人生

起業心得⑤

28歳 輸入子供服販売を始める

中古CDの店舗の売上は順調で、卸事業は毎年急拡大していました。本当は成長する今の事業に集中し拡大させるべきなのですが、こういうときはついつい他の物も行いたくなる事業欲が生まれます。

前年の27歳に結婚したのですが、奥さんと一緒にアメリカの東海岸を旅行し、メイン州のポートランドを訪れたのです。ここに何が在るのか?

世界初のファクトリーアウトレットがLLBeanの本拠地であるポートランドにできたのです。美容室にあるファッション雑誌でこのことを知り、奥さんとすぐに行ってみることにしたのです。

世界初のアウトレット

LLBeanのアウトレットは本当に圧巻で、デザインや店作りが素晴らしく、ワクワク感が凄かったです。そして何よりも価格が圧倒的に安く驚かされました。他にも当然たくさんのブランドの店舗が揃っているのですが、とにかく価格が安いのです。

ラルフ・ローレンのポロシャツは当時日本でも大人気でしたが、日本の15%〜20%以下の価格で売られていますから、本当にお買い得でした。

自分の使うものをたくさん買い込んだのですが、それだけでは飽き足らず、ビジネスになるのではないか?

そう考えたのです。リーバイスのアウトレットに入ると、子供用の501のジーンズが5ドルで売られており、これは絶対に売れる!そう思い、可愛いデザインの輸入子供服のお店を作ろうと思いついたのです。

地元の島田市で早速店舗を探します。店を出すという気持ちが最初に前のめりになってしまい、冷静な店舗を選ぶ判断もできていません。今思えば絶対にそんな場所に出さないという、カーブの途中で店の前に車も置くことも出来ず、周辺に駐車場もない、そして人通りも少なく駅から遠い場所にお店を開店してしまいました。

そしてまだ当時子供がいたわけではなく、子供を持つ親の気持ち、子供に服を着させる親の気持ちも理解しないまま、自分の勝手な想像の中で店を開いたのです。そして当然のことながら全然駄目でした。何度か仕入れをしにアメリカに行き、商品の卸や多角化も考え、更には駅近くへの移転もしましたが、結局のとこは駄目でした。見事失敗して撤退です。流行のある商品の在庫を持つリスクというのもこのとき初めて経験することになりました。

起業心得10:焦らず慌てず

その時の思いつきで冷静さを失い前のめりになるとろくなことがありません。特に成功しているビジネスを持っていると、次も必ず成功するという変な思い上がりもあります。周りのスタッフも成功している社長にはなかなか忠告や止めることも出来ません。

結果的に殆どの場合は失敗につながっていきます。失敗の規模が小さければ、やり直しがききますから、まだ経験ができただけ良しと考えるべきです。そして新しいことへのチャレンジは、はじめから失敗をすることが当然だと前提し、失敗をしても本業で立て直しがきく範囲に抑えるというのも大事なポイントだと思います。

29歳 本社ビルを購入する

自宅で正月を迎え地元の静岡新聞を読んでいると、不動産売買の広告の中に気になる物件を見つけました。東名焼津インターの近くに、築年数も少ない3階建てのビルが売りに出ています。確か当時1億2,000万円だったと思います。

正月明けに早速不動産会社に電話をし、物件を見せてもらうことになりました。エレベーターもついていますし、駐車場も10台以上止められ、高速道路やバイパスとのつながり、立地もよく、オフィス&物流基地としてほしい。そう思ったのです。銀行に相談すると、必要額は融資してもらえることになり、物件の価格交渉に入ります。こちらからのオファーは1.1億円。それに対して先方がもう少し色を付けてほしいということで、縁起を担ぎ、11,111万円、1億1,111万円で最終決定しました。そして引っ越しです。

一緒に働いてくれたパートさんが去っていく

本社ビルを持つという判断が正しかったのか?

これは今でも悩むところではあります。成長する上では必要だったとも言えるのですが、今までのオフィス&倉庫から車で30分以上離れたところにあるため、長く一緒に働いてくれた10名以上のパートの方々は去っていくことになります。車を持っていない。

そこまでの移動はできない。理由は様々でしたが、せっかく育った人材を失うことになり、ゼロから再教育が必要となりました。

固定費の拡大

さらにいえば、規模を拡大すれば、固定コストも知らないうちにどんどん増えていくことになります。今まで自分自身の通勤時間も車で5分で済んだものが、30分以上かかるようになりましたので、毎日往復で1時間を取られる事になります。そして同様に多くのスタッフも通勤時間が余分にかかるようになり、移動コストもどんどん膨らむことになりました。

あのときにやめておけば。人生の中では何度もあとから悔やむことというのはありますが、このとき本社ビルを購入していなければ、今とは確実に違った人生を歩むことになっていたでしょう。いまより良い人生になるのか?悪い人生になるのか?は別として。

起業心得11:本当に必要なものかの見極め

様々な岐路に立ったとき、それを判断し決めるのは全て自分自身です。信頼できる人に相談することは間違っていませんが、あくまでもアドバイスとして留めるべきで、最終決定は必ず全て自分がしなければなりません。経営者は自らの判断で自らが経営への責任を持たなければならないからです。

多くの個人投資家が判断を他人に委ね、上手く行かなかったときにその人のせいにします。だからこそ上手くいっていないという、本末転倒に陥っている事自体に、残念ながら気が付かないのです。

起業心得⑥に続きます。

起業心得⑥29歳:上場を目指す 外部株主が加わる 29歳のときも様々な事が起こりました。父親が自殺をし、全ての銀行借入れの保証人に父がなってく...