政治混乱

欧米で増加するアジア系へのヘイトクライム

新型コロナでヘイトクラムが増加中

新型コロナウイルスの感染が欧米で猛威を振るって以降、各国ではアジア系への嫌がらせやヘイトクライムが増加している。

普通に道を歩いていたアジア系の人が、「新型コロナを持って来るな」、「お前たちのせいだ」、「国に帰れ」などと罵声を浴びせられるだけでなく、暴力を受けて重症を追った事例も報告されている。

日本人も標的に

そして、カリフォルニア州にある日本人が経営する店でも、「店を爆破する、日本に帰れ、猿」などと脅迫じみた内容の紙を店の前に張られ、フランスでは留学中の韓国人男性が現地の白人の男3人組に殴られ重傷を負う事件も発生している。

日本人も狙われるのは中国人と日本人が見分けられないから

こういった一連の事件の背後には、新型コロナウイルスの発生源は中国だとの認識がある。しかし、欧米諸国では、中国人と韓国人、日本人を見分けられる人は少なく、“中国→アジア→アジア系を狙う”という形で、韓国人や日本人が標的にされるケースも少なくない。

これまで米国など欧米諸国では、イスラム教徒やユダヤ教徒、黒人、アフリカ系がヘイトクライムの標的になる件数が多く、それに比べるとアジア系への事件は少なかった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって、明らかにアジア系への事件が増えており、今後の行方が懸念される。

中国を好意的に思わない人が増えている

そして、今後の動向を占う上で1つ気がかりな統計結果がある。米国の調査機関「ピューリサーチセンター」の最新統計によると、中国を好意的に思わないと答えた割合が調査開始以来最高の73%に達し、前回3月に実施された調査から7%も増加した。2018年以降では26%も悪化している。

中国を好意的に思うと答えた米市民の割合は22%に留まり、前回3月の調査からは4%減少した。また、新型コロナウイルスの感染拡大で、中国が事前に十分な対応を取らなかったことが原因だと考える米市民の割合も過半数を超えており、その長期化が米市民の対中感情をさらに悪化させることが懸念される。

トランプ大統領もバイデン候補は今後も反中姿勢を展開

一方、11月の秋の大統領選まで、既に100日を切っている。トランプ大統領もバイデン候補を十分な選挙戦を送ることが出来ないでいるが、両者ともこういった国民感情を繁栄する形で反中姿勢を展開していくことになる。

現在、バイデン候補が支持率で10%前後リードする有利な状況にあるが、仮にバイデン候補が勝利しても、中国への厳しい姿勢を貫き、対立した米中関係が続くことになると予想される。

GDPが減少でアジア系へのヘイトクライムが加速する恐れも

また、米当局が7月30日に発表した4~6月期のGDP速報値は、前期比年率換算で32.9%の減少に転じたが、こういった米市民の社会経済的不満がどう対中感情に影響するかも注視する必要がある。

現在、米国やその他の欧米諸国では経済が大きくダメージを受けており、失業や経済格差に不満や怒りを覚える市民が、アジア系への嫌がらせや暴力に拍車をかける恐れもある。

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サントロペ
国際政治学者、大学教員でありながら、実務家として安全保障・地政学リスクのコンサルティング業務に従事する。また、テレビや新聞などメディアでも日々解説や執筆などを積極的に行う。