相乗効果を上げるウォールマートのビジネスモデル
米ウォルマートが2020年2~4月期の決算で増収増益を達成している。売り上げの伸びは9%となり、過去20年で最大となった。特に食料品の分野では、ライバルであるアマゾンをしのいでいる。
金食い虫とやゆされつつも、オムニチャネル戦略への投資を続けてきた成果が表れた。株価は3月12日には104ドルまで下落したが、6月5日現在は122ドルまで上昇し、過去最高値圏となっており、ニューノーマル2.0の勝ち組企業の代表格の1社と言えるだろう。
パンデミック支出の3つの段階
ウォルマートのCEO、ダグ・マクミロンは、パンデミックの支出の3つの段階について説明した。「在庫確保」段階、「娯楽と教育」段階、そして「景気刺激策による支出」段階だ。
第1段階では食料品や必需品、第2段階ではパズル、自転車、ホームオフィス機器、第3段階ではアパレル、テレビ、おもちゃが売れた。ウォルマートは、食料品の配達でも大幅な成長を遂げており、売上高はピーク時には300%近く増えている。
Amazonは?
米電子商取引最大手のAmazonは今年1~3月期に記録的な売上高を計上したものの、新型コロナの世界的な拡大に対応するためのコストが急増し、純利益は減益となった。
ウォールマートの強みは?
ウォールマートはこのパンデミックにAmazonよりうまく対処できたのだろうか?この問への答えは圧倒的なイエスである。ウォルマートは米食料品市場の4分の1を占めている。
全米に5,000店以上を展開し、従業員数は150万人で、うち235,000人は新型コロナに伴う需要増に対応すべく雇用した臨時従業員である。
2~4月期の売上高は1,350億ドルで前年同期比9%増と、過去20年で最大の伸び率を記録した。既存店ベースの売上高の伸びはさらに大きい。オンラインでの販売と店舗での受け取りを組み合わせた形態であるオムニチャネル戦略に基づく売上高も74%増加した。
ウォールマートはAmazonと異なり、純利益も伸ばし、同4%増の40億ドルを記録した。新型コロナのためのコストを約9億ドル計上したにもかかわらずである。従業員にかかる医療費の会社負担分や賃金の割増し、従業員へのボーナスなどが特別の負担となった。
様々なノウハウが集結している
ウォールマートの売り上げが急増した理由は、消費者のパニック買いだけではない。4月に入り初期のパニックが和らぐと、需要も多少は落ち着いた。しかしそれでも売上高は前年同月比で9.5%増加しており、伸び率は2月と比べて3倍近くになっている。
この期間を気分よく過ごそうと考えた人々が、政府から得た給付金の一部を、衣服やビデオゲームなど利益率の高い商品に費やしたからだ。
ウォルマートが好業績を達成できた背景として、コストを抑えるノウハウも大きい。少なくとも、経費の上昇が手に負えなくなることはない。これは従来から定評のある能力だ。2~4月期の売上原価は前年同期比約10%増で、売上高の伸びとほぼ一致している。
宅配サービスも好調
ウォルマートは新型コロナが拡大する以前から約100店舗で宅配サービスを手掛けていた。オンライン注文に対応していた45の配送センターで作業が追いつかなくなったため、宅配サービスの機能を直ちに約2,500店舗に拡大した。
ウォルマートの顧客はオンラインで食料品を注文できる。商品は自宅に配達してもらうこともできるし、ドライブスルー形式の受取所でピックアップすることもできる。食料品にこうした販売スタイルを採り入れたことがオムニチャネルの売り上げ増につながったと同社は説明している。
人々が感染を恐れ、混雑した店舗を敬遠している今にぴったりのスタイルとなったわけだ。ウォルマートがAmazonに勝っているのはまさにこの点なのだ。Amazonは食料品の分野でまだ成功を収めておらず、差別化が図れている。マクドナルドの成功戦略も似通った点が見受けられる。
オンライン中古市場に参入
ウォルマートは更に5月後半から、オンライン古着販売を手掛けるthredUpとの提携を発表し、ファッション分野で中古市場に参入することを明らかにした。
すでに通販サイトWalmart.comで販売を始めていて、婦人服や子供服、アクセサリー、靴、ハンドバッグなど約75万点の中古品を取りそろえ販売を行っている。
アメリカを中心とした北米では、元来スリフトショップという形での、寄付による中古衣料販売店は数多くあるが、少しでもお金に変えたい層は、新型コロナにより確実に増えており、この分野での急成長も見込まれるのではないだろうか。
抗議デモへの対応は?
ニューヨークやシカゴを含む各地ではデモ隊が暴徒化して略奪や破壊行為を働き、ターゲット、アップルから高級アパレルまで、小売業者が営業時間の短縮や店舗閉鎖に追い込まれている。
ウォルマートの店舗がデモによる閉鎖は現時点では行われていないが、主要な都市部の多くの店舗で火器を販売しておらず、また販売する店舗では今回、拳銃と自動小銃用弾薬の販売を停止する措置を取っている。
ウォールマートの快進撃はどこまで続くのか?
ウォールマートの強さには揺るぎなさを感じる。Amazonと市場を食い合うというより、それ以外の多くの他社、小売業の売上を2社が侵食していく形になるのではないだろうか。
既に最高値圏にある株価だが、ニューノーマル2.0バブルの中で紙幣の価値が下落する中では、優良資産として保有すべき1社であることは間違いないだろう。
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