高齢化社会と介護業界
日本では、「少子高齢化社会」このようなフレーズをニュースなどでも耳にすることがあると思います。高齢化が進むにつれて介護業界が発展していきましたが、今回のコロナ禍でその介護業界が窮地に立たされている現状がいくつか見られます。倒産、廃業、人手不足、低い報酬、家族への負担、経済などあらゆる視点から介護について考えてみたいと思います。
人口比率での高齢化ランキングトップの日本
日本の総人口は、1億2,644万人(2018年時点)となっていますが、その中で、65歳以上が占める人口は、3,558万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は28.5%と世界でもトップです。数としては、中国が群を抜いており、中国の高齢化は2050年頃に深刻化されるとしていますが、それはさておき人口比率でのランキングは以下の通り。
「65歳以上人口の比率」のランキング ※2020年
1位 日本:28.5%
2位 イタリア:24.0%
3位 ドイツ:22.7%
4位 フランス:20.8%
5位 スウェーデン:20.7%
世界が高齢化となる要因には、医療、福祉の発展があります。介護業界もですが、あらゆる技術が進歩して昔に比べれば、悪い言い方をすれば「簡単には死ねない」時代となっています。これ自体が良い悪いかは別にして、高齢化が加速し、コロナ禍の現在、日本の介護業界ではいくつかの問題が明るみに出てきています。
倒産、廃業、失業
コロナ禍で問題となっているのは、倒産や廃業、それに連鎖するのは当然、職を失う失業です。これは、介護業界のみならず日本、世界全体でそのような流れが加速しています。そんな中、介護業界は、2020年1月から12月2日まで倒産件数が112件(東京商工リサーチ調べ)となり、最多だった2017年の111件を上回りました。
12月になり息切れ企業が出てきています。息切れ企業とは、コロナ禍を融資でなんとか凌いでいた状況の企業です。休廃業・解散も2018年を上回る過去最多のペースとなっています。
倒産
・112件(年間最多更新)
・負債総額135億6,300万円
休廃業・解散
・406件(過去最多ペース)
・経営体力のあるうちに事業を止める
訪問介護職の有効求人倍率は15.47倍
倒産、廃業の背景には、退職も含まれています。これは、訪問介護職に多く見られているのですが、訪問介護をする人材確保が困難になっており、9月の有効求人倍率は15.47倍となっています。
仕事を失う人が7万人を超える日本全体で、有効求人倍率は全体で見ると1.04倍となっている中での介護職は、15.47倍。有効求人倍率とは、倍率が1を上回れば求職者の数よりも人を探している企業数が多く、下回れば求職者の数の方が多いことですが、現在全体では1.04倍なのでギリギリの求人の中で、いかに介護職の人手が不足しているかがお分かりいただけると思います。
離職理由は、新型コロナウイルス
介護職から離職している人で、高齢で仕事をしている方の離職が増えています。この理由としては、新型コロナウイルス。高齢者に対しての支援を行う訪問介護ですが、新型ウイルスを「感染させてしまうリスク」と「感染するリスク」両方の心理が考えられます。
高齢者の感染は、ご存知の通り重症化になる恐れが若者と比べて高いこの新型コロナウイルスでの退職は、命を守る行動として必然ではないでしょうか。落ち着けばまた再開させれば良い・・ という考え方も働くという意味では出てもおかしくない状況です。
財務省は、やる気なし・介護報酬引き上げず
仕事を探す中で、重視されるのが待遇、給料面です。来年度に行われる介護報酬の改定の議論が本格化していますが、厚労省がプラス改定を求めているのに対し、財務省は「負担増の環境にない」と全く応じません。これは、改善を心待ちにしていた事業所にとっても、さらなる撤退を後押ししてしまう可能性があります。
経済にも悪影響
介護をしてもらえないとなると、家族への負担が増えます。在宅で高齢者を見る流れになると仕事を休職、もしくは退職しなければいけない家庭も増えます。介護疲れは近年取り上げられていますが、最後の砦となる事業所が減少していくと、介護疲れから出る無理心中や殺害なども増える恐れは否めません。
当然、働く人が減ると経済への悪化も考えられます。仕事か親族かどちらかを選べという選択をせまられる家庭が今後加速します。
介護崩壊は始まっている
大阪のコロナを専門に扱う医療現場で、退職者が急増しました。この背景には、オムツなどの交換をも看護師さんが行うといった業務に対しての苦痛があると言われていますが、これらを当たり前のように仕事として支援してくれている介護業界があるということを、自分たちは理解する必要があります。
人間だれもが、年を重ね長生きすれば高齢者になります。支え合う体制が現時点では整うどころか崩壊しつつあるということを日本の国民として、意識しておきたいところです。
毎週1回情報をまとめてお送りします。
AI TRUSTでは日々の金融市場に影響を与えるニュースを独自の視点から解説を行っています。是非ご自身の投資指標としてご活用ください!!