今日のポイント

原油高が「業績相場」を「割引率相場」へ変え、AI関連株の選別を加速させました。

市場が嫌気したのは、個別企業の決算だけではありません。原油高と強い雇用指標によって金融引き締めの再開が現実味を帯び、株式・債券・暗号資産の評価基準となる金利そのものが切り上がったことが本日の主題です。

過去24時間の主要市場動向

S&P 500:7,408.30(-1.21%)

S&P 500は1.21%安となり、約1カ月ぶりの大幅な下落となりました。原油価格が100ドル台へ上昇し、インフレ再加速と米金利上昇への警戒が広がったことに加え、AlphabetとTeslaの決算後の急落が指数を押し下げました。エネルギーや防衛など一部を除いて売りが広がり、個別決算相場からマクロ主導のリスク回避相場へ移行した一日です。

ナスダック総合:25,137.69(-2.15%)

ナスダック総合は2.15%安となり、金利上昇の影響を受けやすい大型テクノロジー株が下落を主導しました。Alphabetは年間設備投資計画の引き上げ、TeslaはAI・ロボット関連投資によるフリーキャッシュフロー悪化が嫌気され、両社の下落が他の成長株にも波及しました。AI需要そのものよりも、投資額に見合う収益と現金創出力を示せるかが改めて問われています。

米国10年債利回り:4.7030%(+0.99%)

米国10年債利回りは前日から約4.6ベーシスポイント上昇し、4.70%台に乗せました。原油高によるインフレ懸念に加え、週間失業保険申請件数が1969年以来の低水準となり、FRBが景気よりインフレ抑制を優先できるとの見方が強まりました。長期債利回りの上昇は住宅・企業融資の金利と株式の割引率を同時に押し上げるため、今後も株式市場の主要な制約要因になります。

ビットコイン:65,110.05ドル(-1.42%)

ビットコインは約1.4%下落し、6万6,000ドル付近での上値の重さを確認する展開となりました。原油高、米金利上昇、株式市場のリスク回避が重なり、金利を生まない高ボラティリティ資産として売りに押されました。米暗号資産市場構造法案の成立期待低下も重荷となっており、当面は6万5,000ドル近辺の維持と、オプション市場のボラティリティ上昇を確認する必要があります。

過去24時間の重要経済・金融ニュース

米失業保険申請、57年ぶり低水準 利上げ観測を一段と強める

7月18日までの週間新規失業保険申請件数は18万7,000件となり、前週から2万2,000件減少しました。これは1969年9月以来の低水準で、市場予想の約21万2,000件も大幅に下回っています。一方で、新規採用が急増しているというより、企業が人員削減を控えている「低採用・低解雇」の労働市場とみる必要があります。夏季の自動車工場休止に伴う季節調整の影響もあり、来週以降に反動増が生じる可能性は残ります。それでも、労働市場の急速な悪化を警戒する必要が薄れたため、FRBは原油高とインフレへの対応を優先しやすくなりました。金利先物市場では、7月28~29日のFOMCで利上げが行われる可能性も無視できない水準まで上昇しています。次に確認すべき点は、申請件数の低さが数週間続くのか、そして8月公表の7月雇用統計でも労働需給の強さが確認されるかです。

ECBは金利据え置き 原油高で9月利上げ観測は消えず

欧州中央銀行は7月23日の理事会で、預金ファシリティ金利を2.25%に据え置きました。ECBは6月に利上げしたばかりであり、今回はエネルギー価格上昇の波及を見極めるための一時停止と位置付けられます。ラガルド総裁は、エネルギーショックの完全なインフレ影響はまだ表れておらず、企業の投入コストや消費者物価への二次的波及を監視すると説明しました。市場では9月に0.25ポイントの追加利上げが行われる確率が高く織り込まれ、ドイツ10年債利回りも2011年以来の水準へ上昇しています。欧州は米国以上に輸入エネルギーへの依存度が高く、原油高がユーロ圏の成長率と物価を同時に悪化させる可能性があります。したがって今回の据え置きを金融緩和的な判断と捉えるのは適切ではなく、実質的には追加引き締めを保留した状態です。投資家は9月までの原油価格、賃金、サービス物価に加え、銀行融資と住宅需要の減速度合いを確認する必要があります。

EUがGoogleに8億9,000万ユーロ制裁 米欧テック摩擦の火種に

欧州委員会はGoogleに対し、デジタル市場法違反として合計8億9,000万ユーロの制裁金を科しました。内訳は、検索結果で自社のショッピング・ホテル・交通サービスなどを優遇したことに4億6,000万ユーロ、Google Playで外部の安価な購入手段への誘導を制限したことに4億3,000万ユーロです。制裁金自体はAlphabetの財務規模からみれば吸収可能ですが、検索結果やアプリストアの収益構造を変更するよう求められる点が重要です。また、検索画面へのAI生成回答の組み込みについても、今後同様の自社優遇問題が浮上する可能性があります。Googleは欧州当局との協議を続けつつ、判断に対する法的措置も検討しています。トランプ政権はEUによる米国テクノロジー企業への規制を批判しており、関税や通商交渉へ問題が波及するリスクもあります。投資家は制裁金の額よりも、Googleが検索広告、旅行検索、Google Playの手数料体系をどこまで変更するかを確認すべきです。

Intel決算は予想上回る AI投資の恩恵がCPU需要にも波及

Intelは7月23日の取引終了後、2026年4~6月期の売上高が前年同期比25.4%増の161億3,000万ドルになったと発表しました。調整後1株利益と粗利益率も市場予想を上回り、時間外取引で株価は8%以上上昇しました。AIエージェントがコード作成や業務処理を行う用途の拡大により、GPUだけでなくデータセンター用CPUの需要も急増しています。Intelは需要増加を受け、2026年の設備投資計画を180億ドルから200億ドルへ引き上げ、2027年も大幅な投資増加を見込んでいます。AlphabetやTeslaでは巨額投資と現金流出が株価下落要因となりましたが、Intelでは投資が受注と利益成長を伴っている点が評価されました。これはAI投資全体が否定されたのではなく、資本投入の回収経路が明確な企業へ資金が選別されていることを示します。今後はIntelの供給能力、ファウンドリー部門の外部顧客獲得、設備投資増加後も粗利益率を維持できるかが焦点になります。