2020年6月、韓国の脱北者団体が金正恩氏を批判するビラを気球に乗せて散布したことがきっかけとなり、北朝鮮は南部開城に南北友好の象徴として建築された「南北連絡事務所」を爆破した。
トランプ政権の誕生以降、金正恩氏はトランプ大統領と3回も顔を合わせたが、それ以降、米朝交渉は停滞している。北朝鮮は米国との仲裁役で機能しない韓国への態度も硬化させており、朝鮮半島情勢は依然として緊張が続いている。
北朝鮮は核弾頭を製造している可能性
そのような中、米国のミドルベリー国際大学院の専門家チームは7月上旬、北朝鮮が平壌近郊の施設で核弾頭を製造している可能性があると明らかにした。この施設はこれまで公に発表されたことはなかったが、専門家チームは、地下施設の存在や周辺の警備状況などから核施設の可能性が高いとしている。
米国は北が先に核廃棄を済ませることを要求しているが、北朝鮮はそれに応じる意思は全く示していない。よって、今回新たな核施設が明らかになったとしても、現在の情勢の中ではそれほど驚くことではない。
7月10日、金与正氏の談話が発表され、「米国の姿勢に大きな変化がなければ、今年中また今後も米朝首脳会談を開催することはない」との意思が示された。
今後、北朝鮮はどういった行動に出てくるだろうか。大きなポイントとなるのは11月に迫った米大統領選挙で、北朝鮮は同選挙の行方を注視していることだろう。
11月に迫った米大統領選挙が鍵になる
現在、秋の大統領選では民主党のバイデン候補がトランプ大統領を支持率で10%ほどリードする展開となっているが、北朝鮮にとってトランプ氏は歴代の米国大統領で初めて会ってくれた大統領である。今後の米朝交渉も踏まえ、北朝鮮はトランプ大統領の再選を望んでいる可能性が高い。
https://ai-trust.info/20200715/
一方、バイデン候補の外交・安全保障政策は明らかになっていないが、バイデン候補はオバマ政権時代の副大統領であり、仮に当選するとオバマ時代の対北姿勢に回帰し、核廃棄など北朝鮮がやることをやらない限り、相手にしなくなる可能性がある。
北朝鮮はトランプ再選後のシナリオ、もしくはバイデン勝利後のシナリオなど色々と考えていることだろう。
コロナの影響で北朝鮮は苦境に
一方、新型コロナウイルスの感染拡大によって、今年1月から中朝国境が閉鎖されており、9割以上の輸入を中国に依存している北朝鮮は苦境に立たされている。北朝鮮としては一刻も早い貿易の再開を願っており、そのためにも金正恩氏や与正氏が訪中する可能性もある。
一方、米大統領が近づくにつれ、北朝鮮が9月や10月に再び日本海に向けてミサイルを発射したり、南北国境付近で威嚇的行動に出たりする可能性もある。
これまでも、比較的北朝鮮情勢がニュースや新聞で報道されないとき、北朝鮮はミサイルを発射したことが度々ある。
いずれにせよ、昨今の朝鮮半島情勢が経済や金融、株価変動などの世界に大きな影響を与える可能性は低い。言葉の戦争、小規模な威嚇や衝突などは断続的に発生する可能性が高いが、例えば在韓邦人の安全が脅かさせるなど企業の経営に大規模なダメージを与えるような事態が発生する可能性は低い。
しかし、依然として朝鮮半島の緊張は続いており、それは今後の米国や中国の出方次第では大きく情勢が変化する可能性がある。