「三峡ダムの崩壊リスク」についてはAI TRUSTでも記事化していますが、本日は「中国が世界中に広げる借金漬け外交」と、一帯一路での手抜き工事について、そのリスクと今後起こり得ることについてまとめてみました。
中国一帯一路手抜き工事
近年の中国は、一帯一路政策の柱として、東南アジアやアフリカなどで、ビル、鉄道、橋梁、道路、ダムなどの建設工事を多数請け負っています。それらの建設工事においても、早期の倒壊事故、手抜き工事の多発、環境破壊、汚職・腐敗など様々な問題が世界中で生じています。
そして現在、中国の広域経済圏構想である一帯一路に参加する国の間で、中国に金融支援を求める動きが広がっています。いち早く声を上げたパキスタンは4月、300億ドル(約3.2兆円)の融資について返済期間の延長を要請しました。
現在は、アジアやアフリカでパキスタンの動きに追随する国も出てきています。新型コロナウイルスが各国経済に打撃を与えており、中国は対応を迫られています。
パキスタン政府が救済を求めたのは、インフラ整備事業「中国パキスタン経済回廊(CPEC)」を対象とする債務となります。一帯一路はかつて中国と欧州を結んだ交易路シルクロードに沿って構築をめざす経済圏で、習近平国家主席が提唱して推し進めています。CPECはその中核となる案件の一つで、失敗すれば習近平氏にとっても大きな痛手となりますので、中国側も何らかの譲歩・調整が必要となります。
インドネシア新幹線では日本に泣きつく状況
インドネシアの高速鉄道計画は当初、日本が新幹線方式を売り込みましたが、後に加わった中国が2015年にインドネシアに財政負担を求めない方式を提案して採用されました。総事業費は約60億ドルとされています。
中国側がインドネシアに債務保証も財政負担も求めず、短い工期と安い建設費用を前面に出して、土壇場で逆転、落札した経緯がありますが、既に計画は予算を大幅にオーバーした上で頓挫しており、目先の安さに釣られたインドネシア政府がいまは日本に泣きついている状況です。
ケニア:建築中の橋が崩落
2017年7月、ケニア西部で総工費1,200万ドルをかけて中国企業が建設していた橋が、完成を目前にして崩落しました。現場は同国のケニヤッタ大統領が2週間前に視察したばかりでした。
ケニアのインフラ開発プロジェクトは、中国企業と中国からの出資に大きく依存しています。総工費38億ドルをかけて6月に開通した鉄道のマダラカ・エクスプレスにも、中国企業が出資しています。
カンボジア:建設中のビルが連続倒壊
2020年1月、カンボジア南部のケップ州で、中国企業が建設中の7階建てのビルが倒壊し、36人が死亡し23人が負傷しました。カンボジアでは2019年6月にも、シアヌークビルで建設中のビルが倒壊し、28人が死亡する事故が起きたばかりでした。
原因は低品質の建築資材を使ったことなどが関係しているとみられています。事故との関連で、ビルの中国人所有者、建設会社の社長、請負業者ら4人が当時身柄を拘束されました。崩壊事故が発生したシアヌークビルは沿岸のリゾート地で、最近は中国からの投資が急増し、カジノ建設など観光地化が急速に進んでいます。
ラオス:メコン川一帯での環境破壊が引き起こされている
ラオスでは、中国の援助を受けて、2020年までに75カ所、総発電量は1万MW規模の発電所建設が進んでいます。しかし、急激な開発によって、メコン川一帯で環境破壊が引き起こされ、塩害や水質汚濁で農業や漁業に大きな被害が出ています。
ラオスは、世界有数の最貧国であり、中国から高速鉄道や水力発電ダムの建設資金として、数十億ドル規模の多額の資金援助を受けていますが、2020年には中国へのローン返済で2億5000万ドルを支払わなければならず、デフォルトの危機が迫っていると指摘されているます。
ラオスで進む首都ビエンチャンと中国を結ぶ同国初の長距離鉄道建設で北部の一部工区で雇用主の中国人らが新型コロナへの感染を恐れて中国本土へ帰国してしまい、ラオス人の建設労働者への賃金支払いが滞っていることも明らかになっています。
ラオスはASEANの中ではカンボジアやミャンマーと並んで中国とは「一帯一路」構想による巨額の経済援助やインフラなどの大型プロジェクト推進などで深い関係を維持している親中国です。
ビエンチャン市内や地方都市には中国企業などの中国語の看板が溢れ、メコン川など主要河川のダム建設や今回問題となっている高速鉄道建設は中国政府による一帯一路構想のラオスでの象徴ともいえ、コロナ感染対策を通じて中国は今後さらにラオス国内でその存在感を強めようとしていることだけは間違いありませんが、あわせて多数の問題を世界中で巻き起こしている事実を理解する必要もありますね。「中国による覇権主義」についての記事も合わせて読んでみて下さい。
世界へ様々なリスクを拡散させる中国の現状
現在の中国は、世界の工場としての役割を引き受け、急激な経済発展を遂げました。そしてその資金力と安い労働力を武器として全世界に経済進出を試みてきました。
世界進出の背景となったのが中国の巨大経済圏構想である一帯一路ですが、腐敗体質、安全性軽視、無責任、未熟な建築技術、遵法精神の欠如などにより、今後、全世界的に倒壊事故や環境破壊などを引き起こす可能性が高く、このリスクが懸念されます。
IT分野においての米中のデカップリングは確実に進みますが、中国側のお金という飴にすり寄った新興国、途上国各国は将来的には非常に痛い対価を支払わせることにもつながりそうです。