暗号通貨

【2025年】ステーブルコインはこの後どうなる?拡大の背景と今後の展望

ステーブルコインの発行額が急激に増え続けていますが、それには多くの要因が複雑に絡み合っています。

今回はその理由をわかりやすく説明していきます。

先に結論から言うと下記のとおりです。

■ステーブルコインの発行額が増えている理由

・DeFi・レンディング市場の成長
・クロスチェーン展開・オンチェーン決済の拡大
・規制回避の需要と機関投資家の利用
・スマートコントラクト活用の増加
・ETF とステーブルコインの住み分け

■アルトコインが低迷しても、ステーブルコイン需要を支えそうな要素がある

1. オンチェーン決済の拡大 → トロン USDT、ソラナ USDC
2. 機関投資家・金融機関のオンチェーン資産管理 → USDC(BlackRock, Circle, Fidelity)
3. RWA(リアルワールドアセット)のトークン化 → 債券・不動産・金を担保とした USDC 活用
4. ETF との共存 → オンチェーン流動性が必要
5. クロスチェーン展開 → Solana, Tron がブロックチェーン間の橋渡し役として機能

それでは、詳細を説明していきます。

目次
  1. ステーブルコイン発行額が増えている理由とは?
  2. ビットコインETF登場後もステーブルコインが重要視される理由
  3. ビットコイン一強とアルトコイン市場の変化
  4. 機関投資家や金融機関がステーブルコインを利用する理由
  5. 機関投資家が参入しやすいプロジェクトの特徴
  6. RWA 市場の成長がステーブルコインに与える影響
  7. クロスチェーン技術が資産流動性を向上させる
  8. 有望なRWA・クロスチェーンプロジェクト7選
  9. 結論と今後の展望

ステーブルコイン発行額が増えている理由とは?

近年、主要なステーブルコインの発行額が急増しています。

2024 年にはステーブルコインの送金 総額が 27.6 兆ドルに達し、Visa と Mastercard の年間取扱高合計を 7.7%上回りました。

市場供給量 も同年に 59%以上拡大し、9月にはピークの 2,000 億ドル規模に達しています。

この急成長の背景には、DeFi(分散型金融)ブームによる需要拡大、オンチェーン決済の普及、そして RWA(リアルワ ールドアセット)市場の発展が挙げられます。

DeFi ではボラティリティの高い暗号資産より安定した価値を持つステーブルコインが取引やレンディングの基軸通貨として不可欠であり、結果としてステーブルコインがオンチェーン取引の過半数 (近月では全取引量の 50~75%)を占めるほど利用されています。

即時送金できる手段で、安全性・透明性もある

また、ステーブルコインは国境を越えた即時送金手段としても注目され、法定通貨を暗号化した形であることから安全性・透明性 といった利点も享受しています。

さらに、米国国債など現実世界の資産を担保とした新たなステーブルコインの登場も市場拡大に 寄与しました。

例えば、2024年にはイーサリアム担保型ステーブルコイン USDe が6300%もの供給増となり、暗号資産担保型ステーブルコイン市場の約 37%を占めるまで急成長しています。こうし

た利回りを付与するステーブルコイン(預けることで利息が得られるタイプ)は 2024 年に 583%とい う驚異的な成長率を示し、市場の新潮流となりました。

以上のように、DeFi での需要、グローバルな送金・決済ニーズ、RWA 担保の導入や利回り追求型プロダクトの登場が重なり、ステーブルコイン発行額の増加を後押ししているのです。

ビットコインETF登場後もステーブルコインが重要視される理由

2024年には米国で現物ビットコインETF が実現し、今までの金融から暗号資産へ資金流入が起こり、ビットコイン価格に大きく影響しました。

しかし、ビットコイン ETFが登場しても、ステーブルコインの役割は重要です。

ステーブルコインの時価総額が暗号市場への資金流入指標となっている

実 際、Citi のレポートでは「ステーブルコインの時価総額はクリプトエコシステムへのフロー(資金流 入)の指標」と位置付けられており、2024年11 月の米大統領選以降に主要ステーブルコイン合計 で 250 億ドル以上も急増したことが強調されています。

