イランとアメリカが戦争になったとすると?
アメリカとイランとの間の紛争は激化するのか?
両国とも大規模な争いになることは避けようとする発言をしているが、まだまだ予断を許さない状況にあることは間違いない。
2004年にイラクでの戦争が本格化したとき、アメリカの原油価格は1バレル当たり1日で10ドルも跳ね上がった。
その後は大きな出来事はなく、イランとアメリカの間で厳しい非難の言葉が飛び交い、新たな制裁が示唆されるなど、政治的には緊張感が高まった。
そして2週間後には原油価格は元の水準に落ちていった。
今回、イラク・バグダッドの空港近くで3日にイランのカセム・ソレイマニ司令官が米軍にドローン空爆されたのを受け、直後には石油価格が急騰したものの、石油市場の動きはイラク戦争の時とは大きく異なっている。
原油の生産地も、精製方法も、取引方法も、当時とは全く違うのだ。
アメリカは中東等の石油に頼っていない
アメリカのドローンがイラン革命防衛隊の精鋭コッズ部隊を長年指揮してきたソレイマニ司令官を殺害したというニュースに、3日のブレント原油価格は69.5ドルと4%上昇した。
これに合わせ、英BPやロイヤル・ダッチ・シェルといった石油メジャーの株価も1.5%ほど上がった。
2004年から現在にかけて石油市場を変えた最大の要因は、アメリカが自国で十分な石油を生産し、輸入に頼らなくなったことにある。
アメリカはもはや、中東の原油に依存していないのだ。これによって実質的な原油価格変動のルールが変わったのだ。
例えば、昨年9月にサウジアラビアの石油施設がドローンに攻撃された事件などは良い例だ。
石油供給という点では、世界の石油市場にとって最大の事件のひとつだったが、持続的な影響はなかった。
攻撃当日、原油価格は1バレル当たり10ドル近く上昇したが、その後は大きな出来事はなかった。
イランとアメリカの間で厳しい非難の言葉が飛び交い、新たな制裁が示唆されるなど、政治的には緊張感が高まった。しかし、2週間後には原油価格は60ドル以下まで下がった。
この時も、価格乱高下の懸念よりも、政治的やりとりの方がいつまでも続くことになった。
現在はロシアやアメリカなど、大量消費石自体が、国内で石油を生産する国が増えている。
世界の五大石油産出国の産油量は、各国ともここ10年ほどで急激に産油量を増やしている。
OPECの影響力はどんどん薄まっている
中東の石油産出国を中心とした石油輸出国機構(OPEC)はかつて、石油の供給を牛耳っていたが、今はもうそのようにはいかない。
現在、OPECが石油の生産量を落としたとしても、他国が国内生産量を増やす余地を与えるだけになってしまったのだ。
OPEC加盟国はかつて世界の石油の半分を生産していたが、今では3分の1以下になっている。
1990年の湾岸戦争当時、石油は2地域で生産されていた。片方はOPEC加盟国であり、もう片方は北海など、よりコストが高く危険が伴う地域だった。
海底の石油を探索し掘り出すというのは、40年前には予想の付かない危険なやり方だったのだ。
しかし、北米でフラッキング(水圧破砕法)による採掘が可能になった今、アメリカには豊富な石油資源がある。
当時はコモディティー市場が確立したばかりだったが、今では参加者もずっと多くなっており、思惑だけで大きく動く相場ではなくなっている。そしてインターネットが普及した今は、格段に情報が手に入るようになっている。
昨年9月にサウジの石油施設が攻撃された際、施設や港を出る船舶を写した衛星写真から、事件後すぐに生産と輸出が再開されたことが分かった。
数年前までは、人々はお互いに電話をかけて、何が起きているかを把握しようとした。
現在は、即座にインターネットを経由され、現地の被害状況、その後の生産状況を確認できるのだ。
現在のOPEC加盟国やロシアなどの産出国は、できる限り石油の生産を抑えることで合意している。
そのため、中東地域で緊張が高まり、実際に大規模な紛争が起こった場合に石油価格がどうなるかは、非常に予測が難しい状況にある。
報復攻撃の恐れがあることから、短期的には石油価格も高い水準に留まると思われるし、アメリカの石油企業が保有するパイプラインや、欧米石油メジャーが投資している開発地域に攻撃があれば、原油価格はさらに高くなる可能性もある。
一方、イランとアメリカの紛争が何らかの形で解消すれば、状況は緩和され、石油価格も下がることになるのではないだろうか。
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