債権とは?
世界中の債券市場で、長期金利の低下が続いている。
アメリカでは長期金利が短期金利を下回る「逆イールド」が発生し、日本やドイツの10年国債の利回りもマイナスで、世界の債券の4分の1がマイナス金利という事態になっている。
長期金利とは、償還期間が長い債券の金利をいうが、これが低下するということは、債券価格が上昇することを意味する。現在は「債券バブル」ともいわれる状況となっているが、債券市場の動向は、株式市場にも大きな影響を及ぼす。
債券とは、国・地方自治体や企業が投資家からお金を借り入れる目的で発行される有価証券のことを指す。このうち国が発行する債券を「国債」、企業が発行する債券を「社債」という。満期まで保有し続ければ額面金額が戻ってくるほか、保有している間は利子も得られる。
いつ・いくら戻ってくるかがあらかじめ設定されていることから、債券は株式と比べてリスクの低い金融資産と言われている。国や地方自治体が発行していることも、破綻するリスクはゼロではないが、より安全性が高いとされる要素である。
満期が設定されている債券だが、途中で売却することも可能である。その価格は、株式と同じように日々変動しているが、通常、金利が上昇すると債券価格は下がり、金利が低下すると債券価格は上昇する。
たとえば、年利3%の債券を購入したとする。その後、金利が4%に上がれば、新たに発行される債券の年利は4%になる。すると年利3%の債券の魅力が薄れ、価格が下がることになる。反対に金利が2%に下がれば、年利3%の債券は投資対象として魅力的になり、価格が上がることになる。
250兆ドルの巨大債務!!
現在、世界全体の債務総額は250兆ドルを超えている。
新興20カ国・地域の企業の債務総額は、2008年末の9兆ドルから2016年3月末には25兆ドルへと3倍近い水準に急増している。
同じ期間で計算すると、これらの国・地域の名目GDPは1.5倍しか増えていない。
GDPの伸びと比較して倍程度まで債務が膨れ上がっているわけであるから債務の増加率は異常であるといえるわけだ。
さらには、先進国の企業の債務総額は35兆ドル前後と同じ期間では横ばいで推移しているから、それと比較しても新興国企業の債務の増加が新興国の成長率をカサ上げすると同時に、非常に非効率な経済をつくりあげていることがわかる。
そして、この中で一定の大きな割合を占めているのは中国企業であり、さらに言えば本来潰れるべきゾンビ企業が多い。
世界全体の負債総額は152兆ドルにまで膨らみ、世界のGDP合計の2.3倍になっている。
これは、新興国の企業が債務を急増させただけでなく、先進国、新興国、途上国のいずれもが国家として債務を増やしているという要因も加わっている。
このような数字を見ても、今の世界経済というのは、過熱感はないものの、借金の積み上げによって作られたものだと断言できる。
バブルがその限界をあらわにするのは、ある時点で借り手の収益の見通しが悪化し、貸し手が融資の拡大に歯止めをかけるようになるときからだ。
そして、その後はどうなるのか?
債務の増加が止まると同時に融資が減少してくると、経済は悪化の方向に動き出し、債務の不良債権化が表面化してくるということになる。
債務の表面化は株価の大暴落に繋がることはリーマン・ショックで既に経験済みであり、現在の世界を見渡してみても、そこかしこで問題の表面化が見て取れる。
低金利、マイナス金利が続く中、金融機関の利ざや収益は減少の一途を辿り年金や保険などの運用難も深刻さを増している。
金融機関が少ない利ざやの中で、利益を積み上げる為によりハイリスクな投資行動を世界中で行っている。
ゆうちょ銀行の抱えるリスク
日本の金融機関の中にでも特に気にかかるのは日本郵政が筆頭株主のゆうちょ銀行である。
同社の保有ポートフォリオは、民間銀行と違い日本国債を大量保有しており、金利を生まない商品と化しており、また、巨額の投資を米国債や社債、ジャンク債と呼ばれる返済不能になる可能性の高いリスクの高い商品を大量に保有している事から、債権バブルが弾けた場合の同社のショックはかなり大きいと予想される。
日本郵政といえば、グループ会社の日本郵政の問題がある。
金融庁が先日、かんぽ生命保険と日本郵便の2社に初の一部業務停止命令を発動した。業務停止3カ月の厳しい処分に踏み切った背景には、かんぽ生命などが郵便局を信頼する高齢者を食い物にしてきた実態がある。不適切販売の被害者の7割超が60代以上で、85%が女性だった。
グループ全体の信頼が揺らぐ中、債権バブルが崩壊した場合、同社株の大幅な下落に繋がり、更には大量保有する日本国債そのものに対しての疑問符がつく可能性もある。
実は全体の半分近くはジャンク債!!
米大手銀行の調査を元に考えた場合、世の中の全社債の39%は「ジャンク債」の格付けを受けるべきであり、またさらに10%の社債は「B」もしくはそれ以下の格付けと考えられる。
ジャンク債とはそもそも投資リスクが非常に高く、高い利回りを得られるのでなければ、本来機関投資家は投資などしない。
マイナス金利が広がる中で、投資する先のない行き場のない余剰資金がこれらのジャンク債の購入にあてられている。
しかし、多くのお金が集まったからと言って、投資先企業の業績向上に繋がる可能性は低く、過去の割合と同様の企業は破綻し、不良債権化する。
収益が低い中で、過去と同率の不良債権が発生すればどうなるのか?
収益で賄えない巨額の不良債権を抱え込み、多くの金融機関、機関投資家が行き詰まることになる。
このときにはジャンク債、Bランクの格付けの社債、新興国の債権から一気に資金は逃げることになり、債券市場は崩壊する。
債権を発行する多くの企業、債権を所有する金融機関、ともに大やけどを負うことになり株式市場のパニック的な狼狽売りにも繋がっていくことになるであろう。
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