これは ETF による間接的な投資だけでなく、 投資家が直接オンチェーンに資金を投入している証拠であり、市場の実需を示すものです。

また、 ステーブルコインは DeFi エコシステムへのオンランプ(入口)でもあります。

ETFは、特定の資産の値動きを反映する金融商品ですが、ステーブルコインはブロックチェーン上で実際のお金のように使うことができます。

レンディングやデリバティブ取引の担保、さらにはNFTや他のアルトコイン購入など幅広い用途に使われます。

したがって、ETF の投資資金がビットコインに流入した後も、その利確益や資金移動にはステーブルコインが使われる可能性が高く、オンチェーン経済圏を支える基盤 として重要性は不変です。

さらに、機関投資家にとってもステーブルコインは流動性管理の手段となり得ます。

例えば、暗号資産市場に参入する機関が一時的にポジションを解消して待機資金を置いておく際、法定通貨に戻すよりステーブルコインで保持する方が即座に次の投資機会へ動けるため効率的です。

このように、ビットコインETFが登場してもステーブルコイン需要が減退しないどころか、むしろ市 場拡大と相乗効果でさらなる成長が期待されると考えられます。

ビットコイン一強とアルトコイン市場の変化

2024年後半から2025年初頭にかけて、仮想通貨市場ではビットコインの影響力が一段と強まりました。

ビットコインの市場占有率(ドミナンス)は一時64%を超え、4年ぶりの高い水準に達しました。その一方で、多くのアルトコインはビットコインほど値上がりせず、低迷する状況が続きました。

この背景には、米国でビットコインETFが承認されたことへの期待や、新たなトランプ政権がビットコインを準備資産として活用する計画を示したことがありました。

また、主要アルトコインの一つであるイーサリアムが、ビットコインに対して長期間弱い値動きを続けていたことも影響しています。

歴史的にもビットコイン半減期後の相場ではまず BTC が優勢となり、アルト市場はその後遅れて活況を呈する傾向があります。

2024 年末時点ではまさに「アルトコインシーズンの終焉」とも言える局面で、多くのアルト資産が対 BTC で価値を減じました。

ソラナ(Solana)やトロン(TRON)は価値を維持している

しかし、アルトコイン全般が沈滞する中でも、ソラナ(Solana)やトロン(TRON)など一部のプラットフォームは存在感を維持・向上させています。

ソラナとトロンは、どちらも処理速度が速く、多くの人に使われているレイヤー1ブロックチェーンですが、それぞれ異なる強みを持っています。

ソラナ(Solana)

かつて FTX 崩壊による逆風を受けたソラナですが、2024 年に入り DeFi
や NFT 分野でのエコシステム拡大に成功し、再評価されました。

技術面では高速かつ安価 なトランザクション処理能力を持ち、大規模ユーザーベースにも耐えうるスケーラビリティを実証しています。

その結果、USDC をはじめとするステーブルコインの流通がソラナ上で急 増しました。2025 年 1 月にはソラナ上で一ヶ月に 60 億ドルもの USDC 新規発行(ミント)が 行われたと報告されており、これはトランプ新政権によるソラナ支援策(公式 TRUMP トーク ンの発行など)の影響や、ソラナの DeFi 復興によるものです。

Circle社のUSDC 市場占有 率は前年の 20%から 25%超へ上昇しましたが、この成長にはソラナネットワークでの需要拡 大が大きく寄与しています。

また、ソラナは 2024 年 Q3 に 29 件のプロジェクトが合計 1.73 億ドルの資金調達に成功し、前四半期比+54%という報告もあり(Solana Ventures の発表)、 機関投資家の関心も戻りつつあると見られます。

こうした積極的な開発コミュニティと拡大するユーザーベースに支えられ、ソラナはアルトコイン低迷シナリオでも重要な役割を担い続けています。

トロン(TRON)

トロンは特にステーブルコインの送金・保管プラットフォームとして突出した 地位を築いています。

2024年にはイーサリアムと並び、全ステーブルコイン供給の大半 (年末時点で 83%)が両者のブロックチェーン上に存在しました。

中でもUSDT(テザー)に関しては、一時トロンが全供給の38%を担うほど主要な発行チェーンとなっていました(その後 イーサリアムの手数料低下で 29%に比率低下)

トロンの強みはネットワーク手数料の低さと高速性、そして高い信頼性にあります。

実際、トロンは 2024 年に「最もコスト効率の良い L1 ブロックチェーン」との評価を受けており、1 ドルの手数料収入を得るのに要したコストは わずか 0.85 ドルと、他チェーンを圧倒しました。

