お金の話

宝石オークションが価格高騰中!

金余りが鮮明なオークション市場

オークション大手のサザビーズは、非常に希少で、鮮やかな紫色がかったピンクのダイヤモンドが11月11日にジュネーブで競売に掛けられると発表しました。落札額は最高3,800万ドル(約40億400万円)と見込まれています。

このダイヤは14.83カラットで、ロシアのダイヤ生産業者アルロサが採掘したものです。ロシアのバレエから「薔薇の精」との名前がつけられています。この種のダイヤで競売に掛けられるのは過去最大級だといいます。新型コロナ禍の中、世界中で大規模な金融支援策が継続的に行われたことによる過剰流動性資金が金融市場に溢れ、世界の富の二極化は拡大し続けています。今日はオークション市場に注目し、話を進めてみたいと思います。

日本人が高額落札

10月5日に開催されたサザビーズ香港のオークションで、102.39カラットの最高ランクのオーバルダイヤモンドが約1億2,100万香港ドル(約17億円)で日本人のコレクターによって落札されました。このコレクションは前例のないシングルロットライブオークション(最低売却可能価格の設定なし)で、オンライン上で1香港ドル(約14円)でスタートしました。このダイヤモンドは100カラット以上、Dカラー(完全無色)、フローレス(無傷)、カットや研磨、対称性に関してもエクセレントで、ダイヤモンド全体の2%以下といわれる不純物窒素を含まない炭素だけで構成されるタイプ2Aという希少性の高いものでした。

オンラインで8,500万香港ドル(約12億円)の値が付き、ジュエリーオンラインオークションにおける最高の入札額となりましたが、最終的には電話で日本人のコレクターが約17億円で落札しました。

このダイヤモンドは2018年、カナダ・オンタリオ州のビクター鉱山で採掘された271カラットの原石からのもので、ダイヤモンド研磨と調達のトップ企業であるダイアコアにより1年以上にわたり研究を重ねて慎重にカット、研磨されたものです。

昨年4月に開催されたサザビーズ香港のオークションでも、日本人コレクターが88.22カラット、Dカラー、フローレス、タイプ2Aのオーバルダイヤモンドを1億800万香港ドル(約15億4200万円)で落札しており、日本でも富の二極化が広がる中で、一部の富裕層の富は大きく増加し続けていることが見て取れます。

ポーラ美術館も絵画を高額落札

ポーラ美術館が、10月6日に行われたサザビーズ香港のイブニングセールで、ゲルハルト・リヒターの油絵を高額落札しました。同作は、アメリカ人実業家であるロナルド・ペレルマンが出品したものとされており、当初の予想落札価格は16億~19億円でした。

結果的には落札価格はその約1.5倍となる約30億円まで上昇しました。この落札価格は、アジアにおけるオークションで落札された欧米作家作品の過去最高額となりました。

今年のノーベル経済学賞はオークション理論

スウェーデン王立科学アカデミーは12日、2020年のノーベル経済学賞を米スタンフォード大学のポール・ミルグロム教授(72)とロバート・ウィルソン名誉教授(83)の2氏に授与すると発表しました。授賞理由は「オークション(競売)理論の発展への貢献」です。

単純競り上げ式以外に注目

美術品などの入札に用いられるオークションは複数の応札者が値段をつり上げ、最高価格を提示した人が財を落札する方式で知られています。ミルグロム氏らは、オークションの手法がこのような単純な競り上げ式以外にも数多くあることに注目しました。

例えば参加者が価格を隠して応札し、最高価格を提示した応札者が、上から2番目に高い入札価格で財を買い取る「第2価格方式」です。単純な競り上げ式だと、最高価格の提示者は2番目より高すぎる値段を提示することで受ける損失を気にしてしまいます。結果として本来思い描く価格より低い値段を示すなど、入札に不透明な要素ができます。

一方、第2価格方式なら自らが提示した最高価格が高すぎても、2番目に高い入札価格で財を買い取ることができるわけで、このため正直な価格提示が可能となり、入札から不透明なギャンブル性も取り除けることになります。

「勝者の呪い」定式化

オークションで高すぎる価格を提示して被る損失は「勝者の呪い」といわれ、ウィルソン氏が定式化しました。一方、ミルグロム氏は売り手と買い手がそれぞれ商品に対する主観的な評価を持つ中で、どのような方式をとれば入札が双方にとって満足できるものになるかを理論化しました。理論は現実にも用いられています。

1994年、米連邦通信委員会(FCC)は携帯電話の電波利用権を入札にかけ、当時70億ドル(現在の物価だと1兆円超)もの収入を得ました。このときの入札で用いられた「周波数オークション」は世界各地で応用され、携帯事業への参入促進と国庫収入の確保を同時にもたらしました。周波数オークションでは電波の帯域や適用される地域など、多くの種類の免許があり、条件は複雑です。

そこでミルグロム氏は「同時競り上げ式オークション」と呼ばれる方式を考案しました。それぞれの免許の入札を同時に始め、すべての入札が終わるまではどの入札もやめない方式です。ある免許で脱落した買い手がいても、途中で別の免許の入札に乗り換えられるため、最も効率的に高値で買い取る事業者を見つけられることになります。2氏が理論的な基礎をつくったオークションは、日本でも不動産など様々な分野で応用されているのです。

興味を持つことの重要性

皆さんも、ヤフオクなどのネットオークションを利用したことがある人は多いかと思います。単に落札したり、出品したりするのではなく、オークションの仕組みそのものにも興味を持ち、価格がどのように形成されるかを理解すれば、それは実は投資にも応用できるのです。

様々な金融商品は需要と供給のバランスで成り立っています。

人気投票とも言えますね。価格形成の仕組みが理解できれば、当然のことながら、投資で成功する率も格段に上昇するわけなのです。

興味を持ち、自分なりに調べてみることが重要なのです。