10月半ば時点での新たな財政報告では、2020年の世界全体の政府債務残高は、国内総生産(GDP)合計の98・7%に達し、前年比で15・7ポイント上昇すると見込んでいます。
新型コロナ感染拡大に伴う経済対策が主な理由で、各国の財政状況は急速に悪化しているのがわかります。今日はこの点から考えられる先々の金融市場のリスクについて考えてみました。
増え続ける世界の債務
先進国だけで見ても、2020年の債務残高はGDP比で平均125・5%と、前年から20・2ポイントの悪化を予想されています。米国は22・5ポイント増の131・2%、日本は28・2ポイント増の266・2%となり、先進国の中でも日本は際立って高いです。新興国・中所得国は9・6ポイント増の62・2%に上ると予測しました。
報告書は、各国がこれまでに実施した新型コロナ対策の財政支援が総額11・7兆ドル(約1200兆円)に上ると指摘しています。低金利環境が続くことを踏まえて、高水準の債務残高は当面のリスクではないとの見解を示しています。さらに景気回復に向けて、少なくとも2021年までは財政支援を継続すべきだとも各国に呼びかけています。
欧州銀行のリスクは他人事ではない
欧州では新型コロナの大流行に伴い巨額の融資が返済を猶予されており、コロナ禍を乗り切ろうとする銀行の取り組みを揺るがしかねない隠れた脅威となっています。新型コロナの感染拡大直後に欧州各地で銀行や政府によって返済を猶予された何百万人もの借り手の一部は、この秋のロックダウンなどで経済が収縮して人々が職を失う中、依然として救済措置が欠かせない状態にあります。
しかし返済猶予期間が長くなればなるほど、銀行が抱える潜在的な問題は大きくなります。もともと事業経営が芳しくないため返済を猶予しているわけで、時間の経過とともに債務は積み上がり、対処が一段と難しくなることが予想されます。
欧州中央銀行(ECB)のアンドレア・エンリア銀行監督委員長は、未返済融資の規模が1兆4000億ユーロを超える可能性があると警告しています。返済猶予期間の終了をさせた段階で、多数の借り手が一度に破綻する恐れがあるのです。
日本円で160兆円を超える規模の不良債権が発生すればどうなるか?世界の金融市場はパニック安になることは間違いありません。そしてこれは欧州だけの問題ではなく、世界各国が同様の状況にあることを理解しておかなければなりません。新型コロナ感染拡大が長引けば長引くだけ、潜在的な不良債権額が巨大化していきます。
資金の逆回転はいつでも起こると考えておくべき
業績が芳しくない企業への貸付を継続的に続けても、新型コロナの事業へのマイナス影響はまだまだ当面続きますので、砂漠に水を撒くようなもので、多くが無駄になる可能性があります。そしてこれは貸付した側の銀行の不良債権となります。国が保証する貸付であれば、国の財政がさらに痛むことになります。
米格付け会社のムーディーズ(MDY)は、日本の財政赤字について、2019年の対GDP比206%から、2020年には230%まで上昇するとの見通しを示していますが、日本はこれから高齢化が加速します。
生産年齢人口は、生産活動の中心にいる人口層のことで、15歳以上65歳未満の人口がこれに該当します。 日本国内の生産年齢人口は1990年代がピークで、それ以降は減少傾向が続いており増加の見込みもないのが現状です。
生産年齢人口が減ればどうなるか? 収められる税金が大きく減ることになると想定すべきなわけで、先延ばしされて積み増された借金をどのように返済をしていくのか?この見通しは全く立っていないわけなのです。円という紙幣の価値の継続的な下落リスクも常に考える必要があります。
この問題をトータルで考えると?
このあとの投資を考えていく上で、各国銀行での企業への貸付資金の焦げ付き、破綻の推移は注意深く見守っていきましょう。貸付の多くはコロナ急拡大のタイミングに重なっていますので、返済期限も重なります。そこでの企業破綻の急増は金融市場を混乱化させ、金融機関の業績悪化は資金の循環の流れを止めることにもなります。金融市場の暴落はこのタイミングで起こりえます。
日本の積み上がった負債は必ずこの後限界が来ます。問題の先延ばしは、人口、生産年齢人口の急減により、あるタイミングから実現不可能となり、様々な問題がさらに表面化します。その時は円という紙幣の継続的な下落が起こると考えられますから、円という紙幣からの分散が必須となりますね。
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