想定外のマイナス成長
2019年10月〜12月のGDPは年率6.3%のマイナス成長となり、想定外の大きなマイナス成長となった。この数字には新型コロナウイルスの影響は反映されておらず、2020年1月〜3月以降のGDPに反映されることになり、これによりマイナス成長が続く恐れも高く、日本経済がリセッション入りすることが予想される。
日銀は1月21日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策の現状維持を決めた。
2016年1月に異例のマイナス金利政策の導入を決めてから丸4年がたった。
日銀は導入当初、最強の金融緩和と黒田東彦総裁が自賛したが、目標とする2%の物価上昇はいまだに実現できず、政策正常化への出口は全く見えていない。そして現在、低金利環境の長期化で副作用への懸念が一段と強まっている。
銀行だけでなく、金融機関の収益環境は確実に悪化してきている。日銀の金融緩和で、銀行にとっては利ざや縮小という苦境が続くことになる。そして債券市場では国債の利回りが低水準で推移し、年金基金や生命保険会社は運用難にあえいでいる。
銀行にお金を預けても殆ど利息がつかないことで、国民の将来不安を助長することになり、今まで以上に貯蓄にお金が回ることで、消費低迷にもつながる。
マイナス金利への懸念は世界で広がっている
マイナス金利政策に対する警戒感は海外でも広がっている。スウェーデン中央銀行は昨年末、景気減速にもかかわらず利上げを断行し、5年近くに及んだマイナス金利政策から脱却した。マイナス金利による経済への悪影響が無視出来なくなったからだ。
日銀はSARSが流行した2003年春に金融緩和に踏み切った経緯がある。そして現在すでに、新型コロナウイルスによる経済への悪影響が広がれば、さらなる金融緩和を行うとコメントしている。しかし、日銀がマイナス金利を拡大すれば、国民に安心感を与えるどころか逆に老後の資産形成への不安を強めかねない事にもなる。
今回、日銀は短期政策金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する長短金利操作を柱とする現行政策の継続を決めた。
米中貿易協議の第1段階の合意で世界経済の先行き不安が和らぎ、対ドルの円相場が1ドル=110円前後で推移するなど金融市場も安定している事が現状維持の決め手になっている。
マイナス金利政策から脱却する糸口が掴めない中で、国内外ではその功罪を巡る議論がここにきて活発になっている。
株価の上昇は国民の二極化を進めた
この4年間の経済・市場環境をみると、日本経済全体の需要と潜在的な供給力の差を示す「需給ギャップ」は16年10~12月期から12四半期連続で需要超過を記録し、物価に上昇圧力がか掛かりやすい状態を維持している。
日経平均株価は4割上昇し、不動産価格も上がり、資産市場を刺激する効果はあった。円相場は16年夏ごろに一時1ドル=100円を超える円高・ドル安が進む場面もあったが、ここ2~3年は落ち着いた動きを見せて
いる。
脆弱な金融機関は窮地に
一方、超低金利の長期化で銀行は利ざやの縮小が続く。全国111行のうち14行で19年3月期の総資金利ざやが逆ざやになった。
経営の厳しい銀行が融資に慎重になったり、逆にリスクの高い投融資に傾斜したりする可能性も出ている。国債利回りの低下で生命保険会社や年金基金の運用難が深まり、個人の老後の生活にも影を落としている。
海外でもマイナス金利への逆風が強まってきた。欧州中央銀行(ECB)は現在、政策金利の一つをマイナス0.5%と日銀より低くしているがドイツでは企業や個人の預金口座の多くにマイナス金利や口座維持手数料が課され、ECBへの反発が強まっている。
米連邦準備理事会(FRB)は19年に景気の下振れリスクをにらんで3回利下げし、現在の政策金利は1.50~1.75%になっている。FRB内では将来の景気後退期を見据えた政策手段の議論が続き、19年10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨によると、マイナス金利については多くのメンバーが否定的に捉えている。
金融システム全体の崩壊の恐れも・・・・
マイナス金利の弊害が他のマイナス金利国で議論される中、新型コロナウイルスの広がりによる経済の悪化に対して、日銀がどのような政策を取るのか?行える手法の限界は近づいている。
収益基盤の弱い金融機関の中では、新興国債券やジャンク債に近いような債権への投資も広がっており、金融環境の変化によるジャンク債バブル崩壊、新興国債券バブル崩壊が、これらの金融機関を襲った時には、既に財務体制が脆弱になっている中で到底耐えられるものではない。
そして、その時は金融再編性というレベルでは話は終わらず、大きな経済混乱につながることは間違いない。金融システムの一部が崩れれば、日本国債への信頼下落にも繋がり、金融システム全体の崩壊につながるリスクも高いわけである。
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