またステーブルコイン送金に利用するアド レス数で業界トップとなっており、中央集権型取引所間でユーザーがステーブルコインを移 動する際に最も選ばれるネットワークです。

その理由として、トロンネットワークの高い信頼 性(長期間にわたり巨大な資産を安全に処理)、圧倒的な低コスト、主要取引所ほぼ全てでのサポート体制が挙げられています。

さらに独自のDPoS コンセンサスとリソースモデル (Energy/Bandwidth)により、ユーザーやプロジェクトにとって経済的に利用しやすい仕組 みを提供していることも大きな利点です。

以上のように、トロンはステーブルコインに特化した実用チェーンとして他の多くのアルトコインとは一線を画し、ビットコイン一強の局面でも 安定した需要を維持しています。

機関投資家や金融機関がステーブルコインを利用する理由

ビットコインが中心となる相場では、値動きの大きいアルトコインへの関心が薄れがちですが機関投資家や金融機関によるステーブルコインの利用は引き続き活発です。

送金手段としての重要性

トロンの例が示すように、取引所間やOTC(相対取引)での資金移動には、ステーブルコインが欠かせない存在になっています。

銀行送金よりも素早く、仮想通貨市場が24時間365日動いているため、デジタルドルであるステーブルコインが資金の橋渡し役を果たしています。このメリットは、機関投資家だけでなく、取引所などの金融サービス事業者にも広く浸透しています。

価格変動リスクの回避と資産運用

ステーブルコインは価格が安定しているため、現金と同じように扱えます。

そのため、ビットコインやアルトコインの値動きに影響されず、市場にとどまる手段として機関投資家に活用されています。

さらに、ブロックチェーン上でスマートコントラクトを利用し、貸出や利回り獲得の運用が可能なため、単に現金として保管するよりも効率的です。

規制の整備と信頼性の向上

ステーブルコインの規制が進むことで、機関投資家にとってより利用しやすい環境が整いつつあります。

例えば、米国ではステーブルコインに関する法律の議論が進み、主要な発行体である「Circle社(USDC)やTether社(USDT)」も透明性を高める取り組みを行っています。

特にUSDCは、大手金融機関と提携を進め、2024年に成長を遂げました。

このような背景から、アルトコイン市場が低迷しても、機関投資家や金融機関はステーブルコインを流動性管理や価値保存のツールとして活用し続けています。

むしろ、その利用は今後さらに広がっていくと考えられます。

機関投資家が参入しやすいプロジェクトの特徴

機関投資家が暗号資産分野に参入する際には、プロジェクトにいくつかの要件を求めます。

主な特徴としては、

(1) 規制遵守とコンプライアンス対応
(2) 実世界の資産や収益に裏付けされた安 定したリターン
(3) 十分な流動性と透明性
(4) 信頼性の高い技術基盤

が挙げられます。

近年人気のRWA関連プロジェクトはこれらの条件を満たすよう設計されています。

例えば Ondo Finance は機関投資家向けの投資商品の提供に特化しており、KYC を含む厳格なオ ンボーディングプロセスと許可制バリデータを導入した独自ブロックチェーンを立ち上げる計画で す。

これにより、従来金融のコンプライアンス基準を満たしつつパブリックブロックチェーンの透明 性を両立させることを目指しています。

同様に Maple Finance は、審査を通過した企業に対し過剰 担保ローンを提供する許可型の貸付プラットフォームを構築し、借り手・貸し手双方に身元確認 (KYC)や与信管理を施しています。

このように、法規制に準拠した枠組みと高度なリスク管理、そして実需に基づく収益(例:国債金利 や企業の利払い)を組み込むことで、機関投資家が安心して資金を投じられる環境が整えられて います。

また、こうしたプロジェクトは多くの場合、伝統金融機関との提携や著名投資家の支援を 受けており(後述の Securitize や Ondo の例など)、信頼性の裏付けとなっています。

RWA 市場の成長がステーブルコインに与える影響

RWAとは不動産、債券、株式、商品といった現実世界の資産をトークン化したものです。この市場が拡大することは、ステーブルコイン市場にも大きな影響を及ぼします。

まず、RWA のオンチェーン取引には決済手段としてステーブルコインが不可欠です。

例えば、投資家がトークン化された米国国債を購入する際、従来ならドル建てですがブロックチェーン上では USDC や USDT などドル連動のステーブルコインで決済するのが一般的です。

