。

融資額は全住宅ローンの1割、1兆3,000億ドル(推定)となる

米国で住宅ブームを背景に2004年ごろから住宅ローン専門会社などが貸し付けを増やした。融資残高は1兆3,000億ドル(推定)で住宅ローン全体の1割を占めた。

低所得者層でも借りやすいよう、当初の2~3年間は低い固定金利が適用され、その後は金利が大幅に上がる仕組みが主流となっていた。住宅価格が上昇している間は、担保価値は高まり、ローンの借り換えなどが可能になるため、貸し倒れなどは少なかったが、住宅価格の上昇が止まり、金利が上昇したことから、返済不能に陥るケースが相次いだ。

返済不能が相次ぎローンの利率が切り上げられた

リスクが増加すると、サブプライム・モーゲージの利回りは切り上げられた。更に住宅ローンの返済の滞納が増加したため、市場でのサブプライム・モーゲージの購入者は減り、サブプライム・モーゲージの価格は下落した。

そしてサブプライム・モーゲージを保有していた金融機関や投資ファンド、政府系企業等は多額の損失をこうむり、世界的な信用収縮が起こった。この事により、のちのリーマン・ショックは引き起こされたわけだ。

最後はババのつかみ合いに

当初は、サブプライムローンから発生する損失はせいぜい1,000億ドル規模と楽観視されていた。しかし、証券会社が複数のサブプライムローンを担保にした証券(RMBS)を作り、さらにRMBSを裏付けにした債務担保証券(CDO)を生成し、世界中の金融機関やヘッジファンドなどに売っていたため、元々の焦げ付きのリスクを誰がどれだけ抱えているかが見えなくなり、投資家は疑心暗鬼に陥った。

07年3月に米住宅金融大手の経営危機が表面化。その後、CDOに投資していたヘッジファンドに問題が飛び火した。

7月に格付け会社がRMBSの大量格下げに踏み切ると、信用リスク懸念が一気に広がった。

イギリスでは、約140年ぶりの預金の取り付け騒ぎが起こった

8月にはドイツの中堅銀行の巨額損失が明らかになり、仏最大手銀行のBNPパリバ傘下の3つのファンドも解約凍結に追い込まれた。9月にはサブプライムショックの余波で英国の中堅銀行の資金繰りが問題視され、同国としては約140年ぶりの預金の取り付け騒ぎが起きた。米シティグループをはじめ欧米の主要金融機関は巨額のサブプライム関連の損失を計上した。

サブプライム問題が後のリーマン・ショックに繋がった

深刻な金融不安を受け、米国連邦準備制度理事会や各国中央銀行は,市場への資金供給を増額するなどの対策を実施、2007年8月ブッシュ米大統領は、この問題の被害者救済を表明した。

米大手銀行シティグループはこの問題に絡み、235億ドルの損失を計上、みずほフィナンシャルグループの関連損失は5,650億円となった。こうした事態を前に米国の金融機関は外国の政府系ファンドに巨額増資を要請、アラブ首長国連邦のアブダビ投資庁やクウェート投資庁、中国投資などから出資を受けるかたちとなった。

しかし、こうした金融支援にもかかわらず、サブプライムローンに端を発した米国金融危機はさらに拡大し、2008年米国の大手証券会社・銀行・フィナンシャルグループが相次いで公的資金資本注入を受け入れざるを得ない事態となり、大恐慌以来といわれる世界的な経済危機を招くことになった。

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