CLTとは?
CLTとはCross Laminated Timberの略称で、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料です。
厚みのある大きな板であり、建築の構造材の他、土木用材、家具などにも使用されています。日本の国土の2/3は山林が占めており、木材の有効利用ができれば、産業の育成、新たな雇用創出、そして地方活性化にもつながります。
今回はCLT材の現状についてまとめてみました。
ヨーロッパで利用拡大するCLT
CLTは1995年頃からオーストリアを中心として発展し、現在では、イギリスやスイス、イタリアなどヨーロッパ各国でも様々な建築物に利用されています。
また、カナダやアメリカ、オーストラリアでもCLTを使った高層建築が建てられるなど、CLTの利用は近年になり各国で急速な伸びを見せています。特に、木材特有の断熱性と壁式構造の特性をいかして戸建て住宅の他、中層建築物の共同住宅、高齢者福祉施設の居住部分、ホテルの客室などに用いられています。
日本では2013年12月に製造規格となるJAS(日本農林規格)が制定され、2016年4月にCLT関連の建築基準法告示が公布・施行されました。これらにより、CLTの一般利用がスタートしています。
五輪スタジアムでも木質材の利用が
CLTは構造躯体として建物を支えると共に、断熱性や遮炎性、遮熱性、遮音性などの複合的な効果も期待できます。木の表面をそのまま見せて用いると、木目や木の肌触りを感じる心地のいい空間ができます。
また、木材は持続可能な循環型資源であり、森林資源を有効活用した省CO2型の建物を建てられます。その他にも、工場内で一部の材料を組み立ててから現場に搬入するプレファブ化による施工工期短縮が期待でき、接合具がシンプルなので熟練工でなくとも施工が可能です。災害時の仮設用住宅にパーツとして保管し、必要な時に組み立てて利用することも考えられます。RC造などと比べた場合の軽量性も大きな魅力です。
CLTのメリット、デメリットは?
メリット
CLTのメリット まず挙げられるのは、日本の森林資源を有効活用できるということです。日本には現在、建材として使用できる木材がたくさんあります。山林の保全のためにも、木材を適度に伐採して使用し、循環させていく必要があります。CLTは板を重ねて接着するので、あまり太くない木や節の多いものなど一般的に建材として不向きな木材でも活用することができます。つまり、山林の適切な保全にCLTが役立つというわけです。
また、現在の木造建築では柱・梁のような細長い「線材」で建物を支えていますが、CLTを使用すると、鉄筋コンクリートのように「面材」で支えることができるようになります。その結果、鉄筋コンクリートのような強度を保ちながら建物自体を軽量化することができるため、基礎工事の費用を削減できる可能性があります。
デメリット
CLTの最大の問題は、コストです。現在、日本の建築業界では、2×4(ツーバイフォー)という工法が主流です。CLTはこの2×4工法に似た工法ですが、長年研究されて国際的にも取引量が多い2×4工法に比べ、どうしてもコストが高くなりがちです。加えて、強度はありますが木材であるため、耐燃性に関しては対策が必要です。
コストを如何に下げられるか?
欧米産CLTの約7万円/m3に比べて、国産CLTの価格は約15万円/m3と高く、競争力強化のため7万円程度まで下げる必要があるといわれています。しかし、欧米のCLTが材料として使うトウヒなどに比べて、国産CLT原料のスギは含水率が高いため、乾燥に手間がかかります。CLTは加工工程も多く、歩どまりは約15~30%と、合板や無垢材に比べて高くありません。
CLT生産工場を安定的に稼働させるのに、必要な木材を集めるのも簡単ではありません。CLTの価格を下げるには、通常1万円/m3以下の木材の買い取り価格を、3,000円/m3まで下げる必要があるといわれますが、あまり現実的ではありません。
山主の所有面積が小さい日本では、大量の木材を安定して集めにくく、CLTに使われる原料の木材は合板用に取られて余っていないことも、工場の製造コスト増になります。そもそも山林所有者側にとって、柱など建築用材になるA材は高く利益がありますが、CLT用の木材は安くほとんど利益が出ないのが現状です。伐採搬出費用の約7割が補助金で賄われていますが、木を育成する50~60年間は山主の持ち出しのほうが多く、このままでは次の世代のために木を植えられない状況です。
公的支援をもっと有効にできないものか?
新型コロナ禍で失業率は上昇し、潜在的な失業者も加えれば非常に高い水準にあります。日本の2/3を占める山林の有効活用を行うための一時的な雇用を、公的支援を元に行うことができれば、地域活性化にもつながると思いますし、地方の雇用の多様化にもつながっていくのではないかと思われます。
当然のことながら、そこには様々なハードルもありますが、今ある豊富な資源の再活用は、全世界が取り組むべき優先課題でもありますし、GOTO等よりも先に取り組むべきものではないかと考えます。
そして新規で建てられる公的建築物もそうですが、一般住宅でも優先して選択できるような補助金、支援金があれば、CLT材の利用が広がり、結果的にコストを下げることにもつながっていくと思います。CLT材については引き続き読者の皆さんにも興味を持っておいて頂きたいと思います。
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