RWA取引が増えれば増えるほど、ステーブルコインの需要も高まる

実際、Ondo Finance が発行する米国債担保トークン(例:短期国債ファンド OUSG など)は累計で 6億5千万ドル以上に達しており、これらの取得・償還にもステーブルコインが用いられています。

また、RWA を担保とするステーブルコインの発行という形でも影響が現れています。

MakerDAOのDAI はその好例で、担保資産の約80%を米国国債や社債などのRWAが占めるまでになりました (2023年末時点)。

こうしたRWA担保の安定資産が増えることで、ステーブルコイン自体の信用も向上し、さらなる発行拡大を後押しします。

トークン化された証券市場が今後数兆ドル規模に達する可能性も

McKinsey や BCG のレポートによれば 2030 年までに数兆ドル規模に拡大し得ると予測されています。

仮にその一部でもパブリックチェーン上で取引されればステーブルコイン経済圏は現在 の数倍規模に膨れ上がるでしょう。

RWA 市場の成長はステーブルコインを経済圏の基軸通貨としてさらに定着させ、その発行量・流通量を増大させる方向に作用すると考えられます。

クロスチェーン技術が資産流動性を向上させる

クロスチェーン技術は、異なるブロックチェーン間で資産を自由に移動できる仕組みです。

これにより、価格の歪みを修正する「アービトラージ(裁定取引)」の機会が生まれ、市場価格の安定化にもつながります。

例えば、あるブロックチェーン上で特定の資産の価格が他より高くなった場合、投資家はその資産を安いチェーンから購入し、高いチェーンで売ることで利益を得られます。

この動きが続くことで、価格は次第に均一になり、市場全体のバランスが保たれます。

より多くの投資家が参加可能に

クロスチェーン技術のもう一つの大きな利点は、投資の幅を広げることです。これまで特定のブロックチェーンのウォレットを持つ人しか購入できなかったRWA(実世界資産)トークンやプロジェクトに、他のチェーンのユーザーも参加できるようになります。

例えば、大手証券トークン化プラットフォームSecuritizeは、クロスチェーン技術を活用するWormholeプロトコルを採用しました。これにより、投資会社Apollo社のクレジットファンドが、一度に6つのブロックチェーン上で利用可能になりました。

Wormholeの仕組みとその影響

Wormholeは、30以上のブロックチェーンに対応する相互運用プロトコルです。この技術を使うことで、あるチェーンのトークンをロックし、他のチェーンで「ラップドトークン」として発行することが可能になります。

例えば、イーサリアム・ソラナ・アバランチなど、異なるチェーンのユーザーが自分の使い慣れたネットワークから直接ファンドに投資できるようになり、結果として資金の流入と流動性が向上しました。

LayerZeroによるさらなる進化

また、LayerZeroというクロスチェーン技術では、Omnichain Fungible Token(OFT)規格を活用し、ステーブルコインの移動も容易になっています。

実際に、PayPal社のステーブルコイン(PYUSD)は、LayerZeroを経由することで、イーサリアムとソラナ間を直接移動できるようになりました。

これにより、中央集権型の取引所を使わずに、自分のウォレットから異なるチェーンへ直接送金することが可能になります。

クロスチェーン技術は市場の発展に不可欠

このように、クロスチェーン技術は資産の流動性を高めるだけでなく、投資家層を広げ、市場全体の取引効率を向上させる重要なインフラとなりつつあります。

特に、暗号資産市場やRWA市場の拡大において、クロスチェーン技術は「流動性の分断(サイロ化)」を解消し、さらなる成長を促す鍵となるでしょう。

有望なRWA・クロスチェーンプロジェクト7選

最後に、上述の文脈で特に機関投資家との関わりが深く、成長が期待される RWA 関連およびクロスチェーン関連のプロジェクト 7 つを紹介します。

Ondo Finance (ONDO) オンド・ファイナンス

機関投資家向けのオンチェーン投資銀行とも言えるプロジェクトです。

米国国債やマネーマー ケットファンドをトークン化した安定利回り商品(例: USDY や OUSG)を提供しており、2024 年時 点で USDY 約 3.85 億ドル、OUSG 約 2.68 億ドルとステーブルコインに匹敵する巨額の資金を 誘引しています。

Ondo は 2023 年、株式・債券・ETF など 1,000 銘柄以上の米国証券をオンチェーンで取引可能にする新プラットフォーム「Ondo Global Markets」を立ち上げました。

