シリコンバレーに逆風が吹く
プライベートエクイティ投資を行うベンチャーキャピタルや大手金融機関のアナリスト達は既存のユニコーン企業の没落に神経をとがらせている。
シェアオフィス事業の米Weworkのように、実績のないスタートアップ企業が突然没落するケースが今後続いていくことを予測しているのだ。
Weworkの上場延期やウーバーなどのライドシェア企業の株価の低迷、更には先々の業績そのものの不透明さなども要因となり、ユニコーン企業や、ユニコーンを目指し、ベンチャーキャピタル等の投資家からの出資を求める企業には大きな逆風が吹いている。
Weworkが陥った状況は偶発的なものではなく、世界的な金余りにより資金調達環境が良く、というよりもソフトバンク及び関連ファンドの資金が大量に投じられたことで、企業として継続的な収益を出すビジネスモデルを作るのではなく、まずは圧倒的に成長し、市場を抑えてしまうことを目的に個々のユニコーン企業の事業は進められた。
参考記事:【ソフトバンク暴落】Weworkの破綻リスクに備えよ
しかし、大きな赤字を継続的に垂れ流し続けていれば、追加資金調達ができなければ、手元資金が尽きたときに破綻することになる。
ウィーワークと似た状況の多くの企業が2020年に資金調達で困難に直面することになるだろう。そして急速なリストラを進めても、途中で資金が尽きれば破綻する。
企業評価額への疑問視
Weworkの親会社ウィーは2019年10月に、評価額が80億ドル未満と、同年前半の470億ドルから急落した。そして、同社は新規株式公開の計画を棚上げし、出資しているソフトバンクグループは救済を余儀なくされた。
Weworkはウォール街にとって、もてはやされている未公開企業の評価額や企業統治を巡る疑わしさの象徴となった。そのような企業はWeworkだけではなく、ユニコーン企業の殆どが同様だと多くの投資家は考えるようになっている。
世界的なマイナス金利による金余りにより、運用先を探す資金がリスクの高い投資、過度な評価のユニコーン企業にも投じられたが、Weworkの上場延期により、完全にこの流れは変わった。
今後は企業成長とのバランスがあったキャッシュフローコンバージョンが投資を受ける上でも最重要とされるであろう。
撤退が続くビジョンファンド
ソフトバンクグループのビジョンファンドが、ペットの散歩代行会社「ワグ」の持分を売却することになった。ビジョンファンドは、Wework、ウーバーなどへの投資の失敗などで、昨年第3四半期(7〜9月)は2016年のファンド発足後最悪の成績を記録した。そんな中で今回は新たな投資失敗事例を追加したことになる。
ビジョンファンドの業績悪化があまりにも深刻なため、その余波がグループ全体に及ぼす悪循環が生じたとみられる。
昨年、ワグに3億ドルを投資したビジョンファンドが、保有株式の約半分をワグに売り返すことにしたとし、ビジョンファンドがワグ投資を放棄していると見られる。
そして、ソフトバンクの役員が務めていたワグの取締役会の議席も手放したが、ソフトバンクの莫大な投資に支えられ、次世代巨大情報技術(IT)企業に生まれ変わるように見えたスタートアップが今回新たに没落したことになる。
ソフトバンクグループは、昨年第3四半期だけで7,000億円を超える赤字を出した。同期間ビジョンファンドだけで9,702億円の赤字を出したからだ。
携帯電話や通信業などの本業での成績はまだ良好なため、ビジョンファンドの損失を一部補填できたが、これにも限界がある。
これまでビジョンファンドはユニコーン企業への投資を集中させてきた。韓国のクーパン、米国のウーバー、Wework、スラック、中国の滴滴出行など、世界88のスタートアップに約707億ドルを投資した。
しかし、ウーバーとWeworkの赤字が深刻なうえ、ク-パンでもこれといった成果を上げられず、更には幾つかの投資先は多くの訴訟を抱え、急速なリストラも進めている。
ユニコーン企業はその特性上、事業環境の変化が激しく、業績と企業価値の変動も頻繁にならざるを得ない。
ソフトバンク及びビジョンファンドの多くの投資先はトップである孫氏が自ら選定し、投資を決定している。しかし、ここに来て、投資選定力についても懐疑的な見方をする金融機関、投資家が増えている。
ソフトバンクグループ、孫氏にとって、今の逆風を変えるにはWeworkの業績回復が最も重要になるだろう。サービスを進化させ、単純な不動産賃貸会社ではないことを金融市場と投資家に見せなければならない。
ユニコーン企業の中には、アリババのように本当に大きく成長する企業も出てくるであろう。それがソフトバンクグループ及びビジョンファンドの出資先であれば、株価は改めて大きく評価されることになる。
しかし、現状の逆境化では、個々株としては、ユニコーン関連株は慎重に様子を見る必要性を感じる。
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