世界で進むインフレ
日本ではバブル崩壊後の1990年代から長いデフレの時代が続きましたので、インフレに対してピンとこない人も多いでしょうが、世界では確実にインフレは進んでいます。これが過度なインフレにつながれば、急激な金利上昇につながることになり、それが金融市場を不安定化させます。
だからこそ、アメリカを中心とした金融当局者は、過度なインフレは起こっていないと言い続けているのです。金融市場の不安定化を言葉によって安心させ、抑えているのです。
金融市場が不安定化し、金利が急上昇すれば、今まで行ってきた財政支援策が、中途半端な形でマイナス影響がでることになり、過剰流動性バブルの崩壊にさえつながりかねないからです。改めて世界で現在進行形で起こっているインフレについて考えてみましょう。
木材価格の急激な上昇
アメリカではテレワーク化の浸透、さらには住宅金利が非常に割安になったことで、戸建て住宅需要が急増しました。これによって木材の価格が昨年以降急上昇しています。アメリカでの需要が旺盛なことで、隣国のカナダの材木価格も急騰しました。
世界中での木材の需給バランスが変わってしまいました。中国は木材の大規模輸入国ですが、コロナの影響から最も早く立ち直り成長をしていますから、価格高騰しても木材を買い続けます。コンテナ船の輸送価格も年初から急騰していることも、木材価格の高騰を二重に左右することになり、材木輸入国にとっては痛手となっています。
結果的に日本は木材輸入の負け国となり、国内木材を活用しようにも人手不足もあり、低コスト住宅メーカーなどは価格急騰に悲鳴を上げています。日本のメーカーは他のメーカー間の競争も激しいため安易な価格転嫁ができません。結果的には関連企業の収益を圧迫し、企業業績の悪化につながります。
今、欧米の金利は上昇傾向にありますが、日本はまだコロナ禍から立ち直っていない状況で、とても金利を上げられる状況にありません。
日米間の金利差が拡大することになれば継続的な円安に向かう可能性も高いです。
原材料、食糧輸入国の日本にとって、この部分において考えれば、円安は死活問題となります。木材だけでなく、他の輸入材の高騰にもつながることになりますので、皆さん個々の生活においても出費が増える部分ですから、関連するニュースには耳を傾け理解を深めておきましょう。
食料品は大丈夫か?
小麦やとうもろこしといった食品先物価格も上昇しています。気候変動による不作の影響もあります。中国での豚コレラの拡大での輸入急増も原因にあります。世界中が穀物中心の食事から肉食中心に変わることで、家畜に与える穀物需要が増えて、需給バランスが崩れたことも影響です。ここにきて世界の牛肉価格も高騰してきています。
既に小麦粉などの価格は日本国内でも上昇しているようですが、今後、値上げは様々な食料品で行われることになるでしょう。日本の自給率が低い問題は、世界での食料品価格の高騰はボディブローのように個々人の生活にも効いてくることになるでしょう。
世界での食料品価格の高騰で一番ダメージを食うのは、新興国、発展途上国、そして先進国の貧困層です。先進国ではさらなる二極化を生み出すことになり、この不満がデモや犯罪に繋がることになります。現在起きている欧米でのアジア人に対しての差別行動はを、今後も長期間おさまることはないと考えるべきでしょう。
ミャンマーでの軍事政権での圧政は治りませんが、国家機能、産業が機能不全に陥ることで、ミャンマー国民の多くは極度の貧困化に向かうことになり、ミャンマーに進出した日本企業は大きなダメージを負います。ロヒャンギ難民のように、ミャンマーの多くの中小民族の難民が周辺国に移り、行先のないまま難民化が広がることになるでしょう。そしてこの人たちは、今日の糧のために犯罪に走ります。
ミャンマーの周辺アジア国では残念ながら、今後、外国人(多くのミャンマー人含む)による犯罪が増加し続けると考えておくべきです。コロナが治っても安心して海外旅行に行けるところが減るということです。
食糧不足は途上国はカオスの状態をもたらす
インフレの進行により、特にアフリカ各国の政権は混乱をし、成長過程にあった国であっても、10年、20年、30年という単位で後退することになるでしょう。そこに付け込んでいくのが中国です。
お金、人、ものを送り込みながら、さらには多額の賄賂で政権に食らいつきながら、中国経済圏を浸透させていきます。WHOにせよ国連にせよ、既に残念ながらまともに機能しない時代が今だと理解すべきでしょう。
商品先物市場の上昇が意味するもの
現物の食料品や鉄鉱石等の資源価格の上昇を、先物価格が後押しする傾向が明確です。将来の価格を予測するというよりも、過剰流動性資金が有り余っているなかで、行き場を失った資金が、短期的な利益をもとめ、株式市場や暗号通貨市場から次の獲物として商品先物市場に大量に流入していることが現状だと思います。
コロナ禍後の経済回復による需要の急増を予測してということも現実的にありますが、半導体不足による市場の急騰などをみて、同様なことが他の商品市場に起こることを見越し、前もって市場で買っているということもあります。しかし、過剰流動性資金により過度に市場価格が上昇すれば、儲かるのは一部の投機家だけで、社会全体には深刻な影響を及ぼします。
中国では4月の卸売物価指数は前年同月を6.8%上回る
例えばお隣の中国は、2021年4月の卸売物価指数は前年同月を6.8%上回っています。伸び率は2017年10月以来の大きさでした。これは鉄鉱石や石炭、材木、食料品等の資源の輸入価格高騰が大きな要因と考えられます。
資源高はすでに中小企業を中心に収益を圧迫しています。これにより雇用や所得の持ち直しがもたつき、今後は消費回復の重荷になる恐れもあります。商品先物市場の上昇が、実際の経済に大きなダメージを与えるというわかりやすい事例だと思います。
新型コロナ禍の中で、世界中の中央銀行が大量のお金をばら撒き続けました。これによって金融市場は大きく上昇し、そこに参加する投資家は大きな恩恵を受けることができました。しかし有り余ったお金がより投機的な行動を行うことで、実体経済にダメージを与えてしまうという、本当に本末転倒な状況を作っているのです。
お金のバラマキは 二極化をさらに拡大させているだけ
そしてここでダメージを受けるのは二極化の下層ということです。結局のところ、今回の世界中で行われたお金のバラマキは “ 二極化をさらに拡大させる政策になってしまった “ と言えるのではないかと思います。
インフレがある程度で収まれば問題ありませんが、これが止まらなくなってしまえば、いよいよもって、世界中で紙幣からの逃避が加速することになると考えておく必要がありそうです。AI TRUSTとして、暗号通貨市場の今回の調整に対して、悲観的でない理由がこのあたりにもあるのです。
毎週1回情報をまとめてお送りします。
AI TRUSTでは日々の金融市場に影響を与えるニュースを独自の視点から解説を行っています。是非ご自身の投資指標としてご活用ください!!