これは 「ステーブルコインがドルにもたらした変革を証券市場にもたらす」ことを目指しており、高額の 手数料や時間制限といった従来証券取引の課題をブロックチェーン技術で解決しようとしています。

Ondo の特徴は法規制順守への注力で、同社が発表した独自チェーン「Ondo Chain」は 許可制のバリデータ採用や正確な資産データ開示機能を備え、機関投資家が安心して利用で きるインフラを整備します。

BlackRock のラリー・フィンク CEO が「将来あらゆる証券がブロック チェーン上で取引される」と述べたように、この分野は今後飛躍的成長が見込まれます。

Ondo Finance はトークン化国債発行額で世界第 2 位(米国債トークン発行において)となる実績を上 げており、大手金融機関との連携(例:資産運用会社や政府関係者との協議)も進むなど、 RWA トークン化の先導役として有望視されています。

Maple Finance (MPL) メープル・ファイナンス

オンチェーン上の機関向け貸付マーケットプレイスです。2019 年創業の比較的老舗プロジェク トで、元銀行マンらによって設計された信用供与プラットフォームとなっています。

Maple は選定 された貸付担当者(プールマネージャー)が資金調達を希望する企業・機関に対しローンを組 成し、オンチェーンで投資家から資金を集めて融通する仕組みです。

貸付は多くが USDC など 安定資産建てで行われ、借り手はビットコインや ETH 等の担保を差し入れることで信用力を補完します。

特徴は、借り手・貸し手ともに KYC/AML を実施し、伝統金融並みの与信審査と法遵守体制を備えている点です。

これにより暗号業界の企業(例えばマイニング企業やマーケッ トメイカー)が銀行融資の代替として資金を調達でき、貸し手側(投資家側)は比較的高金利の 利回りを得られる Win-Win の関係を構築しています。Maple は DeFi でありながら実世界の信用 供与を可能にした RWA ブリッジとして評価されており、そのモデルは「DeFi による機関貸付の

ハブ」と称されています。2022 年の信用危機では一部貸倒れも経験しましたが、リスク管理を 強化しつつ新プール(「Syrup」プログラム)で個人投資家にも門戸を開くなど進化を遂げていま す。

Maple の意義は、実社会の企業活動(=リアルワールドアセットである貸付債権)に基づく キャッシュフローをオンチェーン化した点にあります。

これは単なるトークンの売買に留まらな い資産のデジタル化であり、今後も機関投資家の資金需要に応じて拡大が期待されます。

実際、Maple は「伝統的な機関金融と DeFi を繋ぐ橋渡し役」として、透明性の高い融資プロセスや 担保管理を提供し、リアルビジネスへの資金供給をブロックチェーン上で実現しています。

Centrifuge (CFG) セントリフューズ

中小企業向けの実世界資産融資プラットフォームのパイオニアです。

2017 年設立と RWA 分野 では古株で、「Real World Assets(RWA)」という用語をいち早く打ち出したプロジェクトでもあります。

Centrifuge は独自チェーン上および Polkadot パラチェーン上で動作し、企業が保有する 売掛債権や不動産ローンなどを NFT としてトークン化し、それらを裏付け資産とする投資プールを組成できるようにしています。

資産オリジネーター(貸付先となる企業)は Centrifuge 上で自社資産をトークン化し、DeFi 投資家から資金を調達でき、投資家側は資産担保された債権 に対し利息収入を得る形です。

代表的な取り組みに、不動産ブリッジローンを扱う New Silver 社の資産担保プールや、炭素クレジットをトークン化する Flowcarbon との提携などがあり、 MakerDAO から 5000 万ドルの信用枠を確保した事例もあります。

これは Centrifugeで発行された資産担保トークンを Maker が担保として受け入れ DAI を発行する仕組みで、DeFi と伝統 金融の融合を象徴しています。

2024年には CoinbaseのL2(Base)やArbitrum上で RWAプー ルの提供を開始し、より幅広い投資家にアクセスできるようクロスチェーン展開も図っています。

さらに Centrifuge は Morpho 社や Coinbase と連携し、米国債トークン(三者三様:Anemoy、 Midas、Hashnote 社のトークン化 T ビル)を担保に即時流動性を提供するレンディング市場を Base 上に開設する計画も発表しました。

