為替

中国の「為替操作国」認定解除から、この先の相場を読み解く

為替操作国

「為替操作国」認定とは、そもそも何だったのか?

今月に入り、米財務省が貿易相手国・地域の通貨政策を分析した外国為替報告書を公表し、その中で昨年2019年8月に「輸出面で不当に優位な競争環境を作り出している」として認定した中国の「為替操作国」認定を解除したと明らかにした。

米中両政府による「第1段階」の通商合意署名を控えた状態の中で発表されたため、内部で複雑な調整があったことだろう。とはいえ、そもそもこの米国による為替操作国認定は中国にとって実際的な影響はない。

あるのは「中国が面子を潰された」という事実だけだ。

そもそも、中国が為替操作をしているという確固たる証拠は何一つ無かった。

むしろ昨年8月に為替操作国として中国が認定された直前に、トランプ大統領が追加で中国の関税引き上げを示唆したことをきっかけに、市場がそれに反応した結果、人民元安がもたらされたと言える。

曖昧な認定解除の理由

逆に、この認定解除は、中国に対する友好の重要なシンボルになり得る。そういう好意的な捉え方をされるような解除理由をつけたからだ。

しかし、これが実に曖昧だ。

人民元について昨年9月上旬に1ドル=7.18元まで下落した後、10月に上昇し、現在は6.93元近辺で推移していると指摘。

「この点において中国は現時点で、もはや為替操作国に認定されるべきではないと財務省は判断した」と理由を述べているが、本来これほどに短い期間の相場を切り取っただけで「為替操作をしていたが、止めた」と本来判断できることではない。

その事から、この両国の駆け引きは、意図的に市場を揺さぶるための出来レースと見るのが正しい。

「為替操作国認定」というレッテルが政治的な駆け引きに利用されている、ただそれだけである。

金融関係者が喜ぶ環境を作っている

更に、米国は報告書の中で、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、マレーシア、シンガポール、韓国、ベトナムを為替操作に関する監視対象に指定している。

どのような根拠であるのかは不明であるが、それを言い出したら、トランプ氏がツイッター上で、議会を通していない政策案などを発言し、為替相場を結果的に大きく動かすこと自体、為替操作と言えるではないか。

このような様々な事実を積み上げて考えると、これは米国が中心になって、市場を意図的に揺さぶりをかけている、と考えるのが自然だ。

もともと投資家であるトランプ大統領が、金融関係者が喜ぶ環境を自ら作っているようにも見える。

市場の動きがないと、金融業は儲からないからだ。

為替は過去最高のボックス相場を形成

そのような米国を中心とした市場への揺さぶりが不定期に発生しつつも、為替相場に関しては実に安定している。

とくにトランプ氏が大統領に就任してから、ドル円の相場は綺麗な109円のラインを軸に、綺麗なボックス相場を形成している。詳細については下記の記事も見て欲しい。

2020年ドル円
荒れる世界情勢に対して安定したドル円相場2020年に入り、思いもかけない要因から、結果的にドル円市場は波乱含みの年始スタートとなった。 1月3日に米国防総省がイランのソレ...

毎回、あまりにもトランプ氏の発信内容が唐突でショッキングな為、相場への参加を尻込みしてしまいそうだが、不安材料を投下し、市場を揺さぶり、それと同じく定期的に安心材料を提供してくる、その繰り返しである。

特に相場初心者は、今だからこそ為替相場に投資をする価値はあると言えるだろう。