29歳:上場を目指す
外部株主が加わる
29歳のときも様々な事が起こりました。父親が自殺をし、全ての銀行借入れの保証人に父がなってくれていたこともあり、銀行との借入継続で問題が生じ、更には新規融資が受けられない状況に陥りました。このときは地元大手商社が株主に加わり、メインバンクも大手地銀の本店を紹介頂いたことにより解決しました。
しかし、長らく応援してくれていた銀行との関係は終わることになり、当時お世話になった支店長にはいまでも申し訳ないことをしたと思っています。成長する上で、こちらの希望に応えられなければお互いにとって仕方のないことだとも思います。そしてこのとき初めて100%自分名義だった会社の株を外部に持ってもらうということになったわけです。
さらなる拡大へ
当時の静岡では静岡ベンチャーサポートという形で、地元の新聞社、監査法人、そして証券会社が支援する形で、地元上場企業とベンチャー企業の橋渡しをする組織がありました。いまでも尊敬する監査法人のトップと面談し、様々な上場企業のトップを紹介頂き、人脈も広がっていきました。
大手ベンチャーキャピタルにも興味を持って頂き、大きな額を投資頂くことになりました。地元の上場企業の大型ディスカウントセンターの中で連続して出店させて頂き、店舗数も大幅に拡大しました。
しかし、店舗に関して言えば、ディスカウントセンターの中では買取がほぼゼロだったため、売上はあがるのですが、中古CDの幅広い在庫供給は追いつかず、決して上手くいったとは言えませんでした。そんな中でも卸事業は順調で、中古CDだけでなく、スポット的に出てくるメーカーの在庫処分品、ビデオ、ゲームソフトなど、パッケージメディア全体へと取り扱いは広がっていきました。
上場を目指す
大手ベンチャーキャピタルが出資する条件として、当時は当然上場を目指すということがあります。今は幅広いM&Aが盛んに行われていますが、当時の出資する上でのゴールは上場だったのです。監査法人の監査を受け、証券会社との打ち合わせも行いながら、更には管理部には専門スタッフにも商社から出向してもらい、社内体制を固めていきました。
しかし、このあたりからどんどん自分の思っていた会社の形とは離れ、堅苦しいものになっていきます。お金を儲ける。新たなビジネスが楽しい。
そこから始まった会社が、社会のため、より多くの人のためそして社会のため。当たり前の話ですが、そんな事がどんどん求められていきます。息苦しさも感じつつも、上場できればみえる世界も変わると思い、スタッフ一丸となり上場を目指していくのです。
起業心得12:上場を目指すということ
上場を目指す事自体はどんな企業でも起業家でも出来ます。しかし上場に値するだけの新規性、成長性を持つ企業は全体の5%もありません。そして実際に上場できる企業はそこから更に大きく絞り込まれます。企業の予実実績、今後の成長。企業の成長のタイミング、行う事業の株式市場での評価、更には上場を行うための実務経験者、周辺の専門家。全てが揃って初めて上場出来ます。そしてなにより経営者には我慢、忍耐力も必要になります。やりたいことはどんどん縛られがんじがらめになりますから。
32歳:インターネットでの販売
アメリカではNetscape社が上場し、ITバブルが起こる中で、日本でもインターネットが何かと話題になり始めていました。しかし当時はまだまだ通信回線の速度も遅く、ビジネスに使えるようなレベルでは正直ありませんでした。そしてECモールもまだろくなものがありませんでした。
そのような時代に、ベンチャーキャピタルからの紹介で、インターネット関連のコンサルティング会社の社長を紹介を受けました。1歳年上の方でしたが、意気投合し、インターネット上で中古CDを販売するビジネスをやっていこうということで話がまとまりました。そして先々には様々な中古品を販売するサイトを作っていこうと。今はインターネット上で様々な中古品が売買されていますが、本当に当時は一番の先頭を走っていたのです。
eBay メグウイットマンさんとの出会い
eBayは当時アメリカでは破竹の勢いで伸びている会社でした。そのeBayが日本に進出するということになり、eBayジャパンのトップから、是非立ち上げに協力してほしいとの依頼が入りました。
折角なら面白い企画をやりたいと思い、アーティスト別のシングルCDを5枚、10枚、15枚とセットにし、オリジナルベスト盤のような形で、10枚で980円程度の価格設定で売り出したところ、これがあたりました。レンタル店の閉店でシングルCDの引き上げは大抵の場合価格ゼロ。ただで仕入れしていましたので、これがお金に変わったわけです。
eBayの当時CEOだったメグ・ウイットマンさんが日本に入ることになり、立ち上げ協力のお礼に食事に誘われ、夕食を共にしながら、インターネットでの様々な事業の可能性をお話させて頂きました。
eBayは日本では宣伝広告費もほぼかけない中で、ヤフーがヤフオクを急遽立ち上げたこともあり、思うように利用者を伸ばすことができず、その後撤退することになりました。成功できるかどうかは、本当にほんの少しの努力、慢心、方向性によって決まるものだと考えさせられる出来事でした。
起業心得13:新しいうねりを発見し取り入れる
eBayがもし日本で大成功を収めていれば今どうなっていたのか?なぜアメリカで大成功を収めていたのに日本で成功できなかったのか?ヤフーはなぜ同じタイミングでヤフオクを早々に立ち上げることができたのか?
決断のスピードと全体を見ての判断。トップに立つ人間次第で大きく変わるわけなのです。
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