金融リテラシーを高める
日本のお金に対する教育は、無いに等しいといえます。その反面でお金の教育は「必要」と考える保護者が、9割近くをしめています。学校教育の中で、お金の教育が少しずつ意識され浸透していく流れが出ていますので、今回は、日本におけるお金の教育について解説します。
高校の社会・家庭科の授業に「資産形成」
授業として、資産形成を学ぶ機会が2022年から入ります。高校の社会、家庭科の授業で資産形成についての項目が用意されます。
具体的に学ぶ内容としては、以下の通り
公民科(社会)
・経済活動と市場、経済主体と経済循環
・財政の働きと仕組み及び租税などの意義、金融の働きと仕組み
家庭科
・消費者の権利と責任を自覚して行動できるよう消費生活の現状と課題、消費行動における意思決定や契約の重要性、消費者保護の仕組みについて理解すること
・生涯を見通した生活における経済の管理や計画
・キャッシュレス社会が家計に与える利便性と問題点
公民科では、制度面の教育、家庭科では、実際に生活に直結するような内容が学べる仕組みとなっています。また、株式や投資信託といった金融サービスに関する内容を導入します。
資産形成ですので、金融商品のリスクとリターン、そして、近年一気に導入が加速しているキャッシュレス決済に加え、仮想通貨などを用いて金融リテラシーを高めます。
海外で進む金融教育
海外では、金融教育は小さなときからはじめています。国ごとに学ぶ内容も違います。
・米国
パーソナルファイナンス(個人のお金や計画や管理)、現金・預金でもっている場合と、株式や投資信託などによって運用するのではどちらが有利か情報はどう得るかなど
・英国
2014年より、公立学校のカリキュラムに金融教育が盛り込まれ必修ステップを踏んで学びます。他人やメディアの影響などの視点も導入し、考える力を養う
・フランス
銀行口座とお金の基本、信用と負債、保証とリスクなど。最近ではビットコインも
・ドイツ
投資と貯蓄と退職、保証とリスク、銀行口座とお金の基本、信用と負債
米国は、ゲーム感覚で資産形成を学ぶ面もあってか、日本と比較して貯蓄という観点が少なく、投資に回す流れが多いのが特徴ですが、これも教育の違いといえるのではないでしょうか。
金融庁・財務省主導の洗脳教育の危険性
あえて、洗脳と書かせていただきますが、今回の教育の主導は、金融庁・財務省です。教育は、一歩間違えば間違った内容の洗脳になってしまいます。公民科で財政の働きと仕組み及び租税などの意義、金融の働きと仕組みを学びますが、メディアを使い、「国民の借金一人あたり800万円」と政府の債務についての表現をミスリードをさせている財務省が、正しい財政の仕組みを子供たちに伝えるのか?が懸念されます。
資産形成についても同様のことがいえます。その他、投資面でいえば、社会保障費が大変だから、増税などいわれる中で、貯金ではなく、NISAやiDeCoなどへの教育という名の誘導が始まるのではないか?と個人的に注目しています。
増える認定講師
日本で金融教育が広がる中で、認定講師を養成する動きが広まっています。大人もお金の知識について基礎から学ぶ機会といえますが、新しいビジネスの場と捉えている方も多いでしょう。認定講師のニーズは以下の通り
・金銭教育・金融教育・消費者教育・マネー教育・キャリア教育の講座を開催したい
・分かりやすく伝える技術を習得したい
・ビジネスを展開したい
・自身が開催されている教室等に、マネー教育やキャリア教育の教材を取り入れたい
・企業等のイベントの企画を考えている
・ファイナンシャルプランナーやキャリアカウンセラーとして、教育活動を行いたい
・小・中・高等学校の先生で、マネー教育やキャリア教育の授業に関心がある
国が教育という分野で動くということは、そこに需要が生まれます。子供とお金教育の分野、ここには注目が集まるでしょうし、メディア戦略も進むと見られます。ただ、ブーム化に乗るのではなく、根本は「子供に正しい知識であること」を理解する上で、まず親であれば子供と向き合い、お小遣いや買い物などでリアルの場でのお金の使い方など、一緒に学んでいくことも重要です。
金融教育=お金を増やす教育ではない
金融教育と聞くと、お金を増やすという考えが先行しがちですが、授業を通じて我々の身近に存在しているお金について向き合ういい機会であるということには、違いありません。英国では、チャリティの役割についても話をされるようですが、ボランティアとは?などについて学ぶのも面白い取り組みかも知れません。
最後に、今回の内容を知った上で、投資なんてよくわからないよといっている場合ではありません。教育を受けていない我々大人は、意識的に学ぶ必要があることはいうまでもありません。子供がどんどん知識を得ていく中、ついていけない、話ができないなどといった大人(親)にならないように、今から意識的に取り組んでおきたいですね。
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