政治混乱

中国経済の減速を読み解く

中国の成長速度は落ちているのか?

ここにきて、中国の経済減速のニュースが相次いでいる。

米中貿易協議はまずは最初の調印は終わらせ、中国にとってメリットのある形となったと思われるが、新型肺炎の拡大も含め、リスク要因も多く、慎重に見ていく必要がある。

中国国家統計局が先日発表した2019年のGDPは物価変動の影響を除く実質で前年比6.1%増だった。

米中貿易摩擦が長引き、18年から0.5ポイント減速したことになる。

この数字は天安門事件後の経済制裁で3.9%に落ち込んだ1990年以来、29年ぶりの低い伸び率となった。

米国との貿易戦争で製造業が振るわなかった事が要因の1つで、2019年10~12月の成長率は前年同期比6.0%と7~9月と同水準だった。

2019年の実質成長率は中国政府の目標である、6~6.5%の範囲には収まったわけだが、過去の事例から考えても、お手盛りも相当されているだろうし、この成長率は実態とはかけ離れている可能性もある。

中国の2019年の名目ベースのGDPは、前年比7.8%増の約1,600兆円であり、米国に次ぐ世界第2位の規模となっている。現在の為替レートで計算すると、3位の日本のGDP約560兆円の2.8倍にもなっている。

また、工場やマンションの建設など固定資産投資は2019年通年で前年比5.4%の増加と、伸び率は2018年より縮小し、年ベースでは統計を遡れる1995年以降の過去最低を2年連続で更新した形となった。

消費支出など伸び率は減速

百貨店やスーパー、電子商取引(EC)などの売上高を合計した社会消費品小売総額は2019年通年で8.0%増えたが、伸び率は2018年の9%より減速し、アジア通貨危機が響いた1999年の6.8%以来20年ぶりの低さとなった。

消費支出も2019年通年で実質5.5%増にとどまり、2018年の6.2%増から減速した。雇用不安や住宅ローン負担の重さから消費者の財布のひもが固くなったと思われる。

工業生産は2019年通年で前年比5.7%増となり、伸び率は2018年の6.2%から縮小し、年ベースでは統計を遡れる1997年以降で最低となった。柱となる車やスマートフォンの生産が振るわなかっただけでなく、米国が追加関税をかけた紡績品、ロボット、家具なども低迷し、米中貿易戦争の影響がもろにでた格好となった。

ドル建ての輸出額は2019年通年で前年比0.5%増加となり、米国の追加関税が影響し、伸び率は2018年の9.9%から大幅に縮小した。

足元では生産が回復し、製造業の景況感も改善するなど明るい兆しも一部でてきている。米国との貿易協議で第1段階の合意文書に署名し、新たな関税合戦にも歯止めがかかった。しかし、2020年は2019年の2兆元減税のような大規模な財政出動は見送りそうで、経済減速に歯止めがかかるかはまだ見通せていない状況である。

急激に落ち込む自動車産業!!

経済規模で米国に次ぐ世界2位の中国の低迷が続けば、日本や世界経済への悪影響は避けられないことになる

14億人という世界最多の人口を持ってしても過去のような高成長が続く事は今後は考えにくいのではないかと思われる。

特にここに来て自動車販売台数の落ち込みも急で、周辺裾野産業も大きな事から、ここに依存する日本企業の業績にも今後は注意してみていく必要がある。

中国の自動車販売は2019年12月もマイナスを記録し、通年では2年連続で前年水準を割り込んだ。ただ落ち込みのペースそのものは減速しており、世界最大である中国自動車市場の底入れが近い可能性を示唆したが予断を許さない。

全国乗用車市場情報連合会が発表した12月のセダンとスポーツタイプ多目的車(SUV)、ミニバン、多目的自動車(MPV)を含めた自動車販売台数は前年同月比3.6%減の217万台だった。販売台数は19カ月間のうち18カ月で減少した。

景気減速に加え、通商摩擦が原因の関税を巡る不透明感によって、ショールームへの客足も遠のき、自動車メーカーや販売店は苦戦している。その一方、2018年12月までの4カ月連続では落ち込みのペースが減速してきている。

日本の上場企業へもその影響が!!

中国の自動車販売の落ち込みは、中国への輸出を行う国内製造業の業績にも既に多くの影響がが出ている。

工場の自動化、ロボット製造大手の超優良企業であるファナックは今回二度目となる業績の下方修正を行い営業利益は60%も落ち込みました。

中国だけでなく、中国への輸出に頼る台湾での受注が急激に落ち込んだ事も大きなマイナス材料だった。

本社で行われたアナリスト向け説明会では、「中国の需要家は投資に様子見の姿勢が強い。受注状況は想定以上に良くない」と語られ、今後の業績も中国の自動車産業の状況に相当大きく影響されることが予想できる。

自動車産業は裾野が広く、日本の多くの企業にも影響をもたらす。

経済は連鎖をし、繋がっている。

連鎖の先を見通す力を持てば、より洗練された投資が行えるようになるわけで、コアな情報を常に手に入れるだけでなく、そこに書かれる内容への理解を深め、想像力を働かせ、次に起こることを予測し、判断することが重要になる。

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劉義文
中国で生まれ、その後日本に移住。中国語、日本語、英語と3ヶ国語を話す。中国の大手企業でも働いた経験を持ち、中国でも幅広い人脈を持っており、現代中国の事情に精通している。