これはトークン化米国債を担保にステーブルコインを借り入れる仕組みで、現物償還せずとも資金化できるという新しいユースケースです。

このよう に、Centrifuge は中小企業金融や証券化商品のオンチェーン化に道を開いた存在であり、RWA 市場拡大のニーズに応じて躍進が期待されます。

既にプラットフォーム上の累計融資残 高は6億ドルを超えており、今後も様々な資産クラスを取り込むことで成長していくでしょう。

Securitize (SECURITIZE) セキュリタイズ

証券のトークン化において世界をリードする規制遵守型プラットフォームです。

米国証券取引 委員会(SEC)登録のブローカー・ディーラーと ATS(オルタナティブ取引システム)ライセンスを 保有しており、株式やファンド持分をデジタル証券として発行・管理・取引できる統合ソリューシ ョンを提供しています。

Securitize の強みは、大手金融機関との提携実績です。

2023 年以降、 KKR や Hamilton Lane といった大手 PE ファンドのトークン化ファンドをローンチし、2024 年には BlackRock 初のトークン化マネーマーケットファンド(BUIDL)の発行パートナーにも選ばれました。

さらに代替資産運用大手 Apollo Global とも提携し、Apollo のクレジットファンドをトークン化したフィーダーファンド(ACRED)を立ち上げています。

ACRED は最低投資額 5 万ドルの適格投資家向け商品ですが、特徴的なのは同一トークンが 6 つのブロックチェーン上で発行・流通する点です。

Securitize は 2025 年 1 月、このマルチチェーン展開を可能にするためクロスチェ ーンプロトコルの Wormhole を活用し、Ethereum、Solana、Polygon、Avalanche、Aptos、そして Straits(Ink)という複数チェーン上で投資家がトークンを受け取れるようにしました。

こうした技 術力と柔軟性により、今後他のファンドや証券も異なるブロックチェーン間で相互運用性を持 って発行される道を切り拓いたといえます。

Securitize 自体も BlackRock からの戦略出資を受けるなど巨額の資本が投じられており、2024 年時点で管理下のトークン化資産残高は15億ド ル超とも報じられています。

証券の世界は規制産業であるため参入障壁が高いですが、 Securitize はそのハードルをクリアし伝統金融と暗号技術の架け橋として存在感を示しています。

今後も主要金融商品を次々とオンチェーン化していく可能性が高く、暗号資産市場に巨額 の伝統マネーを呼び込む触媒となるでしょう。

クロスチェーン(ブロックチェーン間相互運用)関連プロジェクト

LayerZero (ZRO) レイヤーゼロ

LayerZero は各チェーン上に軽量ノードを配置し、チェーン間通信を中継するユニークなアーキテクチャを採用しており、異なるブロックチェーン間での汎用的なメッセージ伝達を可能にするインターオペラビリティプロトコルです。

これにより、トークンブリッジに限らず任意のデータ 転送やリモートコントラクト呼び出しが可能です。

特に注目されたユースケースは Omnichain Fungible Token (OFT)規格で、単一のコントラクトインターフェースでマルチチェーン対応トーク ンを実現します。

PayPal社のステーブルコイン(PYUSD)でも使用されている

LayerZero の技術は既に実需で活用されており、PayPal 社の米ドル連動ステ ーブルコイン(PYUSD)は LayerZero経由で Ethereum と Solana 間のネイティブ転送を可能にし ました。

これによりユーザーは PayPal の管理から離れ、自身のウォレットで PYUSD をソラナチ ェーンへ直接移せるようになっています。

また、Tether 社も独自に発行する新ステーブルコイン (例: 別チェーン版USD₮)でLayerZeroを利用する計画を発表しており、主要ステーブルコイン のクロスチェーン化に寄与しています。

LayerZero Labs は伝統金融向けにもソリューション展開を図っており、SWIFT や Visa といった決済ネットワークとの概念実証も行われました。

これに より将来的には銀行間ネットワークとブロックチェーンネットワークのメッセージ互換すら視野 に入っています。

有名企業からの出資もあり、評価額が数十億ドル規模に達する

投資面でも A16Z や Sequoia、ソフトバンクなど名だたる VC が出資し評価額が数十億ドル規模に達するユニコーン企業です。

技術面の信頼性から言えば、2023 年の大手監査法人によるコード監査を完了しており、著名ハッカーも参加するバグ懸賞金プログラムで 堅牢性が確認されています。

こうした点から、LayerZero は次世代のインターネットプロトコル のように様々なチェーンをまたぐ基盤となることが期待されており、機関投資家からクリプトネ イティブユーザーまで幅広く恩恵をもたらすでしょう。

