経済ビジネス

朝鮮半島情勢の行方と在韓邦人の保護

朝鮮半島情勢の行方はどうなるのか?

6月16日、北朝鮮が韓国との宥和の象徴とされてきた南北の連絡事務所を爆破した。今回の爆破は、北朝鮮の金与正氏が13日に予告した通りに実行され、同氏が金正恩氏に次ぐ地位を内部で確立しているとの声も聞かれる。

近年、北朝鮮は自らへの経済協力をスムーズに進められない韓国へ苛立ちを示しており、今回の爆破は韓国へ圧力を掛ける目的があったことは間違いない。また、北朝鮮は輸入の9割を中国に依存しているが、新型コロナウイルスの感染拡大で中朝国境が閉鎖され、国内の社会経済が窮地に立たされていることも今回の爆破に関係している。宥和政策(ゆうわせいさく)を貫いてきた文大統領だが、今後は北に対してより厳しい姿勢で対応せざるを得ず、朝鮮半島は2017年以来の緊張状態に戻る恐れもある。

北朝鮮は米中対立を巧みに利用してくる

一方、秋の米大統領選で、トランプが勝つかバイデンが勝つか分からないが、北朝鮮は米中対立を巧みに利用し、両国を天秤に掛けながら自らの都合に合うような行動を取ってくるに違いない。

最近は、「ポストコロナ時代の米中関係」がホットな話題になっているが、米中とも、実は北朝鮮は切っても切れない存在なのだ。軍事力や経済力で比較しても、米中と北朝鮮では歴然とした差があり、仮に米国と北朝鮮、中国と北朝鮮が戦っても結果は見えている。だが、核というカードを北朝鮮が持っており、米中とも慎重に対応せざるを得ない。

そして、もう1つ慎重に対応せざるを得ない理由がある。それは、北朝鮮が米中間の緩衝国家になっていることだ。例えば、仮に、北朝鮮が米国と外交関係を緊密化させ、米国の影響力が北朝鮮を覆うようになると、それは米国の影響力が中朝の国境まで接近することを意味する。米国と覇権争いを展開する中国にとって、敵の勢力圏が自国の国境に接することは、“核心的利益”が阻害されるほどあってはならないシナリオである。

反対に、北朝鮮が中国と関係をこれまで以上に緊密化し、中国の影響力が北朝鮮を覆うようになると、それは北緯38度ラインまで中国の影響力が南下することになり、米国の軍事勢力圏と接することになる。米国としてもそれはなんとしても避けたいシナリオである。

要は、北朝鮮とは、米中それぞれの勢力圏のちょうど狭間に位置する国家であり、北朝鮮も十分にそれを理解している。そして、上述したように複雑な米中関係を巧みに利用することで、自らの体制維持や繁栄・発展を模索しているのである。

ポストコロナ時代において、米中関係はこれまで以上に対立が深まることが予想される。そうなると、北朝鮮にとっては抜け道が多くなり、東アジアの安全保障はいっそう複雑さを増す危険性がある。

在韓邦人の保護も大きな議論に

以上のような事情に照らすならば、今回の爆破事件も合い重なって、2017年の朝鮮半島危機のように在韓邦人の安全をどう保護するかという議論は今後とも続く。筆者は、海外危機管理のコンサルティング会社でアドバイザーもしているが、同危機の際、韓国に進出する日系企業の間で、如何に駐在員や出張者を安全に帰国させるかで大きな議論となり、朝鮮半島情勢について多くアドバイスしたことを思い出す。

何かしらの有事が発生した場合、ソウルにいるかプサンにいるかでも、その後の安全対策は大きく異なる。韓国には空港も少ないので、有事の場合にはまずそこが戦略的に狙われるので、南下できるように自転車を前もって用意しておくなどの話もあった。日本政府の間でも、在韓邦人をとりあえずはプサンから南50キロほどの対馬に移動させるなどの議論もあったらしい。

2017年の危機はひとまずは回避されたが、今回のこともあり、引き続き潜在的なリスクがある。今のうちから朝鮮有事の際の邦人保護対策を官民一体となっていっそう進めなければならないし、韓国に工場や駐在員を置く日系企業ならば毎日の情勢分析を怠ってはならない。

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サントロペ
国際政治学者、大学教員でありながら、実務家として安全保障・地政学リスクのコンサルティング業務に従事する。また、テレビや新聞などメディアでも日々解説や執筆などを積極的に行う。
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