今年に入ってすぐ、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官が殺害されたことがきっかけで、米イランの軍事的緊張が一気高まり、筆者の周辺でも中東から退避すべきかどうかの声が複数聞かれた。
しかし、軍事的緊張は幸いにも回避され、それ以降世界は新型コロナパンデミックとの戦いの時代に突入し、米イランリスクが報道される回数も激減した。あれから、米イラン情勢はどうなっているのだろうか。
アメリカイラン情勢はどうなっているのか?
確かに、1月以降この問題で大きな緊張は走っていないが、米イラン対立の最前線であるイラクでは、イランから支援を受けるシーア派武装勢力による駐留米軍を狙った攻撃は断続的に発生している。
2月には、首都バグダッドにある米国大使館付近とイラク軍基地にロケット弾4発が撃ち込まれ、うち2発は米国大使館の敷地内に着弾した。3月には、バグダッド北郊にある米軍駐留基地にロケット弾15発以上が撃ち込まれ、米国人2人と英国人1人が死亡、12人が負傷した。そして4月には、バスラ西郊にある米石油企業などが拠点を置く原油生産地区で、住居や事務所があるエリアにロケット弾が着弾した。
攻撃は今年に入って増加している
今年に入って確認されている攻撃は、1月に79件、2月に82件、3月に61件だったが、4月には110件と大幅に増加した。110件のうち、大半はイスラム国(IS)による攻撃だったが、親イランのシーア派武装勢力による攻撃も2件あり、南部バスラにある米国企業の施設への攻撃と、バグダッドにある中国企業が運営する石油施設への攻撃だった。
また、6月1日から28日までの間に、ISやシーア派武装勢力による攻撃は59件発生し、首都バグダッドで確認された10件のうち8件がシーア派武装勢力による攻撃だった。
今後アメリカイラン関係はどうなるのか?
今後、アメリカイラン関係はどうなるのだろうか。
最大のポイントとなるのは、やはり11月の米大統領選挙である。
現在、大統領選ではバイデン氏がトランプ大統領を支持率でリードする展開となっているが、バイデン氏が勝利すればこの4年間のイラン政策は大きく変わることだろう。バイデン氏はオバマ前大統領の理念や政策を継承する姿勢を強調し、核なき世界を目指す意思を表明している。また、2015年のイラン核合意から一方的に離脱したトランプ政権を非難しており、バイデン政権が誕生すれば2015年のイラン核合意に戻る可能性が高い。
バイデン政権になれば再び対米不満が高まらないか懸念
しかし、バイデン政権になった場合、サウジアラビアが再び対米不満を高めないかが懸念される。最近、サウジアラビアが中国支援のもと北西部にウラン精鉱施設を建設しているとして、米国など関係国が核兵器への転用を含め警戒を強めていることが報じられた。そうなれば、サウジアラビアと対立するイラン、中東で唯一の核保有国であるイスラエルが黙っているはずがなく、中東地域で核競争が激化する恐れがある。
また、サウジアラビアがバイデン政権に不満を強め、中国へ傾斜すれば、中東地域を舞台とした米中対立も激しくなる可能性がある。バイデン政権になれば、トランプ政権下での米イラン対立は収まるが、上述のような新たなリスクが考えられ、中東リスクが依然として続くことになる。
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