野村HD・クレディスイス株価下落
野村ホールディングス(HD)とクレディ・スイス・グループは、米アルケゴス・キャピタル・マネジメントの大規模な株式ポジションの巻き戻しで「多額の損害」を被る可能性が出てきました。全貌が明らかにされていない為、マーケットは現時点ではそう悲観するまでなっていない内容ですが、野村HDの株価は16%、クレディ・スイスは14%安となりました。(3月30日早朝)
これが序章だとしたら、トリガーになり金融市場が転換する、、ということも意識しておきたいところです。リーマンショックも当時は、あまり気にされていない状況から日が経つにつれて深刻化していきました。
ファンドに資金を貸す「信用供与」
野村HDやクレディスイスだけでなく、ゴールドマンサックス、モルガン・スタンレーもアルケゴス・キャピタルに資金貸付を行なっていました。プライムブローカレッジという業務があります。プライムブローカレッジとは、アルケゴス・キャピタルなどのヘッジファンドが運用する現金や株券を預かり保管し、預かった現金や株券を「担保」にヘッジファンドに資金を貸すことです。
ヘッジファンドは、その資金でさらに大きなポジションを持つことができます。これを信用供与といいます。信用供与とは銀行業務で、ヘッジファンド側には大きな投資をすることが可能になりますし、投資銀行側は金利収入を得ることができます。
ヘッジファンドは巨額の資金を持っていますので、旨味があるといえばありますね。信用供与とは、読んで字のごとく、顧客を信用した上で、売買目的に使用する証券や、証券の購入に使用する費用を貸与するという意味ですが、果たして信用できる顧客だったのか、、疑問視されています。
アルケゴス・キャピタルのビル・フアン氏は要注意人物
アルケゴス・キャピタルのファン氏は、かつてインサイダー取引で有罪を認めた経歴があり、市場から要注意人物とされ、ブラックリストにも載っていたようです。しかし、いつの間にかブラックリストから外れており、今回の件が起きています。
ファン氏は、レバレッジ取引で有名で資産は50億〜100億ドルの間で、ポジションの総額は500億ドルを超える可能性があると、市場参加者らは推計しています。レバレッジ取引はうまくいっている時は、資金はどんどん増えていきますが、逆行した場合は厳しい状況がまっています。
今回ファン氏が保有していたポジションはざっくりというと、” 中国株ロング、S&P500ショート “ です。リスクの高い中国株を大量に買い、保有していたということになります。
200億ドル規模のブロック取引
3月26日ファン氏が保有していた株が下落しました。そうすると、担保にとっていた株の価値が下落しますので、強制的に株を売らなければいけない状況となりました(マージンコール)。
大量の株を売る、その売り方を「ブロック取引」といいます。ブロック取引とは大きな塊(ブロック)を株式市場ではなく、市場外で売ることです。ゴールドマンサックスやモルガン・スタンレーなどが買い手を探してきて相対取引で売ります。
現時点でアルケゴス関連の200億ドル(約2兆2,000億円)を上回る規模のポジションが強制的に解消されましたが、まだポジションは残っており、買い手が見つかっていないとの情報もあります。これは下手をすると、ヘッジファンドが破綻してしまう恐れもあります。ヘッジファンドが破綻すると貸していたお金は返ってこなくなり、投資銀行は非常に大きな痛手を被ることになります。
金融庁は「野村HDには清算すべきポジションがまだ残されている」としていますが、野村HDが貸していた資金は20億ドル(約2,200億円)ですが、売れているのかは不明です。ゴールドマンサックスは影響は軽微、ドイツ銀行は回避。モルガン・スタンレーはまだ、損失を明確にしていません。ただ、株式ブロック取引の余波への警戒を受け、リスクオフでドル高、ゴールド安の展開となっており、S&Pが最高値から反落しています。
スエズ運河座礁、韓国不動産、トルコ懸念
トリガーと冒頭で書きましたが、リスクオフ要因はなにが火種となるかは不明です。今回の野村HDの件は、マーケット心理としては不安材料として残っており、この報道がさらにネガティブとなると、ポジションの逆流も考えられます。
さらに、現在世界で不透明な内容が多く存在します。昨日ようやく離礁したスエズ運河の件でいえば、29日時点で石油タンカーなど321隻足止め、世界経済に数十億ドル(数千億円)の損失といわれています。
韓国では不動産バブルが起こっており、韓国経済がいつどうなってもおかしくない状況です。トルコでは、政治が中央銀行の独立性を損ない、政策金利の正常化を妨げるなら、インフレが暴走するリスクがあります。
これらは報道から見えるごく一部ですが、中国情勢などは正直見えにくい状況です。いつなにをきっかけにショック的なことが起こってもおかしくない中での株価の堅調な動き、この辺りは日々注視し続ける必要があります。