テザーからの資金流出が続いています。暗号通貨市場に与える影響は非常に大きなものになりますので、相当注意をする必要があります。
テザーとは?
テザー(USDT)は、Tether Limited社が運営している「ペッグ通貨」です。ペッグ通貨とは、別の通貨の価値と連動させることを目的とした通貨で、テザー(USDT)は米ドルに連動しています。
最大の特徴は、1ドル(USD)がおおよそ1USDTになるように固定されていることです。
発行したテザー(USDT)とTether Limited社が所持している米ドルを同量にすることで、価値が保たれる仕組みとなっています。
Tether社は2015年11月に設立され、CEO はジャン・リュードヴァイカス・ヴァン・デァ・ヴェルデという人物です。オフィスは香港と米国にあります。
テザーとビットフィネックスとの関係
Tether社は、世界最大規模の暗号通貨取引所のひとつである Bitfinex と近しい関係にあり、パラダイス文書がリークしたところでは、とある海外の法律事務所が Bitfinex の経営者である Phil Potter と Giancarlo Devasini に、イギリス領ヴァージン諸島でのTether社設立で協力したとあります。
Bitfinex とTether社の関係には様々な疑問が投げかけられており、そのひとつが、裏打ちの無いテザーが大量に発行されて Bitfinex に流れ込み暗号通貨バブルを後押ししているのではないかというものでした。2017年9月、Bitfinex とTether社は批判に応える形で、テザーはリアルマネーに基づいて財政管理されているという会計書類を公開しました。
しかし、監査法人のフリードマンLLPが作成したこの会計書類は、冒頭で「この情報は単にTether社の運営の助けとすることを目的としており、その運営の便に供するためだけのものであり、その他の関係者から利用・信頼されることを意図しておらず、実際そうされてはならない」と断っています。
ニューヨーク・タイムズは、その文書は注意深く言葉を選びながら結局テザーが米ドルに裏打ちされていることを証明しておらず、いずれにせよ Bitfinex とTether社は法を犯しているようであり、「Tether社と関わるべきでない理由は山ほどある」という、フリーの弁護士であるルイス・コウインのコメントを報じました。
同様に、経済ニュースを配信するFTアルファヴィルは、その会計書類は「監査文書ではない」と注意を促し、「要するに、文書や記録が完全に検証されたことは無いようだ。この会計書類はまた、問題とされている貸借勘定においてその他の点で債務が無いのかということを明らかにできていない」と報じています。
過去にはNYで訴訟・罰金を課されている
Bitfinexおよび、その子会社であり同名の仮想通貨を発行するテザーが、顧客の資金と自社の資金を混ぜて保管した上に、決済サービス・Crypto Capitalの損失補填に7億ドル相当のテザーを使っていたとして、アメリカ・ニューヨーク州の司法当局に訴訟を起こされていました。
この訴訟が和解に至り、Bitfinexおよびテザーは1850万ドルの罰金を支払うことに合意しています。テザーでは既に過去に顧客の資金の使い込みをしていた経緯があるということです。今改めてテザーの財務内容については大きなリスクを感じます。
昨年8月もビットフィネックスでは入出金が停止に
ビットフィネックスでは昨年8月、全ての法定通貨での入金を一時的に停止することを発表していていました。
何らかの原因で、法定通貨や仮想通貨の出金にも影響が及んでいることがユーザーの情報提供で明らかとなりましたが、取引金融機関も過去にいくつも変えており、何らかの問題を持っている可能性もあります。
テザーの減り方がやばいことに
現在、急激にテザーからUSDへの資金の引き上げが続いてます。
今年の4月までは増えていました。これは暗号通貨市場が継続下落する中で、BTCやアルトコインからテザー保有に多くの人が変えたからです。しかし、5月からは急激に減ってきており、既に5月と6月で20%減りました。
このペースでの出金が続けばどうなるか・・・・
想定を超える悲劇が起こる可能性があります。
財団が持つ資産内容
85%:現金及び現金同等物、その他の短期預金、コマーシャルペーパー
8%:社債、ファンド、貴金属
4%:担保貸付金(関連会社向けではない)
3%:その他(デジタルトークンを含む)
現金及び現金同等物の内訳
58%:コマーシャルペーパー(CP)および譲渡性預金証書(CD)
29%:短期国債(TB)
12%:現金および銀行預金
2%:リバースレポ・ノート
なぜこんなリスクの高い資産内容なのか?
USDTの準備資産の大半が、短期国債や低リスクで流動性の高い証券ではなく、品質のよくわからない信用資産に投資されていることを問題視するべきです。同社のポートフォリオは社債の金利リスクやコモデティリスクを含んだ「クレジットのヘッジファンド」のようにみえます。
公開されたUSDT準備資産の約半分はコマーシャルペーパー(CP)として保有されていますが、契約先企業など、その詳細は一切明らかにされていません。
テザー社が準備金を投資することで、事実上のクレジット・ヘッジファンドであり続けるならば、ビットコインと仮想通貨の価格は、クレジット市場と高い相関を示す可能性が高くなります。
現在、世界先進国の金融引き締めの中で、ジャンク債市場は暴落しています。クレジット市場が調整された場合、USDTが米ドルに対し、額面以下で取引される可能性のリスクがどんどん高まるわけです。そうなると、その時には当然暗号通貨市場も共に下落する可能性が高くなるわけです。
欧米のヘッジファンドの売りが続く
機関投資家向けの大手暗号資産(仮想通貨)ブローカーGenesis Global Tradingの販売責任者は、ヘッジファンドがUSDTを空売りする動きが見られ、そのポジションの額は数億ドルにも上ると証言しています。
無担保型ステーブルコインUSTがディペッグした後にこのようなポジションが増えており、FRBの金利引き上げへの対応としてショートを行う機関もありますが、テザーの裏付け資産について懸念を抱いている機関もあるといいます。
今はUSDTの保有は避けるべき
財団の保有のうちの50%が換金性が高いとしても、残りの50%が質の悪いコマーシャルペーパーだとすれば、このままのペースで換金が続くと、8月後半くらいにはテザーからの換金、出金が止まるリスクは十分に考えられますし、これが暗号通貨市場の悪夢となる可能性があります。
テザーで取り付け騒ぎが起こる可能性はある
テザーの財団の保有者は香港の暗号通貨取引所大手ですから、中国企業のCPをメインに保有している可能性は十分にあり得る話です。
テザーの換金が続く中で、CPを投げ売りすれば、ただでさえ価値が下落しているCPを自ら暴落させることにもつながりますし、全て換金しても資金が足りなくなる恐れは十分あり得る話なのです。
ビットフィネックスは昨年夏に資金の入出金のトラブルがありました。そして、過去には顧客の資金、テザーを使って損失の穴埋めを行っていました。
テザーで取り付け騒ぎが起これば当然ながら市場は暴落します。そして、その時には暗号通貨市場そのものへの不信感が募れば、多くの投資家が暗号通貨市場から去っていく可能性も高いのです。相当に注意深く見守る必要がありますね。
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