コロナウィルスで人種差別が表面化している
今回の新型コロナウイルスの広がりにより、北米、ヨーロッパ各国では、中国人だけでなく、東洋人全般に対する差別的行為が広がっている。
2月2日、100人以上のドイツ人が空軍機で武漢から帰国したが、そのうち2人が新型コロナウイルスに感染していた。ドイツでの感染者はこの時点で7人になり、3日までに12人が確認された。最初の感染者が見つかったのは1月28日、バイエルン州だった。翌29日には同じバイエルン州のニュルンベルク市で世界最大級の国際玩具見本市が開催されるため、中国からすでに360社以上約1,700名が入国していた。国別では、ドイツに続き2番目に多かった。
中国企業の集中するホールを訪れる者はほとんどなく閑散としていたようだ。ただ、各ブースを訪れる中国人への対応は通常通りで、会場ではマスクを着用する人の姿も少なく、それほど緊迫した雰囲気はなかった。現時点では期間中のトラブルも報告されていない。
東洋人全般に対する差別的行為
しかし、日本人出展者や現地在住日本人からは、地下鉄や駅、店などで、あからさまに避けられたり嫌な顔をされたりという話を聞く。
ウイルス拡散以上に懸念されるのが、新型コロナウイルスにかこつけて、中国人、ひいては東洋人全般に対する差別的行為が広がることである。
ドイツでは雑誌で差別行為
ドイツでは、まだそれほど酷い被害を聞かないものの、大手シュピーゲル誌が、真っ赤なケープにガスマスクを身につけた東洋人男性の写真と「コロナウイルスMade in China」というタイトルの扇情的なカバーを使用した。
これには中国人のみならずドイツ人からも批判の声が多数あがり、3日には在独中国大使館が同誌に正式に抗議した。ウイルス拡大の一要因はグローバリゼーションにあるとの同誌の指摘に、「本当の脅威はウイルスやグローバリゼーションではなく、無知と人種差別だ」というドイツ人の声もある。
カナダでも差別行為が起きている
カナダでも、中国からの旅行者ではない、同じ国民である中国系住民に対する差別行為が起きている。本国に次ぐ中国系人口を抱えるカナダのチャイニーズコミュニティは、2003年のSARS大流行のときに大バッシングを受けた苦い思い出がある。多数ある中華街に人が寄り付かなくなるなど、彼らのビジネスが受けた損害は約800億円以上とも言われる。
あまりのことに、当時のジャン・クレティエン首相が中華街を訪れ安全性をアピールするなど、異例の事態となった。
イタリア、フランス、イギリスでも差別
イタリアのサンタ・チェチーリア音楽院では、日本人も含めた東洋人へのレッスン制限を公表し、これは日本でも報道された。
フランスでは路上やSNS上での中国人に対する暴言が止まらず、#JeNeSuisPasUnVirus「私はウイルスではない」のハッシュタグが登場している。
ブレグジットの興奮覚めやらぬイギリスでは大学院生が、バスや図書館で席についたとたん隣の人がさっさと荷物をまとめて立ち去ってしまうといったことが増えていると報道されている。ブレグジットは元々、アフリカ、中東からの移民に対しての社会保障の手厚さに対する国民の不満から始まったものだが、ゼノフォビア(外国人嫌悪)が再び勢いづいている。
白人社会の中での差別が浮き彫りに
新型コロナウイルスは、ヨーロッパ、北米の白人社会の中で、普段、彼らがひた隠しにしている差別感情を表出する口実になっているかのようだ。
外国人嫌いの一部は、直近の新型コロナウイルスの広がりに対しての恐れと相互作用している。中国に対するより広範な政治的および経済的緊張と不安とによって白人社会の中で、差別行為が支持されている可能性が高い。
ウイルスの広がりが終焉するまで時間がかかれば、若年層の失業率も圧倒的に高いEU各国では、不満のはけ口が全てアジア人全般に向かうことも想像できる。
各国が右傾化し、自国主義に向かえば、経済は縮小することに繋がる。普段は口に出さなくても、潜在的に持つ白人至上主義、有色人種への差別が新型コロナウイルスで表面化し、これが正当化されるように広がれば、世界経済にとっては大きなマイナスとなるであろう。
株式市場の上昇に対しては潜在的な不安要因のひとつであるが、まだ今の段階では、大きなリスクとして捉える必要はないだろう。EU内での各国の対応の相違がEU分裂に向かうような流れにはならず、ユーロ相場への影響も小さく、潜在的なリスクとしてだけ捉えておけばよいだろう。
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