混迷が続く米大統領選ですが、バイデン氏の勝利が決定したとしても、トランプ氏は徹底的に争う姿勢を見せており、敗北宣言はなかなか行いそうにもありません。分断化されたアメリカはもう元には戻れないのか?米中関係は今後どうなるのか?今日はこの点を推理してみたいと思います。
アメリカファースト&トランピズム
今回の大統領選は、アメリカ・ファーストの孤立主義と、反体制ポピュリズムからなるトランピズム(トランプ主義)の強力な組み合わせが大きなうねりとなり、当初のメディアの統計予想に反し、トランプ票に集まったことがよくわかりました。
新型コロナのパンデミックにより、25万人のアメリカ人が亡くなったにもかかわらず、さらには経済も大きく落ち込みを見せたのにもかかわらず、ドナルド・トランプ大統領は2016年の得票を上回り、前回の衝撃的な勝利の再現にまで近づくまでとなりました。
共和党はいまやトランプ党になってしまった感があります。
下院は民主党が過半数を維持するでしょうが、上院では共和党が過半数を取り、ねじれの状態が続きそうです。最終的にバイデン候補が勝利したとしても、政権運営は過去4年間に見てきた以上に、より困難を極めることになることが予想されます。
共和党は、上院と下院でより大胆に議事妨害をするようになり、民主党が発案する主要な立法改革を通過させることはほぼ不可能となるとみられています。そうなれば、バイデンはトランプのように、大統領命令によって政権を運営しなければなりません。大統領が強力な独立機関であり続ける外交政策では自らの行動の自由を保持できるかもしれませんが、それ以外は多くの点で制約されることになるでしょう。バイデンの目指すキャピタルゲイン課税や企業への増税の動きが制限されることになり、株式市場はこれを好感し、上昇につながっているわけです。
2つのアメリカ
今回の大統領選での選挙マップを見れば、アメリカが基本的に2つの国になってしまったことがわかります。1つは西海岸、北東および大西洋岸の地域からなる、グローバル・アメリカです。これらの地域の経済は世界市場と緊密な関係があり、移民の流入を必要なものとして受け入れています。
もう1つはアメリカ・ファーストの国です。田園地方である山岳の西側地域および南部を中心とし、その範囲は中西部を支配したラストベルトと呼ばれる地帯まで広がっています。これらの地域が同調するのは、純粋な人種で構成されたアメリカの追求です。
そして一部の州は、この2の国を内包しており、過去2回の大統領選で目にしたように、今やこうした州がアメリカの大統領選の勝敗を決定しています。
分断する二つの国、国民
これらの分割された2つの国は別々の価値観、ルールを持っています。一方の国は事実を観察し、科学を尊重し、少なくとも民主主義の目標と礼儀を重視しています。もう一方の国は、トランプ支持派であり、もう一つの国の真逆を考えています。そしてこの2つの国は相互に軽蔑し合っているのです。トランプは最終的には敗北するでしょうが、トランプ支持は続いていくことになるでしょう。
バイデンは女性票では大勝して、男女間での得票率の差は13%に上り、マイノリティでも大差で勝利しています。黒人の87%、アジア系とラテン系では3分の2の支持を今回の選挙では得ています。30歳未満の若者はほぼ3分の2がバイデンに投票し、大学卒業者も確実に過半数がバイデンに票を投じています。アメリカの人口動態の今後の変化を考えると、民主党の前途は明るく、今後の選挙では確実に民主党が強くなるのかもしれません。
トランプ主義者は経済が最重要課題と考え、現在の暮らし向きはよいと感じている人であり、バイデン支持者は新型コロナの感染拡大を最も懸念する人達であり、ここでも大きな分断がありました。トランプはその分断を深めるように選挙運動を行いました。新型コロナ感染症に対する懸念を軽視し、経済的繁栄を取り戻すことを約束し、アピールし続けました。これにより、アメリカは世界で最もコロナ対策に失敗してしまったにもかかわらず、トランプ主義者はそれに目を瞑り、トランプを応援し続けました。まるで第一次世界大戦後のナチスドイツ、ヒトラーへの崇拝と重なって見えてしまいます。
日本の地政学的リスクは増すばかり
アメリカの民主主義は新たな予測不能な段階に入ったことにより、日本の地政学的なリスクは大きく増すことになります。尖閣諸島への中国の行動はより進むことになり、台湾海峡での緊張は今まで以上になるでしょう。南シナ海や北朝鮮の状況もしかりであり、日本の独自の外交力が期待されますが、言葉では抗議しても、具体的な行動に移すだけの判断はできないのではないかと考えられます。
中国は常に長期的な視点で考えている
国際社会での影響力を増大させたい中国にとっては、支離滅裂なトランプ政権があと4年続いた方が有利だという主張もあれば、貿易や台湾をめぐる問題を考えれば、バイデンの方が融通が利くかもしれないという主張もあります。
本質的に中国が求めるものは、二国間関係の健全で着実な発展を維持・促進していくことにあります。短期的なアメリカの衰退を求めるわけではなく、長期的な視点で、世界のリーダーの地位につこうと考えているわけです。アメリカの次期政権には、中国に歩み寄り、衝突や対立をすることなく、互いに尊重し合い、互いの利益のために協力し合って立場の違いを調整しつつ、両国間の関係を正常に発展させていくことを期待しているのです。そういう意味で言えば、バイデンが大統領になることが、今の中国にとっても都合がよいと考えられます。
アメリカの分断は元に戻るのは非常に難しく、日本はアメリカに寄り添っていれば良い時代は既に終わったと考えるべきでしょう。GAFAMをはじめとする企業はこのような中でも成長は続くでしょうし、国家よりもインターネット上を支配する各企業への信頼はもっと強まるように思えます。
紙幣より、これら企業の株式に資金は逃避するでしょうし、金や暗号通貨に紙幣から逃避する動きがこのあとも加速すると考えるべきでしょうね。
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