2021年に延期、東京オリンピック
本来であれば、世界中がオリンピックで盛り上がっていたこの時期の2020年7月。しかし新型コロナウィルスで世界は急変しました。WHO(世界保健機関)は、当初は「中国の武漢という都市で流行っているただのウィルス」、程度での発信でした。
2002年のSARS(重症急性呼吸器症候群)と比べても、10分の1程だろうとの見立てでした。要するに、そこまで酷いものにはならないとの考え方で、これを鵜呑みにした国、とはいえ得体の知れないウィルスだということで早急に対策をした国に分かれました。
どちらにしても、ウィルスは世界中で大きく広がり、結果的には東京オリンピックを延期に追い込む事態となりました。
オリンピック中止は過去に5回、延期は前例なし
オリンピックの誕生は、近代オリンピックが1896年からで、古代ギリシアで行われていた古代オリンピックに関していえば、紀元前9世紀ごろからといわれています。
それほど歴史ある行事ということです。そんなオリンピックが、新型コロナウィルスにより、今回の東京開催が延期となりました。
今だからこそ ” 延期なんですね ” 程度で捉えられますが、4年に1度の世界中を巻き込んでの大イベントが延期になったことは、とんでもないことです。
実はオリンピックの延期は歴史上において前例がありません。中止は夏冬合わせて5回ありますが、いずれも理由は戦争によるものでした。
中止となったオリンピック
・1916年ベルリン大会(第一次世界大戦)
・1940年東京大会(日中戦争で、代替地ヘルシンキにするも中止)
・1940年札幌大会(冬季)
・1944年ロンドン大会(第二次世界大戦)
・1944年コルチナ・ダンペッツォ大会(冬季)
今回の東京オリンピックは延期で、そして感染症(新型コロナウィルス)によるものというどちらも前例のない内容ということです。
延期に至るまでの舞台裏・壮絶だった
簡単にオリンピックを延期するといっても舞台裏は壮絶でした。東京がオリンピックの開催地に決定したのが、今から7年前の2013年9月7日です。国際オリンピック委員会(IOC)が、2020年のオリンピックの舞台を東京に選びました。東京でのオリンピック開催は1964年以来、56年ぶり2度目となります。
さてここから、あなた自身がオリンピック実行委員、関係者の立場だとして考えてみてください。2013年に開催が決まってから2020年までの準備期間、じっくりと時間をかけて準備しましたよね?
しかし簡単に1年後に延期するといっても、場所の確保は?選手選考は?と問題が山積みとなります。
そして、新型コロナウィルス収束という、淡い期待の中での決断を迫られたわけです。しかし日本が決定する訳ではなく、決定はIOCが行います。
ですので、世界中が新型コロナウィルス対策で大騒ぎとなっている中、日本だけが、コロナだからといって大騒ぎする、そんな空気を出さないようにしていたことを、気づいていた方も多いのではないでしょうか。
IOCが決断をWHOへ、即座に動く安倍首相
トーマス・バッハ会長は、開催判断について、「世界保健機関(WHO)の助言に従う」と3月12日に発表しました。新型コロナウィルスの世界的蔓延が決断の理由となりました。なんとしても開催を希望する日本政府は、その同時期に動いています。13日のジュネーブでの記者会見で、WHOのテドロス事務局長はこのように話され称賛しています。
「安倍(晋三)首相の主導の下での政府挙げての対策が、感染の抑制に決定的な役割を果たしている」同時に、WHOのウイルス対策に1億5500万ドル(約166億円)の資金拠出に謝意を表明しています。いいかたは悪いですが、テドロス事務局長の発言はお金が絡むと評価を上げた語り口になります。
しかし日本としては、なんとしてもオリンピックを開催させたい気持ちも入っての資金拠出だったのではないでしょうか。ただし、結果は残念ながら延期となりました。そして、騒がないよういしていた日本国内の空気が一変し、遅れての緊急事態宣言となったわけです。日本の新型コロナウィルスにたいする初動の遅れは、東京オリンピックが大きく関係しているのです。
オリンピック延期で株価、為替に与える影響
ここまでは東京オリンピックの延期についての経緯を書きました。では経済のダメージはどれほどのものなのでしょうか。関西大学の宮本勝浩名誉教授が興味深い発表をされています。
・延期の場合:約6408億円
・中止の場合;約4兆5151億円
これらは経済的損失だけの推計であり、新型コロナウイルスの影響で一般の観光客が減少する影響は含まれておらず、他の影響を考えると当然ながらそれ以上の損失となるということです。
株価、為替に与える影響
株価や為替には当然どこかのタイミングで、折り込まれてくると考えられますが、コロナショックの2月下旬〜3月のようにあらゆる情勢が絡み合っての影響となると考えています。
ですので、仮にオリンピックが中止となるのであれば、前後で一時的な動きは出る可能性はあるとしても限定的で、今の世界情勢からすると「ごくごく一部の要因」で捉えておくほうがいいでしょう。株価、為替へ全体へ与える影響は限定的、もしくは全く問題にもならない内容といえます。
諦めない日本、東京を金融センターの拠点に
東京オリンピックに関して、今後もネガティブな内容は出るでしょうし、スポンサーがつかない可能性や、感染が拡大している国などからの参加拒否、日本での感染懸念など問題は山積みです。
経済損失もオリンピック単体で考えると壮絶な数字が出ています。ただそんな中、オリンピックの内容とは全く違いますが、香港が中国による国家安全維持法案により、” アジアの金融ハブ “ の座を引きずり下ろされる形となっています。
これは東京には願ってもないチャンスとなり、既に自民党の方で動き始めています。” 他国の不幸でビジネスを強化するのは心苦しい ” との考え方もあるでしょうが、香港の変わりをどの国が担うか?これはアジアだけの問題ではなく、世界中にも求められることです。
ではそれが、上海?シンガポール?と見渡したところで、世界が認めるのは東京ではないでしょうか。このようなプラス面になるであろう経済効果も視野に入れつつ、東京オリンピックの行方を注視していきたいところです。