週間市場動向

【このあと日本で起こること】トラスショックを改めて振り返り日本国債に当てはめると? 

米国経済が強く、米国株が連日過去最高値を更新しています。

AI関連株は引き続き堅調な動きをしていますが、いわゆる巨大テック企業を見渡すと、夏以降はその動きは個々の銘柄によりかなり差が開いています。

11月5日の米大統領選までいよいよ2週間強となってきました。

一時期はハリス氏がリードしていた展開も、現在は激戦州ではトランプ氏のリードとなっています。

どちらの候補が選ばれるにせよ、金融市場全体がボラティリティが高くなりますので、注意が必要です。

日本の衆院選も今週末の日曜日が投票日です。どの政党も財政のばら撒き政策をうたっています。

そして自民党が過半数割れをし、石破氏がその責任をとって辞任し、仮に高市氏が選ばれるようなことになれば、アベノミクスが継承され、さらなる大規模なばら撒きが行われる可能性が高いです。

その時日本はどうなるか?

今日はイギリスで起きたトラスショックを振り返ってみたいと思います。

トラスショックとは?

2022年9月イギリスでトラスショックが起こりました。

トラス党首率いる保守党政権は、財源のない減税を発表しました。これによりイギリスの国債市場は暴落、金利は急騰しました。

国債保有者が国債を投げ売りする状態で金利は急騰しました。7月後半は1.86%だった10年債金利が、10月10日には4.37%までの上昇です。

たった2ヶ月半で金利が2.5%も上昇

これにより、ほとんど一夜にして年金ファンドがバランスシートの悪化により財政危機に陥いりました。

自国通貨が基軸通貨ではない場合、自国の通貨や国債を諸外国が買ってくれない場合の市場の反応はこうなります。

2023年には、基軸通貨の米国ドルを持つアメリカでさえ、金利上昇、国債下落により、バランスシートが悪化したシリコンバンクバレー、シルバーゲート銀行、シグネチャーバンクが破綻しました。

イギリスの中央銀行は緊急措置として国債買い入れを行おうとしましたが、これはインフレ時における量的緩和ということになりますから、今度はポンドの価値が危うくなってしまいます。

それで中央銀行は自分が緊急措置を取っている間にトラス政権に政策転換をするように迫ったわけです。

通貨価値も30%程度下落

当時のポンドドルのチャートを見てみると、2021年5月は1.41ドルだったものが、2022年9月には1.08ドルまで30%程度も下落しています。

イギリスの金融市場、為替、債権市場が大荒れになったことから、その責任をとり、トラス氏は政策を撤回し、そして辞任することになりました。

中央銀行が金利を操作できなくなる瞬間が起こったわけですが、国債には保有者がいますので、国債の危機とは政府の財務危機であるだけでなく、預金者や年金にとっても同様に危機なのです。

日本の10年債金利は現在0.96%の水準にあります。

このあと、新たな政権が裏付けのないばら撒き政策を発表し、市場がトラス政権当時のような反応をすれば、トラスショック時のイギリス国債と同様に、金利は数ヶ月で、3.5%まで上昇することは十分にあり得るのです。

その時日本で何が起こるのか?

日銀が保有する国債の含み損は3月末時点で9兆4,337億円(前年3月末は1,571億円)に膨らんでいます。

長期金利の大幅上昇で国債の評価額が下落し、年度末としては過去最大となりました。 国債保有残高は前期比1.4%増の589兆6,634億円と過去最大を更新しています。

植田和男総裁は2月22日の衆院予算委員会で、金利全般が1%上昇した場合、日銀が保有する国債の評価損は約40兆円程度発生すると説明しています。

仮に今の水準よりも2.5%金利が上昇すると、100兆円の含み損が増え、合計で110兆円もの含み損となれば、保有するETFに40兆円近い含み益があったとしても、日銀は完全な巨額の債務超過となります。

そうなれば、いよいよ持って格付け機関は日本の国債格付けを下げることになり、それによって負のスパイラルが加速して止まらなくなってしまうように思います。

予期せぬインフレが突然的に起こる!!米価格46.7%上昇の悪夢

総務省が昨日発表した9月の全国消費者物価指数は108.2となり、前年同月比2.4%上昇しました。

政府の電気・ガス価格の抑制策の影響でエネルギー価格の上昇幅が大きく縮小し、コアCPIの伸び率は前月の2.8%を大きく下回りました。

しかし、政府の「酷暑乗り切り緊急支援」で総合指数を0.55%ポイント押し下げた形ですので、これがなければ3.35%の上昇となり、前月の2.8%よりもさらにインフレが進んでいることになります。

そして、その中でも際立っていたのが米の価格の上昇です。うるち米46.3%上昇となり、比較可能な1976年1月以降で最高の伸び率となりました。

米価格の上昇には様々な要因がありますが、これは政府、日銀のばら撒きから起こる悪夢の始まりのように見えてなりません。政府や関係者は新米の出荷時期になれば価格は落ち着き、確保もできると言っていましたが、実際はそうはなっていません。

結局のところ価格をコントロールなど誰にもできないということだと思います。

日本国債の格付けが下がった時には、やはり思っているよりも酷い状況に国民生活が追いやられるように思います。コロナ禍でもトイレットペーパーなどの買い占めが起こりましたが、同様の混乱が起こることを覚悟しておく必要があります。

金利上昇でマイホームローンの返済額も急増

不動産流通経営協会の23年度の調査では、変動型を選ぶ人が82・8%に上っています。

6,200万円の住宅ローンを期間35年(変動型)で借りた場合、金利が0.4%だと毎月の返済額は15万8,218円です。

10年後に金利が1%上昇すると、17万8,506円、2%だと20万338円になり、およそ2万~4万円の負担増となります。

現在、殆どの人が変動金利を選択しており、このあとの金利の上昇により、住宅ローンを組む多くの家庭が更なる生活苦に陥るリスクが高くなります。

犯罪のさらなる急増にも注意!!

このところ、連日のように日本各地で戸建て住宅を狙った強盗犯罪が起こっています。

そして、この後も確実に犯罪が加速度的に増加していくことになるでしょう。お金に困り、生活が苦しくなれば、自ずと犯罪率は増加するのです。

警察庁が2024年2月に発表した2023年の犯罪情勢によると、23年の刑法犯認知件数は70万3351件で、前年に比べて17%増加したそうです。犯罪が急増しているのです。

刑法犯認知件数は、2002年の285万4000件をピークに、戦後最少となった21年の56万8000件まで、19年連続で減少していましたが、2022年から2年続けて増加しています。

戸建て住宅に押し入る強盗犯罪が本当に毎日ニュースになっていますが、これがさらに加速して増加することになるでしょう。

そしてそうなると、ますます地方の、特に周りの住宅と離れた1軒家など、不動産としての価値が全くなくなってしまうように思います。

明らかに犯罪のターゲットとなる可能性が高いわけですから。

7月の日銀会合での利上げにより株価は暴落しましたが、財源の裏付けのないばら撒き政策に対しては、必ずどこかのタイミングで手痛いしっぺ返しが金融市場にやってきます。

そしてそれだけでなく、さまざまな形で日本人の生活をより困難な未来に向かわせることになるのです。

今まで以上に、これから訪れる困難な時代を、強く賢く乗り切る力を持たなければいけませんね。

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