経済ビジネス

忍び寄る商業不動産の下落の足音、クリティサイズド・ローン(CL)に要注意!

アメリカのニューヨークではオフィス過剰

ニューヨークがオフィススペースの過剰に直面しています。新型コロナでのロックダウンで長期に渡り街が閉鎖状態になり、ロックダウン解除後も、新型コロナへの懸念のため、オフィスビルの日々の利用がほとんどない状況にあります。

今日はNYの商業不動産の状況と、金融機関の貸付リスクについてまとめ、それが今後世界各国に広がる可能性についても深掘りしてみることにしましょう。

オフィスに人が戻らない

NY市内の大手企業の経営者を調査したところ、8月半ば時点でマンハッタンのオフィスに戻った従業員は全体の8%にとどまっています。業種別での復帰が最も進んでいるのは不動産業で、従業員の53%がオフィスに戻っています。

コロナ禍によって米大都市の中でも最も高い失業率にあえいでいるニューヨーク市にとって、これは壊滅的な兆候だと考えるべきでしょう。マンハッタンの過密さと林立する高層ビル群が、新型コロナの再度の蔓延リスクから、オフィスへの人々の回帰を妨げている格好です。

新型コロナのワクチンが完成し、人々への接種が浸透するまでは、こうした状況は続く可能性が高いと考えるべきでしょう。

転貸は2010年以来の高水準に

人々がオフィスに戻っても十分安全だと思うまで、よほどのことが起きない限り、厳しい経済状態が続きそうです。不動産契約のうち、転貸と契約の短期更新を合わせた割合が全体の70%以上に増えています。

テレワーク化が成功したことで、各企業のオフィスニーズは確実に減っており、世界一高い賃料のマンハッタンに膨大なスペースのオフィスを借りることの非合理性を改めて経営者に考えさせられる機会となっています。

マンハッタン内では転貸はオフィススペース全体の25%を超えています。供給が需要を完全に上回っている状態にあります。転貸はマンハッタン全体でも23%と、2010年以来の高水準にあります。

「クリティサイズド・ローン(CL)」の急増に要注意

クリティサイズド・ローン(CL)の動向は、借り手の返済能力について警告のシグナルを発しています。残高の伸びが最も大きい米銀10行では、CLが第2四半期に総計で62%増えましたが、商業用不動産のCLは144%増加し、260億ドル(約2兆7000億円)に達しています。

総額の伸びが最も大きい銀行には、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴが含まれており、資産額で米国最大の銀行4行のうち3行が入っていることになります。これら3行では、CL残高が現在、中核的自己資本(ティア1)の9%、13%、25%相当にのぼっています。

CLは、信用格付け会社からトリプルCかそれ以下の格付けを与えられている債務に相当すると見なされています。CLのドル建ての金額は第2四半期に米国の銀行業界全体で42%拡大しました。米連邦準備理事会(FRB)によれば、米銀は年初から貸倒引当金を1,110億ドル積み増しています。

新型コロナに対応するために、米経済の大部分を閉鎖した対策の経済的影響はまだ不明瞭な状況にあります。多くのホテルは依然空室だらけで、ショッピングモールの客足は鈍く、オフィスワーカーはまだ自宅にいます。

多くのテナントが賃料支払いを見送ったのを受け、商業用不動産を貸している一部の家主は、保有不動産の将来の収益性が疑わしい中で、不動産ローンの返済に苦労しています。

貸付金焦げ付きの心配はないのか?

銀行関係者らは、高リスクの分類に入ることは必ずしも、ローンがデフォルト(債務不履行)したり、延滞債権になったりすることを意味せず、仮にデフォルトが起きた場合でさえ、価値の高い不動産が担保として差し出されていたら、銀行は全額回収できると強調しています。

しかしその価値は新型コロナ禍が起こる前の数字に基づいており、現在の商業不動産の需給状況を考えれば、評価は大きく下げるべきだと考えたほうがよく、下手をすれば多くが担保割れの状況にあるとも考えるべきでしょう。

CLの伸びが最大だったのは、ニューヨーク州バッファローに本店を構えるM&Tバンクです。同行では、融資残高のほぼ4割が商業用不動産向けで、融資先がニューヨーク市に集中しています。M&Tが抱えるCLは第2四半期に156%急増し、商業用不動産向けのCLは4倍近くに膨れ上がり、32億ドルに達しました。CL総額は今、同行の中核的自己資本の55%相当にのぼっています。

現在のNYの商業不動産の状況を考えれば、M&Tバンクの貸付債権の抱えるリスクは高く、信用不安の拡大は、今後の不動産関連への融資への警戒・ストップは、即座に関係各社への資金繰りへも影響し、一部不動産の投げ売りは、商業不動産価格の大幅な下落につながる恐れもあります。

貸付リスクの実態が全くわからない

融資状況の複雑さに輪をかけるのが、「現在予想信用損失(CECL)」という会計基準が最近採用されたことにあります。この基準では、銀行は組成から完済までのローンの寿命全体を通した損失を推計しなければなりません。

そのためには、足元のローン返済状況の単純な監視ではなく、複数の要因を勘案した経済モデルの作成が必要になるのですが、算出に当たって使うモデルは、銀行ごとに異なるのです。

融資のトレンドではなく、銀行の判断が引当金を決める原動力になっているために、引当金とCLの間の食い違い、そして銀行ごとの食い違いが生じることになります。各銀行は自分たちの貸付、評価についての正当性を話たとしても、外から見ると全く分からない状況にあります。

既にM&Tの株価は2月以降、38%値下がりしており、下落率が米国の銀行株指数の下げを10ポイントほど上回っている状況にあり、多くの投資家がこの問題を危惧しています。

大きな火種となるリスクあり

商業不動産への融資拡大リスクはNYだけの問題ではなく、全米各地とも同様です。そしてこれは世界中の商業不動産にも共通します。

新型コロナ禍によるテレワークの浸透は、オフィス需要の停滞を生み、さらにはオフィス街周辺不動産需要の停滞へとつながり、財務体制の弱い家主は返済不能の状況に早期に陥るリスクも高く、CLローンバブル崩壊リスクも視野に入れておくべきでしょう。これはリーマンショック時のサブプライム問題を彷彿させます。

金融市場への影響が懸念されれば、FRBの財政支援策の中で、CLローン買取も考えられますが、それによってFRBのバランスシート拡大はさらなる金余りを生み出すことにもつながります。

商業不動産下落は当面継続すると考えるべきで、日本の商業不動産の状況についても、改めて慎重に見ておく必要があります。利回りの良いリート株の中でも、資産として含まれる不動産物件の価値の見極めが非常に重要だと考えられます。

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