中国でデジタル人民元を市民に配布
いよいよデジタル通貨の流れが始まりました。スピード感のある中国ですが、今から約1年前の2019年10月24日、中国の習近平国家主席が中共中央政治局会議にて「ブロックチェーンを国家戦略として取り込む」との発言をしました。これは、国家がらみでブロックチェーン技術を用いてデジタル通貨を発行するという、ある意味世界に向けてデジタル通貨(人民元)の宣戦布告ともいえました。
ここで、一気にビットコインを含む仮想通貨が短期的に急騰しましたが、これに対して習主席は否定。仮想通貨とデジタル通貨は違います。仮想通貨(暗号資産)は非中央集権通貨、デジタル通貨は法定通貨で、中国でいえばデジタル人民元にあたります。
あれから1年、北京共同通信によると、中国広東省深セン市は10日までに「デジタル人民元」を市民に配布すると発表した、との報道が出ました。配布総額は計1千万元(約1億5,700万円)で、抽選で1人当たり200元を配る仕組みです。専用のアプリをダウンロードして使うとのことですが、ポイントは抽選で人民元がもらえるということ。これは、中国国民にとっても関心が出る進め方と考えられ、中央銀行、国民双方にとってメリットが多いと考えられます。
中国は、テクノロジーで先をいっている
一昔前の感覚でいえば、中国=安い労働力の国といったところでしょうか。所得の格差はありますが、ずば抜けて走っているのがテクノロジーです。仮想通貨のマイニング工場なども多く中国が占めており、常に新しい技術を取り入れて進んでいます。
ですので、日本人の中には中国のイメージが全くズレている人も多いと考えられますが、今となっては、最先端の国といっても過言ではありません。中国では、キャッシュレス化や顔認証システムなども早くから取り入れられています。このような進歩の速さは、よくいえば、トライアルアンドエラーを繰り返し、強引にでも進めていく進めていくスピード感、これは慎重すぎて進まない日本は、ある意味見習うべき点は多くあります。
各国中央銀行も動き出す
各国に中央銀行があります。中央銀行とは、国家や特定の地域の金融機構の中核となる機関のことをいいます。主要国でいえば以下の通り
・米国:FRB
・英国:BOE
・豪州:RBA
・日本:日銀
・EU:ECB …etc
中央銀行が、その国や地域で通貨として利用される銀行券(紙幣、貨幣)を発行しますので、発券銀行とも呼ばれています。今回でいえば、その中央銀行が「デジタル通貨」を発行しようという動きが出ています。中国は、中国人民銀行です。中央銀行は、政府の銀行や銀行の銀行であって、民間が使う銀行ではありません。
日本でも中央銀行が発表
中国の動きに遅れを取るわけにはいきませんので、中国のデジタル人民元に負けじと主要各国ではデジタル法定通貨の動きが加速すると考えられます。国内では、日銀(日本銀行)が10月9日に中央銀行デジタル通貨(CBDC)の取り組み方針を公表しています。気になるのが実証実験の時期、「第1弾を、2021年度の早い時期」としていますが、感覚的に非常に遅いのではないかと考えられます。
これは、日本という国柄もですが、中国共産党のスピード感にますます差が出るのではないかということが懸念されます。2020年10月上旬の現時点で、中国は、国民にたいしてデジタル人民元の実装を行うレベルまで来ています。しかし、日本では数日前に2021年の早い時期に実証実験。正直、その時期に出来るのか?という疑問は、国民は誰もが抱くかもしれません。
理由は、定額給付金の配布の遅さから明るみになったデジタル化への遅れです。菅政権になり、デジタル庁を開設して巻き返しを行なっていますが、技術が一気に加速するというところまでは期待できないのではないかと考えられます。
様子見傾向だった米国、FRBパウエル議長が動きだす
2020年1月21日〜24日に開催されたダボス会議にて、日銀を含むECBやBOEなど中央銀行と国際決済銀行(BIS)がデジタル通貨についての共同グループを設立すると発表し、話題になりました。2019年の10月の中国の発表を見ての牽制とも個人的には見ていましたが、その際、米国FRBパウエル議長はこのようなコメントを出しています。
「この先、5年は考えていない・・」少し驚きでしたが、6月になり「真剣に研究する」と姿勢を変えて来ています。紙幣の基軸通貨ドルとして成り立っている米国からすれば、デジタル通貨はあまり乗り気ではないのかもしれません。しかし、米中の争いはもっと以前から水面下で行われていました。
米中貿易争いは、米中基軸通貨争いだった
米中問題が、大きく取り上げられていますが、実は貿易問題の裏で動いていたことがあります。これは、僕自身が実際にお会いして話を聞いたことですが、書籍「米中 知られざる「仮想通貨」戦争の内幕」でも書かれていますが、米中の真の争いは「基軸通貨」の争いでもあるということです。
すでにこれは人民元が発表される前から繰り広げられていることです。中国の脅威が米国を脅かしているともいえます。これから注目点は、デジタル人民元は中国内のみだけでなく、一帯一路とも関係してくるのではないかと考えています。
2019 年3月時点で中国政府はイタリアを含めた125ヵ国と調印、29の国際組織との間で、173件の政府協力文書に署名しているとしています。これらの国々でデジタル人民元が流通するとどうなるか?そして、コロナ終息後の日本への中国人観光客がデジタル人民元を利用したいといい出したら?など気になる点が多くあります。当然、だれもが経験したことのない内容で、二転三転があると考えられますので、随時情報が入り次第お届けします。
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