11月のアメリカ大統領選まで3ヶ月
11月の米大統領選まであと約3ヶ月となった。現在のところ、世論調査では民主党のバイデン氏が有利な状況と報道されているが、2016年の際も優勢が伝えられたヒラリー・クリントン氏は最後でトランプ氏に敗北したことから、何が起こるか分からない。
暴力的過激主義を唱える組織が増加
一方、テロリズム研究の世界では、今回の大統領選挙を巡り1つのリスクに懸念が拡がっている。それは、近年欧米諸国で急速に台頭する白人至上主義者、極右主義組織が同大統領選挙に合わして活動を過激化させることだ。
米南部貧民救済法施行機関(SPLC)は今年3月、白人至上主義組織の数が過去3年間で55パーセント増の155組織に達し、そのうち大量殺戮による多文化社会の崩壊を目指す「暴力的過激主義」を唱える組織の増加が顕著になっていると指摘した。
トランプ大統領が落選すると、テロが激化する
米国国家テロ対策センター(NCTC)の元長官は8月、メディアのインタビューに応じある懸念を示した。それは、現職のトランプ大統領が敗北すれば、同大統領を支持する暴力的な白人至上主義者や極右組織などが国内でテロを活発化させる恐れがある。
米国では9.11以降、アルカイダやイスラム国が掲げるイスラム過激思想の影響を受けたホームグローンジハーディストの脅威が問題となったが、近年はそれ以上に、反イスラムや反ユダヤ、反ヒスパニックなどを掲げる暴力的な白人至上主義者、極右主義組織によるテロが大きな脅威となっている。
また、元長官は大統領選後だけでなく、今後の世論調査でトランプ大統領敗北が濃厚になれば、大統領選前でも極右勢力の活動が活発化する可能性を示唆した。新型コロナウイルスの感染拡大や黒人男性死亡に端を発する人種差別反対デモなど米国は社会的な混乱期にあり、大統領選の行方によってはテロなどの暴力が活発化する恐れはテロリズム専門家の間でも最近多く指摘されている。
コロナの感染拡大で白人至上主義が拡大
一方、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、白人至上主義が勢力を拡大させることが懸念されている。新型コロナウイルスの感染拡大は、米国を中心に欧米世界に大きな被害をもたらした。そして、ロックダウンなどさまざまな社会的制限が課されることによって、欧米各国は深刻な経済的打撃を受けることになった。
それに伴い、白人を中心とする若者たちの社会経済的不満がこれまでになく高まり、白人至上主義組織などが、「新型コロナウイルスによって欧米世界が大規模な被害を受けた、白人の世界をさらに守らないといけない」などとして、新型コロナウイルスを自らの主義主張を正当化する道具として利用することが懸念されている。
米国の国土安全保障省は3月、白人至上主義組織がユダヤ系の米国人や警察官を標的として、唾やウイルスを混入させたスプレーなどを使って非白人にウイルスを巻き散らすテロを感染した支持者に呼び掛けていたと発表した。
白人至上主義組織はトランプ大統領を支持
米国を拠点とする白人至上主義組織では、「Atomwaffen Division(AD)」、「the Base」、「Rise Above Movement(RAM)」などが近年急速に勢力を拡大しているが、こういった組織はロシアの「Russian Imperial Movement(RIM)」、北欧各国に拠点を有する「Nordic Resistance Movement(NRM)」、ウクライナの「アゾフ・バタリオン(Azov Battalion)」、英国の「National Action」など、外国の白人至上主義組織と連携を深め、アルカイダやISのようにグローバルなテロネットワークを形成しつつある。
欧州の白人至上主義組織やその支持者たちも、トランプ大統領を「白人至上主義のシンボル」なとどして称賛するなど、米大統領選を見据え、ADやthe Baseなどの組織を背後で支援している可能性もある。
今では、新型コロナウイルスの感染拡大によって、排斥主義的な流れがいっそう強くなり、暴力的な極右思想が受け入れられる空間が広がることが懸念されているが、大統領選でトランプ劣勢の流れが強くなると、こういった白人至上主義の暴力が激化する可能性がある。
毎週1回情報をまとめてお送りします。
AI TRUSTでは日々の金融市場に影響を与えるニュースを独自の視点から解説を行っています。是非ご自身の投資指標としてご活用ください!!