Axelar (AXL) アクセラー

汎用的なクロスチェーン通信とマルチチェーンスマートコントラクトを可能にするネットワークです。Cosmos SDK を用いて構築されたハブ型のアーキテクチャで 50 以上のブロックチェーンに 接続実績があります。

Axelar の強みは一般化されたメッセージパッシング(GMP)で、チェ ーン間での関数呼び出しやデータ伝送をプログラム的に行える点です。

これは単なるトークン転送に留まらず、複数チェーンを跨ぐ一貫性あるアプリケーションを構築できることを意味します。

例えば、Axelarを使えば一つのスマートコントラクトから異なるチェーン上のサービスを呼び出し、連動した処理を実行できます。

近年注目された事例として、Circle 社のクロスチェーン USDC プロトコル(CCTP)との連携があります。

Axelar は Circle の提供する公式ブリッジ機能と 自社の GMP を組み合わせることで、チェーンを跨いだ USDC のプログラム的な移動 (Composable USDC)を実現しました。

これにより、開発者は Axelar 経由で USDC を任意のチェーンに焼却・発行させることができ、マルチチェーン上で一貫したユースケース(例:片方のチェ ーンで USDC を預け他方のチェーンで借り入れ)を提供できます。

Axelar は DeFi プロジェクトと の協業も活発で、跨チェーン DEX アグリゲーターの Squid や、分散型レンディングの Radiant などに技術を提供しています。

さらに Microsoft とも提携し、オフチェーンシステムとブロックチ ェーンを繋ぐツールとして評価されるなど、企業領域からも注目されています。

資金面では Coinbaseや Binance が出資し、2023年には 1億ドル以上の資金調達を成功させています。

Axelar は今後も新規チェーン統合や開発者支援スタックの充実(例:仮想マシンや SDK 提供) を進める計画で、マルチチェーン時代のインフラストラクチャとして不可欠な存在となることが 見込まれます。

Wormhole (W) ワームホール

異種ブロックチェーン間のブリッジとして広く普及しているプロトコルです。

もともと Solana 発の プロジェクトでしたが、現在は 30 以上のチェーンを繋ぐ総合的な相互運用ネットワークに発展しています。

Wormhole の仕組みは、ネットワーク上のガーディアン(バリデータ)が一方のチェ ーンでの資産ロックを監視し、他方のチェーンで対応するラップド資産をミント(発行)するというものです。

このモデルはブリッジの標準的手法ですが、Wormhole は早期からマルチチェーン対 応を進めエコシステムを拡大してきました。

2022 年にハッキング事件で大きな損失を被りましたが、支援企業 Jump Crypto の迅速な穴埋め対応もあり信頼を回復し、以降セキュリティを強化しています。

現在では主要ステーブルコインや資産のブリッジ手段として用いられる他、前述のように Securitize の証券トークンを多チェーン展開する基盤としても機能しています。

著名な支援者として Jump Crypto のほか伝統ヘッジファンドの Brevan Howard などが名を連ねており、技術開発や保証基金の拡充が続けられています。

Wormhole の将来性は、単なるトークン ブリッジを超えて汎用メッセージ機能やスマートコントラクトの相互呼び出しへと発展するかにかかっています。

その一環で 2023 年には汎用メッセージ伝達機能「XAPI」を発表し、クロスチェ ーン DApp 構築環境の提供を開始しました。

これにより開発者は Wormhole を使って複数チェ ーン上でのアプリ間通信を簡易化できます。まとめると、Wormhole は実績あるクロスチェーン

サービスとして、多くの資産とチェーンをつなぎ市場の流動性拡大に貢献しています。今後もセ キュリティ監査や分散度向上を図りつつ、クロスチェーンの標準インフラとして成長が期待されます。

以上7つのプロジェクトはいずれもアルトコイン市場の浮沈に左右されにくい、実需に根ざしたユ ースケースを持っています。

ステーブルコインを軸に展開するこれらの取り組みは、機関投資家の 参入も相まって、今後の暗号資産エコシステムの中核を担っていくでしょう。

各プロジェクトが直面する課題(規制対応、安全性確保、ユーザビリティ向上など)はありますが、それらを克服できれば 伝統金融資本のさらなる流入と相乗効果を生み、クリプト市場全体の新たな成長エンジンとなる可能性を秘めています。

