農林水産省が全国的な展開を推進している施策のひとつに地産地消があります。地産地消は地元で生産されたものを地元で消費する行動を意味し、地産地消をテーマにした施策によるさまざまな効果を期待されています。地産地消という言葉が生まれたのは、今から約30年前といわれ、きっかけとなったのが、農林水産省が1981年度から4カ年計画で進めた地域食生活向上対策事業でした。
今日は農産物の地産地消をテーマとし、今後の課題や投資の可能性についても考えてみましょう。
地産地消のおける生産者と消費者のメリット
地産地消は、生産者と消費者とをその地域の中で結びつける取り組みとなります。生産者と消費者とが顔が見え、話ができる関係となり、地域の農産物を購入することで、地域の農業と関連する産業の活性化を図るというのが、国としての基本計画です。また、ほかにも生産者と消費者双方に異なるメリットが生じます。
消費者のメリット
生産者の顔が見えるので、安心して購入できる
旬の農産物を新鮮なうちに手に入れられる
地元への貢献を実感できる
生産者のメリット
消費者の声を直接生産者が聞くことができるため、生産するモチベーションが上がる
規格外で通常出荷できない農産物も販売できる
流通コストを削減することができる
消費者のニーズを把握しやすく、それにあわせて計画的に農作物を作ることができる
地産地消という取り組みによって、単に生産者と消費者のあいだに信頼関係が築かれるだけでなく、農産物の廃棄量やコストの削減による生産者側にとっての経済的なメリットが生じることになり、農業所得が上昇すれば、農家を目指す若い世代も増していくことにつながります。
農作物の地産地消の課題は山積み
消費者へ安心・安全な農産物を提供するというのは、地産地消で期待される大きな役割のひとつですが、この取り組みを続けていくためには課題もあります。例えば、学校給食への農産物の安定的生産については、品目数や数量において確保が難しいことや、コスト面で見合わないという点があり、現実的には難しいです。消費者からみれば、どこで入手できるのかわからない、産物の規格が不揃い、必ずしもコスト的に優れているわけではないといった点があります。
地産地消は必ずしも大量流通に適したシステムとなっていないので、コストアップ要因にもなりえますし、地産地消ならどんな地場産品でも売れるといった安易な考え方に生産者が陥る危険もあります。そしてそもそも、厳密に地場の農産物のみによってすべての品揃えを賄おうとするのは困難です。それぞれの作物に適した気候、土壌がありますから。
現状は、地産地消という言葉が誘発する理想的な部分が先行し、ビジネスとして昇華させるのには生産者の意識や環境の整備がまだ整っていないのが現実といえるでしょう。そして、こうした課題を解決していくためには、農林水産省や地方自治体などによる地産地消の意義を普及する活動のさらなる徹底や、関係省庁との連携の強化が必要となるでしょう。
農林水産省の産地消の支援策は?
農水省では具体的に3つの支援策をあげています。1つは地産地消の核となる直売施設の環境整備の支援です。全国にある道の駅など、確かに地産地消の農作物の売り場が増えているのは感じますね。
もう1つは地産地消推進のための地域リーダーやコーディネーターの育成だそうです。あるいは、ITやスマート農業などを活用した生産者と消費者のマッチング、活動ごとの分析に基づいた情報提供や、関係者の情報交換の場づくりの支援です。スマート農業の進化には最近は目を見張るものがあります。
最後の1つは交付金の整備や、地産地消推進計画の策定の要件化です。国産の農産物に対する国民の信頼度は依然として高いです。高齢化社会が進む中で、健康に対しての意識は年々高まっています。安価だからといってすぐに飛びつきがちな他産業の製品とは明らかに異なります。そうした消費者のニーズに、地産地消がどこまで迫れるか、今後も注目されていくでしょう。
地産地消と投資の可能性
農業に対しての個人が行える投資の可能性は今後ますます増えていくことになるでしょう。クラウドファンディングでの支援は様々あり、新鮮な野菜を継続的に安価に手に入れる方法、幅は非常に大きく広がっています。
農地と太陽光発電の組み合わせも進化した形態が出てきており、収益率も上がってきていることから、新たな形のクラウドファンディングも始まっていくと思います。そして自らが地方に移住し、農業を手掛けていくということも、アフターコロナの生き方としても注目されていくことになるでしょうね。
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