経済ビジネス

東京五輪の行方と日本の将来を考える

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が4日、「女性がたくさんいる会議は時間がかかる」などという自身の発言について「深く反省し、撤回したい」と謝罪しました。しかし質疑の様子を見ていると、記者からの質問に逆切れする様な場面もあり、とても反省しているようには思えません。

なぜこの人をトップに据えたままなのか? 多くの人が当然疑問にも思うことですが、東京五輪の今後の行方と、そのあとの日本という国の行末がどうなっていくのか? これを今回は考えてみたいと思います。

世論調査では7月開催反対は80%超え

年明けに共同通信が行った世論調査によると「中止すべきだ」が35.3%、「再延期すべきだ」が44.8%で、7月開催への反対意見は全体の80.1%に達しています。「五輪などやるなら、その予算をコロナ対策に」と訴える声は日に日に増している、というのが現状です。

五輪開催する上での現状の問題は?

まず1つ目として五輪前の最終予選が延期に追い込まれていることがあります。。そして2つ目は、国内の厳しいコロナ感染状況にあります。3つ目の問題は、五輪開催に欠かせないワクチン接種の状況です。欧米先進国を中心に、昨年末からすでに接種が始まっています。しかし、英国製のワクチンがEU諸国に事前の契約通り届かなかった例もあり、各国とも予定通り接種が進むとは思えません。そしてもちろん、日本だけでなく、全世界のコロナウイルスの感染状況も気にしなくてはなりません。

IOCによると、現時点で、参加枠で選手が確定しているのは全体の61%ほどにすぎないといいます。全体の15%は競技ごとの世界ランキングで五輪参加枠が埋まるといいますが、残りの25%ほどはこれから選手選出が進められます。世界的に各競技で予選実施が止まっている中、向こう数カ月でこれを決めるのは現実問題として実現不可能ではないかと感じます。

コロナに打ち勝った証として?

菅首相は昨年9月26日の国連演説で、「来年の夏、人類が疫病に打ち勝った証しとして東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催する決意だ」と表明しています。しかし国内の医療体制も緊迫した状況が続く中で、五輪に対応した医療体制を作るのは現実不可能に感じます。なぜそこまで五輪開催にこだわるのでしょうか?

政府関係者の話は?

「テレビ放映できることが重要で、観客はゼロで問題ないと思う」と政府関係者は語っています。観客削減の場合、観客ゼロの場合ともに「チケットはとりあえず全額払い戻しになるだろう」ともいいます。無観客でも開催しようとする理由は巨額な放映権の問題にあります。

4,600億円の放映権

IOCは五輪開催によって巨額の放映権料を得ており、1大会の放映権料は41億5700ドル(約4,600億円)で、IOC収益の8割を締めています。中でもNBCとは14年ソチ冬季大会から2032年夏季大会までで約120億ドル(約1兆3000億円)の契約を結んでいる最大のステークホルダーだけに、競技スケジュールなどを含め、大きな影響力を持っているとされています。オリンピックは本来の理念からかけ離れ、あくまでも商業、経済優先主義となっている実態があります。

北京五輪を必ず開催させたい中国も応援

世界初となる同じ都市での夏季、冬季五輪開催が予定される中国の北京。習近平国家首席としても、なんとしてでもまずは東京で五輪が開催され、その対応状況をみながら来年の北京五輪を成功させたいという思惑が強く、中国も協力を申し出ています。

開催されても厳しい日本、4つの理由

利害関係者の様々な思惑の中で、無観客、少数の観客で開催されたとしても、当初の目的とはかけ離れた状況になることは間違いありません。

①五輪目当てのインバウンド旅行客は期待できない

東京五輪とそれを前後しての日本への旅行ブームを期待した各産業は継続的に大きなダメージを受けることになり、既に多くの企業、店舗は借金まみれの状況の中、事業継続を諦めることで、倒産、破綻が2021年夏以降急増することが予想できます。

②多くの新興国、途上国からは選手を派遣できない

南半球はこのあと秋から冬へと向かいます。ワクチンが新興国、途上国に行き渡るとは考えにくく、多くの国では五輪どころではありません。選手団を派遣できる国は限られることになるでしょう。これにより日本選手の獲得メダル数は急増するかもしれませんが、そこに価値があるのでしょうか? 大きな疑問です。

③ 医療体制は大丈夫か?

様々な思惑、メンツのために五輪が開催されたとしても、医療体制はさらに大きな負担を強いられることになります。医師、看護師の間では多くの燃え尽き症候群が見られる様ですが、長期的な視点から、現状の医療体制が大きく後退する様に感じます。

④ 財政崩壊が忍び寄る

財政悪化が加速する中、五輪での経済への大きな後押しは期待できず、大赤字の東京五輪となることは確実です。関連産業への金融支援は続けられることになるでしょうが、それによってさらに多額の紙幣を刷り続けるしか選択肢もなく、日本の財政は悪化が加速すると考えるべきでしょう。いよいよ階段を転げ落ちるような状況に入っており、様々な意味での終わりは近いと感じます。

個人個人がどう備え行動するか?

東京五輪の開催、延長、中止、どの選択になるかはまだわかりませんが、個人個人に直接降りかかってくる影響は、五輪に関係する産業(例えばインバウンド)に携わっていなければ、特に大きな問題でもありません。

ただし日本の財政、経済への影響は非常に大きな問題ですから、各金融市場への影響は必ず出てきます。この点をそれぞれ皆さん独自でも想像力を持って考えて欲しいと思います。これもひとつの先行きを見通す訓練なのです。投資のリターンを継続的に上げるためには非常に良い学びの教材として、東京五輪を考えてみましょう!!

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