経済ビジネス

膨張する世界の債務、本当に大丈夫?

世界全体の財政赤字 前年比3.3倍に急増

国際通貨基金(IMF)が直近に公表した財政監視報告書で、2020年の世界全体の財政赤字が国内総生産比12.7%と、前年の3.3倍に急膨張すると予測しました。新型コロナのパンデミックを受けた巨額の財政出動が響いています。

公的債務も積み上がり、過去最悪になるとの見通しを示しました。今日はこの点に焦点をあて、起こり得るリスクを考えてみたいと思います。

各国合計の経済対策は合計1240兆円

各国の経済対策は計11兆7000億ドル(約1240兆円)とGDPの約12%に上り、2020年末の財政赤字額は83兆ドルに達する見込みです。日本は1人10万円の特別定額給付金など事業規模で234兆円の対策を決定し実行しています。

財政赤字はGDP比で14.2%と、前年から4倍超に急拡大する見通しです。約3兆ドルのコロナ経済対策を決めた米国は約3倍、中国も2倍近くに膨らみます。

先進各国の国債格付けは格下げ方向へ

格付け会社S&Pグローバルのソブリン格付け部門は、新型コロナ流行に起因する財政悪化を理由に、一部の先進国が向こう数カ月に格下げや格下げ方向への見直しの対象になる可能性があるとの見解を示しました。

コロナ禍に対応した医療制度や企業・労働者の支援策の莫大なコストが一部の国々の財政を根本から悪化させていると指摘しています。現在、北半球の多くの国では春よりも酷い新型コロナ感染状況が拡大していますので、この後はさらなる経済支援策も必要になるでしょうし、コロナに起因する格付け見直しは必須となるでしょう。

格付け低下によるリスクとしては、その国からの資金逃避と、それを避けるための高金利政策も必要になりますし、国債価格の下落リスクも想定する必要があります。EU内では財政の弱い南欧と規律に厳しい中・北欧の間で意見統一が進まないことによる支援策の後手後手、それによるユーロ下落も想定したほうが良いかもしれません。

新興国、途上国国債は既に格付け見直し済み

S&Pは年初から既に60近い国について格下げや格付け見通しの引き下げを行っていますが、高格付けの先進国はわずかしか含まれていません。

しかし、一部の国々では公的債務の対国内総生産(GDP)比率が15〜20ポイント急増と、通常時であれば4〜5年を要するスピードで悪化していますし、今後も3〜5年は歳出が増え続ける見込みとなっているため、先進国に対してもシビアに格付けを行う必要が出てきています。

S&Pでは、自国を守るために非常に大規模な財政・金融政策を実施してきたEU、日本や英国などの高度先進国、米国とも財政状況は問題であり、注目すべきは今後想定される財政の軌道で、異なる構造的パターンを確立する軌道が想定されるのならば、格付けで何らかの動きがあるだろうとしています。

S&Pのソブリン格付け対象のうち、既に4分の1近くに相当する31カ国が格付け見通しがネガティブになっています。これにはオーストラリア(AAA格付け)、イタリアとメキシコ(BBB)、スペイン(A)も含まれています。ネガティブ見通しの国が広がるのと同時に、先進国の多くでコロナ感染が再び拡大していることは大きな懸念材料です。

S&Pの見直しが進行中で、今後数カ月続く見通しとし、一部の国は数年で安定的な見通しに回帰するかもしれないが、そうでなければ格付けが引き下げられることになるとも語られています。また、先進国以外に、中南米のメキシコ、ブラジル、コロンビアの3カ国、サハラ以南のアフリカのザンビアなどの最貧国という2つのグループについて財政を巡る懸念が大きいとしており、新興国、途上国の中では今後さらにデフォルトが広がるリスクも考えておくべきでしょう。

新興国、途上国通貨についてはボラティリティの高い状況が続くことが懸念されますので、レバレッジの高い取引には注意が必要です。株式市場にとっても当然波乱材料にはなります。しかしビットコイン価格に対しては、途上国での自国通貨への不信感が広がることで、継続的な需要増加につながる可能性の方が高いと考えています。

アメリカの財政へも注意が必要!!

就任前には「8年間で債務を消し去る」とトランプ大統領は豪語していましたが、実際にはアメリカの政府債務は膨らむ一方になっています。

新型コロナが招いた経済危機への対応がまだまだ必要になりそうなアメリカですが、トランプ大統領が就任して以降、政府債務が大幅に膨らんでいます。トランプは就任前に「今後8年間で」債務を消し去るとしていましたが、就任時の2017年1月に19兆9000億ドルだった連邦政府の債務残高は現在、6兆6000億ドル増えて26兆5000億ドルになっています。

たった4年間で政府債務を35%以上増加させているのです。そして現在も大型のコロナ対策のため、国債発行が急増中です。既に財政出動は3兆ドルを突破しており、今年度の財政赤字額は過去最大の3兆7000億ドルに上る見通しです。追加の経済支援策が成立すればその額はさらに増えることになります。

米ドルは大丈夫なのか?

当然誰もが心配することが米ドルの今後の行方です。刷られ続ける紙幣は確実にその価値を下落させていきます。多くの国は基軸通貨である米ドルを信頼していますが、ここまで負債が急増すれば、その信頼は揺るいでいきます。

アメリカ自体が今回の大統領選で国内分断状況にあり、この溝はなかなか狭まらないでしょう。それに対して中国共産党は着々とデジタル人民元化を推し進め、新興国、途上国各国への借金外交を推し進めています。

世界の基軸通貨は米ドルとデジタル人民元へと二極化することは避けられないのかもしれません。米ドルの急落、米国債の急落による世界の債権市場の混乱というストーリーも来年は筋書きに加えた上で、投資判断が必要なタイミングも出てきそうですね。

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