日本人7万人以上が生活するタイの首都バンコクで9月19日から20日にかけ、現職のプラユット政権に対する抗議デモが行われ、主催者発表で市民5万人あまりが参加した。
タイでは王制について色々と議論することはタブー視され、不敬罪になることがあるが、今回、参加者たちはその王制改革や新しい憲法の制定などを求める声を上げた。
タイでは7月以降反政府集会が頻繁に開催
タイでは7月以降、首都バンコクを中心に各都市で、プラユット首相の退陣や憲法改正を求める学生・民主団体の反政府集会が頻繁に開催されている。7月25日から26日にかけては、学生たちを主体とする抗議グループがバンコク中心部で反政府集会を開き、学生たちはバンコクの商業街に集結し、ラーチャダムリ通りから戦勝記念塔までデモ行進したりした。
2日間の抗議デモでは、警察との衝突などは発生せず、負傷者も出なかったが、学生たちはプラユット首相の退陣、国会の即時解散、現行憲法の改正、反政府団体・活動家への弾圧停止などを訴えた。また、8月10日、バンコク近郊のパトゥムターニー市にあるタマサート大学で開催された抗議集会でも主催者発表で1万人以上が参加し、同様の強い要求が政府に向けて訴えられた。こういった抗議デモは小規模なものまで含めると毎日のようにどこかで起こっているとも言われる。
タイ政府は各大学に要求書を配布
このような状況を受け、タイ政府は9月、全国にある各大学の学長に対して、学生が集会などで王室改革を要求することを止めさせるよう求める要求書を配布した。タイ政府は、「学生たちは不敬罪の廃止を訴えているが、それは王制を打倒することを目論んでおり、今後さらなる暴力・衝突を招く可能性がある」と警告した。
軍や警察も、デモ参加者らがそういった要求を今後も続けるなら、集会の強制排除や逮捕も辞さないと警告している。タイでは過去、1976年と1992年に発生した民主化デモで治安部隊が学生に向けて発砲し多数が死傷したことがある。
暴力的な衝突は発生はしていないが十分に注意が必要
現在のところ、幸いにも香港やベラルーシで発生したような暴力的な衝突は発生しておらず、日本人が巻き込まれたり逮捕されたりしたという報告はない。
しかし、香港やベラルーシで日本人が拘束されたとする報道が過去にはあり、絶対に近づかない、偶然現場にいたらすぐに立ち去れることが何よりも重要となる。バンコクにある在タイ日本国大使館も、在留邦人に対して、「不測の事態に備え、政治集会が行われている現場周辺には近づかないように」勧告している。
なぜ、タイの若者たちは反政府の声を上げているのか?
なぜ、タイの若者たちはこれほどまでに反政府の声を上げているのだろうか。その背景には、経済格差や失業など社会経済的な不満、王族や政治家、政府幹部などの記録権益層に対する強い憤りがあり、新型コロナウイルスの感染拡大がそれに追い打ちを掛けている。
タイ政府は8月25日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために施行されている非常事態宣言について、9月30日まで1ヶ月間延長することを決定した。非常事態宣言は3月26日に初めて発令され、今回で5度目の延長となる。新型コロナウイルスはタイで猛威を振るってわけではないが、政府は要警戒の姿勢を崩しておらず、これが皮肉にも若者たちの経済的不満を高める結果となっている。
しかし、こういった事情は最近のベラルーシや中東各国などで起こっているケースと非常に似ている。それぞれ個別の問題で事情は全く異なるにせよ、これまでの前例主義や権威主義、既得権益を打破しようとする若者たちの懸命な姿は全く同じだ。
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