アリアンツのチーフエコノミストのルドビク・スブラン氏がミンスキーモーメントリスクの高まりについて警報を鳴らしています。
ミンスキー・モーメントは債務膨張後の資産価格急落が始まるポイントを指します。
ミンスキー・モーメントリスクとは?
まずはミンスキーモーメントの詳細を理解してみましょう。
① ミンスキーモーメントの背景
ミンスキーモーメントは、ハイマン・ミンスキーが提唱した金融システムの不安定性の理論に基づいています。
彼は、市場参加者の行動が経済の信用サイクルに影響を与え、信用の過度な拡大が不安定性を引き起こすと主張しました。
② 信用サイクルの過程
ミンスキーモーメントは、経済サイクルの一部であり、通常は以下のような過程で進行します。
a. 安定な時期: 経済が安定している時期には、信用供給が増加し、金利が低下します。
これにより、借り手が容易に資金を調達できるため、投資や負債が増加します。
b. 投機活動の増加: 信用の拡大に伴い、市場参加者は価格の上昇を期待して資産を買い増し、投機的な取引を行います。この段階では、市場は活気づき、資産価格が上昇します。
c. 過度な信用拡大と投機のピーク 信用供給と投機活動が進行すると、市場参加者はリスクを過小評価し、借り手は返済能力を過信します。貸し手も貸倒リスクを軽視する傾向があります。
この段階で、信用の過度な拡大と投機のピークが生じます。
d. ミンスキーモーメントの転換点 信用の過度な拡大と投機のピークに達すると、経済の成長が鈍化し、金利が上昇します。貸し手の返済能力が低下し、投資家は資産価値の減少に直面します。
③ミンスキーモーメントの特徴
ミンスキーモーメントが発生すると、以下のような特徴が現れる場合があります。
デフォルトや不況の連鎖反応)ミンスキーモーメントの転換点では、貸し手や投資家のデフォルトが増加し、金融機関の破綻や破産のリスクが高まります。これにより、信用供給が減少し、資産価格が急落し、市場は不安定化します。
失業率の上昇や経済活動の減速など、深刻な不況が引き起こされる可能性があります。
④ミンスキーモーメントと経済政策
ミンスキーモーメントの理論は、金融市場や経済の安定性を考慮した経済政策の重要性を強調しています。
ミンスキーは、信用の過度な拡大に対しては規制や監督を行うこと、金融システムの安定性を確保することが重要だと主張しました。
⑤ 実際の事例
ミンスキーモーメントの概念は、過去の金融危機や経済崩壊の事例で観察されてきました。
たとえば、2008年のサブプライムローン危機では、信用の過度な拡大と投機活動のピークが引き金となり、金融機関の破綻や不動産市場の崩壊が起きました。
ミンスキーモーメントは、経済の信用サイクルにおける不安定性とリスクを強調する重要な概念です。
経済政策や金融規制の改善によって、ミンスキーモーメントの発生を予防または緩和することが求められます。
流動性逼迫(ひっぱく)が至る所で見られ始めている!!
” 商業用不動産と米地銀の連続破綻は懸念材料だが、私は企業のクレジットリスクのミスプライシングを不安視している。
特に高利回り債のスプレッドが率直に言って今も小さ過ぎることが心配だ。ノンバンクの金融仲介事業者も注視している。
誰にとっても今問題なのは突然の金融引き締めだが、リスク管理の誤りという追加のレイヤー(層)がある ”
と論じており、下記のように述べています。
” 新たな金融事故は銀行セクターで起こるかもしれないし、商業用不動産に特化したヘッジファンド、あるいはその両方を震源として起こる恐れもある ”
” 投資家は荒い動きに見舞われるだろうとした上で、世界金融危機の再発とは思わない ” が、積み重なった問題の解放や浄化が今後数カ月により頻繁に起こることは確かだ ”
との見方を示しました。
これは全く同意見で日々のコラムの中でも度々指摘していることです。
昨日も米国のKBW地銀指数は2.8%低下し、いよいよ2007年以来の水準に来ています。
夏前に大きな金融ショックが起こる確率は40%程度に上昇していると考えています。この辺りのマクロ視点からの金融・経済リスクについても20日のZOOMセミナーではお話したいと思います。
セミナー参加はこちらから申し込みください。
今回は無料のセミナーとなりますので。