結論と今後の展望

今回の分析から明らかになったのは、たとえアルトコイン市場が低迷局面を迎えても基盤として残り続ける要素が存在するということです。

ビットコイン一強となった場合でも、ステーブルコインや一 部の有用性の高いプラットフォーム(例えばソラナやトロン)、そして現実の資産と結びついたプロジェクト群は引き続き機能し、価値を提供し続けると考えられます。

アルトコインの多くは投機的な価格上昇が止まると埋もれてしまう一方で、ステーブルコインは実需に支えられた取引インフラとして残ります。

同様に、RWA やクロスチェーンといった分野は実世界の金融と直接接続するユースケースを持つため、マーケットサイクルに左右されにくい強さがあります。

言い換えれば、価格の浮き沈みを超えて持続的な価値を生むロジック(利用価値や収益源)があるかどうかが、今後生き残るプロジェクトを選別する基準になるでしょう。

ステーブルコインの利用増加やRWAの台頭はまさにその「残る要素」の具体例であり、従来の暗号資産ブームとは一線を画する実用性ドリブンの 成長といえます。

ステーブルコイン市場の今後の方向性: ステーブルコイン市場は今後も拡大と進化を続ける見込みです。

ポイント①規制の明確化と大手金融機関の参入

各国でステーブルコインに関する法 整備が進めば、銀行や決済企業が自社ブランドのステーブルコインを発行するケースが増えるでしょう(既にPayPalや日本の三菱UFJ銀行などが発表済み)。

これは市場規模を押し上げると同 時に、信頼性の高いステーブルコインが増えることでエコシステム全体の安定性も高まります。

ポイント②利回りや付加価値の付いたステーブルコインの増加

現在でもUSDC発行をしているCircle社は準備金を運用して得た利息収入を得ていますが、将来的にはホルダーにも還元されるようなモデルや、RWA を組み込んで利息を直接生み出すステーブルコイン(例:Ondo の USDY や Ethena の USDe)の比重が増すかもしれません。

そうなればステーブルコインは単なる価値の保存手段から、投資商品的な側面も帯びてくるでしょう。

③国際送金・決済インフラとしての定着

既にVisaやMastercardの年間取扱高に匹敵する規模に成長したステーブルコイン送金は、更なる普及によって貿易決済やリテール決済にも活用領域を拡大する可能性があります。

各国が中央 銀行デジタル通貨(CBDC)を模索する中、民間発行のステーブルコインが事実上のグローバルデジタル通貨として機能するシナリオも十分考えられます。

その際には民間ステーブルコインと CBDC の共存や相互交換性など、新たな課題も出てくるでしょうが、市場は引き続き革新的な解決 策を模索していくはずです。

機関投資家の関与が及ぼす影響

機関投資家の本格参入は、暗号資産市場に質的変化をもた らすでしょう。

一つは市場の成熟化です。長期的視野を持つ機関マネーが入ることで、ボラティリティが緩和され、流動性が増し、市場操作も起きにくくなります。

実際、2024 年には機関投資家の関 心拡大に伴いオンチェーンの取引活動が活発化し、価格動向もファンダメンタルズ重視へ移行しつつあるという指摘があります。

Citi は暗号資産市場の長期的発展には「採用(Adoption)」が鍵であり、ETF とステーブルコイン両面での浸透が 2025 年のパフォーマンス向上を牽引すると分析しています。

機関の関与はまさにこの「採用」を加速させる原動力です。

また、機関投資家は安全性 やガバナンスを重視するため、プロジェクト側もそれに応える形でセキュリティ強化や情報開示の 充実、法令遵守を徹底するようになります。

これはエコシステム全体の信頼性向上につながり、結 果的に個人投資家にとっても安心材料となるでしょう。

機関投資家のニーズは新たな市場機会も生み出します

例えば、先述の RWA トークンや機関向け貸付プール(Maple など)は、機関資金が求める安定収益ニーズに応える製品として登場しました。

今後も伝統金融と暗号技術の架け橋となるようなサービス(証券のトークン化、不動産の NFT化、保険やデリバティブ商品のオン チェーン化など)が増えていくと考えられます。

そしてそれらには多くの場合ステーブルコインが用いられるため、ステーブルコイン自体も裾野を広げていくでしょう。

総じて、機関投資家の関与は暗号資産市場をより大きく、安定的で、実社会と結びついたものへと進化させる力を持っているのです。

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