中国の借金漬け外交で世界を握ろうとする中国
中国が行う世界の新興国、途上国に対しての融資は債務の罠への仕掛けなのか?
中国の借金漬け外交は債務の罠とも言われ、巨大経済圏構想 “一帯一路 ”の名のもと、多額の借款を発展途上国に押しつけ、借金のカタに重要インフラなどを奪う形のものをいい、既に多数の国で問題が表面化している。
2005年に就任したスリランカのマヒンダ・ラージャパクサ元大統領が、中国の習近平政権の掲げる “ 一帯一路 ”に呼応し、資金の多くを中国から借款して、インド洋のシーレーンに近い南部のハンバントタ港を約14億ドルかけて開発した。
しかし、当初の計画通りとはならず、中国からの借入金利が高く、港の稼働率も悪かったため、返済のメドが立たなくなった。そして結局、中国側と港の権益の80%を、99年間貸与する取り決めを交わして借金の穴埋めにした。中国は、対立するインドを牽制するように、軍事拠点化を目論んでいることが考えられる。
スリランカの15年の大統領選では、全方位外交を掲げるマイトリーパーラ・シリセーナ氏が当選し、一時は中国依存から脱却する動きを見せたが、中国資本の攻勢を受け、更には昨年11月、前々大統領の弟、ゴーターバヤ・ラージャパクサ氏が新大統領に選ばれ、親中路線は加速することになった。
中国の債務の罠に苦しむ国々
スリランカ以外にもアジアだけ見ても、パキスタン、モルディブ、タジキスタンと中国からの債務の罠で膨らむ財政赤字の国々がある。
パキスタン政府は、今後20年間に中国政府に返済する金額が400億ドルに達すると見込んでいる。
モルディブが中国から受けた融資は30億ドルと国内総生産の半分を上回る。
タジキスタンでは2007~16年の対外債務増加の80%を中国の融資が占めた。
中国の借金漬け外交も裏目に出てきている
スリランカの事例のように、貧困国が返済のために実物資産を手放すこともあるが、中国が債務の罠を当初から目的としているかといえばどうも違うようだ。
マレーシアのイースト・コースト・レール・リンク(ECRL)を巡る4月の再交渉では、全長約650キロのこの鉄道は、後にスキャンダルで失脚したマレーシアのナジブ・ラザク前首相との交渉で決まった条件によると債務は約159億ドルだった。後任のマハティール・モハマド首相はこれを107億ドルに削減した。
中国側は、マレーシア政府との関係てこ入れが値引きに値すると計算したのかもしれない。このプロジェクトがマレーシアの利益になれば中国の国益にもかなう。
ウクライナが返済の代わりに出荷する穀物が合意していた量を割り込んだ際、中国は紛争解決に国際仲裁制度を使わざるを得なかった。中国には力づくで、それらの穀物を差し押さえる手段がなかったからだ。
一帯一路は中国の友好国を広げる方法であり、債務の罠はその目標を台無しにする。
債務の罠はもろ刃の剣でもある。中国政府は石油購入の際にベネズエラに500億ドル以上を貸した。しかし、その後ベネズエラでは政治が混乱したため、石油生産が2015年の日量240万バレルから同73万2000バレルに落ち込むなか経済が崩壊し、結果として中国政府は200億ドル以上を失うことになった。
こうした過ちは、習近平主席にとっては政治的な打撃、そして中国にとっては財政的な打撃になっている。米中貿易摩擦という暗雲の下で経済が安定しない中、習氏が金食い虫の長期構想を正当化するのは難しいだろう。対応策を練る上で、一帯一路構想を正しく位置づけることが非常に重要になる。
中国は限られた資金で持続可能な関係を模索しているが、一帯一路の低迷が続くことが予想できる。
2020年 中国のバブル崩壊がいよいよ間近に!!
一帯一路、債務の罠による中国の影響を警戒することだけを考えるのではなく、現状それによって抱える中国のリスク、問題も理解した上で、起こり得る地政学的リスク、世界経済への影響を見通すことが重要である。
自動車産業の落ち込み、米中貿易戦争での経済悪化、個人消費の落ち込み、地方不動産のスラム化、地方財政の悪化など、2020年は中国内の様々な経済問題は表面化してくる。
台湾選挙での反中派政権の圧倒的多数の得票、香港で続く民主化デモなど、近隣国との間に抱える問題も根深い。
習近平体制が盤石に進むには大きな難関がいくつもあり、トンコレラの蔓延による物価高など民衆の不平不満はたまり、中国国内でのデモも増加傾向が続く。
過去の10年、20年と振り返ってみても、2020年の中国が置かれる状況は最も厳しいようにも感じられる。中国のバブル崩壊がいよいよ訪れるときが2020年なのかもしれない。
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