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中東でアメリカとイラン・イラクが戦争をしたら、為替はどう動くか?

中東 戦争 為替

いつ戦争が始まってもおかしく無い、中東情勢

米国によるイラン・スレイマニ司令官殺害がきっかけにより、2020年に入り、中東情勢が急激に悪化している。

これによりイラン国内やイラクでは報復の機運が高まり、それに対して米国も牽制と挑発を繰り返す中で、いつ武力衝突が開始されても不思議では無い。

むしろ、軍需産業を支持母体にしているトランプ氏の共和党としては戦争をしたくてウズウズしているはずである。

その是非はともかく、ひとたびアメリカが戦争に突入すれば、世界の金融市場に与える影響は非常に大きい。

では、実際に中東でアメリカとイラク・イランが戦争を始めたら、為替はどう動くか?

過去の歴史を振り返りながら、考察してみよう。

中東でアメリカとイラク・イランが戦争をしたら、為替はどう動くか?

為替市場には「有事のドル買い」という言葉があるが、これは、戦争や紛争などの不安定要素を含む有事が勃発した際には、基軸通貨であり流動性が高い安全資産である米ドルが買われて上昇するという、過去の多くの事例から言われている言葉である。

同じように日本円も安全資産とされており、有事にはドルと同じく円買いが加速する傾向がある。

今回の中東で起きた事件から予想される最大のリスク要因は戦争である。

そして、戦争は正しく「有事」である。

それ故に、まだ戦争は発生していないが、金融市場は戦争になる「有事」を折りこんで、米ドル買いに走っており、結果としてドルが上昇している(2019/1/6現在)。

噂で買って事実で売る

しかし、まだ戦争状態には無い。

ここが非常に重要なポイントになる。

噂で買って事実で売る、という金融市場の格言がある。

これは、為替だけでなく、株式でも言えることだが、例えばAという国が利上げをするらしい、という噂が出ると、まだ実際は利上げされていないのに「利上げされること」を予想して、同国の為替を買われる動きが起きて、利上げされていないのに、為替が上昇していく訳である。

その後、実際に利上げがされたとする。

本来は利上げされた事で、その為替が買われ、上昇するのがセオリーであるが、多くの金融関係者はその事を予想して、為替を買っていた為、それ以上の大きな上昇は見られない事がある。

例えば、その利上げが想定よりも大きければ、更に為替は買われることになるが、逆に、利上げされた事実はあっても、その利上げ幅が想定よりも小さければ、利上げしたのに売られるという事が発生する。

これが、噂で買って事実で売る、という格言になっている訳である。

つまり、ただ利上げだから、利下げだから、有事だから、ということで、決まった為替の動きは無い。

重要なのは「マーケットがその有事をどれだけ想定して、トレードをしているのか」という点になる。

過去の戦争で相場はどのように動いたのか?

では、過去にアメリカが戦争を仕掛けた際の、為替の動きを一度振り返ってみよう。

1991年 湾岸戦争

1991年にイラク、クウェート、サウジアラビアなどのペルシャ湾周辺の国家地域で起こったイラクのサダム・フセイン政権とアメリカを中心とした多国籍軍によって行われた戦争。

この1991年の開戦直後に米ドル円は1円上げた後に大きく下落した。

実はその前年に、この湾岸戦争のきっかけとなるイラクによるクウェート侵攻があり、この時から中東での戦争のリスクが増大したことで、大きく米ドルが買われていた。

開戦前から米ドルは上がり、開戦直後からピークアウトした訳で、つまり「噂で買って事実で売る」そのままの動きが見られた例となる。

2003年 イラク戦争

2003年、「イラクは大量破壊兵器を持っている」とアメリカは断定し、アメリカを中心とした有志連合軍がイラクへ軍事介入し、当時のサダム=フセイン政権を倒した戦争。

アメリカ軍によるイラクの首都バグダッドへの空爆を皮切りに、戦闘がスタートした訳だが、攻撃が始まった直後はドル円は一時的にドル高となったが、その後はドル安方向に動いた。

これも先の湾岸戦争の事例と同様に、アメリカがイラクへ侵攻することをマーケットはすでに織り込んでおり、開戦前に既にドルが買われて上昇していた。

そして、開戦直後からピークアウトして、米ドルは売られ続けた。

やはり「噂で買って事実で売る」そのままの動きが見られた例である。

開戦されてからのドル売りを想定に入れるのが大事

これらから読み解けるのは、基本的に有事のときは、基軸通貨である米ドルが買われる傾向は確実にある

しかし、それは戦争が予想された時点で市場が反応して米ドルは買われていき、実際の開戦時には確定売りが起こり、価格は下落する可能性が高い、ということである。

2020年1月時点では、中東の戦争の噂・想定の中で米ドルが上昇している。

これは今までと全く同じ傾向である。

両国が今後も挑発を繰り返し、平和的解決方法が見出せなければ、戦争の懸念が高まる間はじわじわと米ドルが上昇していくはずである。

ただ、もともと戦略的にドル安に誘導してきた米国のトランプ大統領は追加利下げをFRBに要求していた背景があり、これにより、トレーダーは米金融当局による追加利下げを想定に入れたため、米ドルの急激な上昇にまでは至っていない。

決して為替が動いていないのではなく、戦争が起こるか、起こらないか。米国の利下げがあるか、無いか。

金融関係者によるそれらの予測規模と駆け引きが今、水面下で起こっており、いつ、どちらに転ぶか分からない状況と言える。

このような状況下では無理に為替市場へ参加するのは避けるのも、賢明な選択肢の一つと言える。

そして、実際に開戦された直後には、あくまでもそのタイミングでの周辺状況を整理判断した上になるが、ドル売りのポジションを積極的に保有することを検討したいところだ。

為替だけではなく、原油についてもどうなるのか?こちらも過去の事例を元に書いてみたのでぜひ合わせて読んでみて欲しい。

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